フランシーヌ・ピカール女史が、父のメゾン・ピカールから独立した新興ドメーヌ。
そのため、まだまだ日本での認知度は高いとは言えません。
ですが、すでに銀座の名店フレンチOOOでは、この白ワインはオン・リストされており、ワインの品揃えとワイン・サゼッションで有名な渋谷の某デパートでも人気醸造家の仲間入りを果たしていると、友人である、そこのチーフ・ソムリエのF氏が言っている。
彼とは、このドメーヌは、ACブルのクオリティが極めて高いと共感している。
そして、このドメーヌを日本に紹介したのが、これまた私の友人である北沢君だ。
北沢君は、ブルゴーニュ在住で、現在ニコラ・ポテルで輸出部長をしている。
その傍らクルティエとしても活躍しており、フランスと日本の架け橋の活動もしている。
栽培醸造責任者のファブリス・レーン氏は、北沢君とは懇意の仲。
何故ならファブリスは、ニコラ・ポテルやブシャール・ペール・エ・フィスでも活躍した人物。
一方のブシャール・ペール・エ・フィスにも、私の知人である西山君がおり、彼は東アジア輸出担当をしている。
その西山君ともファブリスに付いて話し合ったことがある。
クラシカルとモダンの融合の感性が優れていて、話し下手の生真面目な奴だと言っていた。
それは、このワインにもしっかりと投影されている。
ワインは白も赤もクリアーな味わいで、15VTらしい厚味も充分に味わえるが、そこは、ブルゴーニュならではの抑制の効いたエレガンスと、フィネスはチェロのような印影に富んでいる。
昨年、A.P.モンショーブだけのプロ向け試飲会が南青山であったのだが、当主のフランシーヌと北沢君が来日しており、そこで、なんとフランシーヌ自身がワイングラスを拭き上げていた。
北沢君に何させてるの!と言うと、良いの、良いのと笑っていた。
マセレーションやバトナージュに関しての私の質問の時も、2人してグラスを拭きながら答えていて、何故だか私も一緒にグラスを拭いていた。
因みにF氏と北沢君、私は同い年で、土壌成分がどうのこうの、このクリマの変成岩がどうだとか、あの村に何月何日に雹害があっただのと、3人してのマニアックな意見交換をするのが、凄く楽しい。
しかも北沢君は私と同類のメタラーで、私と同じくメタリカ・マニア。」
「ルグラと言えば、あの『トゥール・ダルジャン』のプライベート・ブランド・シャンパーニュ(フランスでは『MA』マルク・ダシュトゥールと言います)を1971年から造っているシャンパーニュ・メゾンです。
その他、アラン・デュカスやダロワイヨ、ギィ・サボワなどフレンチの名だたる名店のオン・リスト シャンパーニュです。
生産量の大部分を星付きレストランに納めているため、『プロフェッショナルのためのシャンパーニュ』と呼ばれています。
これはスタンダード・キュヴェですが、シェイィ村のグラン・クリュのみのシャルドネ100%のブラン・ド・ブランです。
現在はジュリアン・ファブリス氏が2005年から当主を務めています。来日なさる時は、いつも夫人を伴って、仲睦まじい様子が微笑ましい。
ジュリアンによると、我々が今飲んでいるNVシャンパーニュは、90%が2016VTで、10%が2015VTだと言う。
基本的にベースワインと、リザーヴワインの90:10の比率は変わらないとのこと。
旨味はしっかりあるが、フレッシュなシャンパーニュを信条にしているとのこと。
そのために酸味とミネラルがルグラらしさを表現するに当たって最も重要視していると。
シュール・リー由来の旨味はしっかりあるが、出すぎていない。
樽香のメイラード反応も抑制が効いてバランスが整っている。
貴方のシャンパーニュは、日本料理との調和も素晴らしいと思います、と、言うと。
そうなんだ、今、日本でもっとも我々のシャンパーニュを喜んでくれているのが、京都の有名な日本料理店なんだ、と彼は微笑んだ。」
「シャトー・クリネ、まさにポムロールの至宝。
凝縮感がありながら繊細。
清澄も濾過もしないでビン詰めされるのに、野暮ったさなど微塵もない。
それどころか雅そのもの。
これぞポムロールのエレガンスだと高らかに歌い上げている。
クリネと言えば、パーカーポイント100点を2度獲得したシャトーだと、そればかりが枕詞になってしまう。
確かにパーカー好みのワイン。
だからといってパワー一辺倒ではない。
そこには、粘土混じりの礫質土壌ならではのキレがある。
音楽で例えるなら、エモーショナルでありながら、エッジが効いている。
そして恍惚とした重奏なるゲイリー・ムアーやデイヴィッド・ギルモアのギターのようだ。
今オーナーで、CEO兼支配人のロナン・ラボルド氏は、ユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドーの会長も務めている。
昨年のユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドーの試飲会は、1時間程しか時間が取れずに左岸のワインばかりテイスティングしてタイムリミットが。
帰り際に右岸の最終ブースにロナンがいて、今頃来たのかとつっこまれました。
飲んで行けと言うが、もうないじゃん、と言うと、数本の空ボトルからかき集めて『感想を聞かせろ』と。
私が香りの感想を言っていると、他のシャトーのオーナーが飲んでいるクリネを取り上げ、『良いから、これを飲んで評価をしてくれ』と、何ともナイスガイだ。
『今度は最初にうちに寄って欲しい。見掛けていたので、来ていたのは分かっていた』と次回の再会を約束した。」
「ル・メニエ・シュール・オジェ村、コート・デ・ブラン地区の6代に渡るRM、レコルタン・マニピュラン。
ル・メニエ・シュール・オジェ、アヴィーズ、クラマン、オジェの区画のグラン・クリュのシャルドネ100%のブラン・ド・ブラン。
シャルドネの味わいは一様ではない。
土壌による様々な側面を引き出す。それがペテルスのポリシー。
2007年よりロドルフ・ペテルス氏が当主を務めています。
私が、お父さんの時の方がシュール・リーのニュアンスが強いと言うと。
そんなことはない。
自分の方がシュール・リーの期間は長いと。
でも、アフターは2002VTがやはりと告げると。
今度は、もう少し熟成したミレジメを持って来日するので、熟成による変容なのか見て欲しいと。
君は父の代からペテルスのシャンパーニュを愛していてくれている。
そして、今もペテルスのシャンパーニュが好きだと。
2006年より叔父である元ヴーヴ・クリコ醸造長のジャック・ペテルス氏がブレンディングに参加なさってますがと尋ねると、叔父はブラン・ド・ブランのスペシャリストではないが、的確なアドバイスをしてくれる、と。
でも、今後、醸造スタイルの変更は考えていないと。」
「ダヴィド・デュバンは全房発酵の生産者です。
そのためエレガンスが際立ってます。
昨年の来日の際、醸造学校のディプロマを取得してドメーヌに入ったばかりの息子さんを伴って来日した。
全房発酵は難しい。
樹齢が若いと梗の持つエグ味がワインに溶け出してしまい、梗の水分で、せっかく凝縮させた果実が、希釈されてしまう。
なので、アンリ・ジャイエ氏やギイ・アカ氏は完全除梗の醸造を確立して推奨した。
ですが、ロマネ・コンティも2016VTから全房発酵に踏み切った。
近年の料理は、アメリカのステーキハウスを除けば、ライト化が顕著だ。
パリでもバターよりオリーブオイルが使われたり、野菜をソースにしたベジソース、北欧の発酵器を使った料理など、果実味を全面に出したワインではないワインシチュエーションが増大している。
ダヴィド・デュバン氏に伺ったが、全房発酵するに当たってブドウの樹齢は余り気にしていないと言う。
畝ごとに醸造しているので、アッサンブラージュの時に調整出来ているとのこと。
でも、今は良いですが、いずれ植え替えの時期が来ます。
すると、その時は俺は引退している。
やるのはコイツだと、息子の肩を叩いた。
息子さんは苦笑いしていた。
業界では、若手醸造家と言われいるダヴィド・デュバン氏。
彼のワインは、グラスに入れてから開くのに、時間が掛かりますが、シングルではなく、アルバム1枚を通して鑑賞する楽しみと同じ。まるでメロディアスなスコーピオンのアルバムが琴線に触れるように。」
「言わずと知れたブルゴーニュの名門ドメーヌ。
それも1988年にエドワード・ラブリュイエール一族が買い取り、ネゴシアンのアントン・ロデ氏との共同経営となって、投資がなされたから。
そして1990年にナディーヌ・ガブリン女史を招請。
彼女に全権を託したことに伝説は始まる。
彼女の細やかなワイン造りは、ジャック・プリウールを特別な存在にした。
90年代に彼女のセミナーを受けたことがある。
彼女はことあるごとにミネラルの重要性を説き、如何にワインに溶き込ませテロワールを表現するのかを語った。
確かにグラスに注がれたばかりのムルソーは、ハツラツとした果実味とミネラルが相乗している。
だが本領発揮するのは、少し温度が上がって味わいに円やかさがもたらされた時だ。
複雑なアロマが至福のひとときをプレゼントしてくれる。
それはまるで、ハロウィーンのイーグル・フライ・フリーを聴いている時のような至福。
温度が上がっても、味わいがだらけないのは、しっかりとした酸味と奥行きにたっぷりのミネラルを湛えているためだ。」
「100年の古樹が奏でる、柔らかく繊細なアダージョを想起させてくれるシャトーヌフ・デュ・パプ。
14世紀から続くドメーヌで、2002年よりジュリアン・バロ氏が栽培醸造を彼が担っており、姉と共に経営している。
何かとパーカーの5ッ星生産者だと、メディアに取り上げられることが多い。
私は、パーカーはシラーは好きだが、グルナッシュは得意ではないと思っている。
それは、数々のコメントに現れている。
だが、このドメーヌ・ラ・バロッシュへのコメントは、引退間際までずっとお気に入りだったようだ。
何せ、このシャトーヌフ・デュ・パプはグルナッシュ100%なのだから。
にもかかわらず、2005VTで遂にアドヴォケイト誌で100点を獲得。スターダムにのし上がった。
柔らかく繊細な味わいで我々の緊張をほどき、ふにゃふにゃにしてくれる北欧家具のソファーのようだ。
暖炉にくべられた炎のような温かみがありホッとさせてくれる。
そんな癒やしを与えてくれるワイン。
決してパワフルなワインではない。
複雑味と味わいの持続性が傑出しているのだ。
グルナッシュ特有のベリーのコンフィチコールを思わせる風合いは確かにある。
だが、これでもかの誇示は全く見受けられない。
奥ゆかしいのだ。
それと薪火のような香りが相まっている。
グラン・ピュール地区の土壌は赤土の砂質土壌。
鉄分を湛えながら砂質特有の繊細さを兼ね備えている。
まるで、ニュー・トロルスのコンチェルト・グロッソ パート2のアダージョを聴いた時のような幸せが包み込んでくれる。」
「エメラ以前、アンリオのピラミッドのトップブランドは、キュヴェ・アンシャンテルールだった。
1808年創設のアンリオは、オランダ王室、オーストリア・ハンガリー帝国皇室御用達のシャンパーニュ・メゾン。
現メゾン・エ・ドメーヌ・アンリオの社長はジル・ド・ラルズィエール氏。
余談だが、彼と初めて会ったのは、なんと銀座線の車内。
以前から顔見知りのアンリ・ボワイヨ氏など重鎮数名が東京の地下鉄に乗っている。
そこにラルズィエール氏もいた。アンリが私を見付け、ここに行きたいと告げる。
それは、彼らのワインの試飲会会場だった。
私も行くのだと告げると。
やっぱりな、連れて行ってくれと。
何故メトロに乗っているのか尋ねると、世界で一番難解な東京のメトロに乗ってみたかったそうだ。
2006年より醸造責任者のローラン・フレネ氏が、初めてアッサンブラージュから手掛けたトップ・キュヴェがこのエメラだ。
しかも、この2005年がエメラのファーストVT。
何故なら12年の長期熟成を経てリリースされるからだ。
次は2008VT。
そう、毎年エメラがリリースされる訳ではない。
因みにエメラとは、ギリシャ神話の昼の光の意味だそうだ。
ラルズィエール氏によると、以前のキュヴェ・アンシャンテルールは秋の印象だと。
そこでフレネ氏にアンリオらしい、よりピュアでフレッシュさを醸し出して、春のイメージに仕上げて欲しいと依頼したと。
シャルドネは、シュイィ、アヴィーズ、メニル・シェル・オジェ。
ピノ・ノワールは、マイィ、ヴェルジィ、ヴェルズネイのグラン・クリュのブドウを更に厳選させる。
長期熟成したアンリオのエメラは、深味が半端ない。
トロピカルフルーツやブリオッシュを思わせる温かみを感じる。
それでも確かに溌剌とした酸味が、更なる高みを予見させる。
薄手のコートを羽織って垣間見る陽光に春の訪れの足音が聞こえる。
さぁ、ビリー・ジョエルのピアノマンを聴こう!」
「2001年からクリスチャン・チャーリー氏が指揮を執っている。
チャーリー氏は同じアクサ・ミレジムが保有している、ブルゴーニュのドメーヌ・ド・ラルローも監督している。
それ以前のランシュ・バージュのジャン・ミシェル・カーズ氏からチャーリー氏に代わり、荘厳なスタイルから、親しみやすいモダンなスタイルへと変化している。
なので、若いVTから味わいが開き、早くに楽しめる偉大なワインになった。
しかも、このワインは2011VT。
2011らしい繊細なエレガンスも十分に表現されている。
こなれたタンニンと長い余韻は流石。
ポイヤックならではの風格のある味わい。
さぁ、グスターボ・ドゥラメル指揮のオーケストラを聴きながら楽しもうじゃありませんか。」
「 オーナーのデヴィッド・シネガル氏はコストコ創業者のジム・シネガル氏の子息である。
まさにオールスター軍団。
プランプジャックなどで活躍のトニー・ビアジ氏を中心に、スタグリン、デイヴィッド・アブリューなどでの経歴のあるライアン・クリス氏、ジョセフ・フェルプスのクレイグ・ウィリアムス氏、バルボワ・ヴィンヤードのジム・バルボワ氏、CADE チェッカーボードのフィル・マーティン氏、ピーターマイケル、スローンのトレヴァー・アントグニン氏の豪華ラインナップがシネガルに携わっている。
カリフォルニアワインが好きな方なら、彼らの名前を聞いただけで・・・、ほらっ、よだれが。
そんな凄いチームが一堂に会したスーパープロジェクト。
それはまるで、エクストリーム・メタルの4巨頭、ソウル・フライのマックス・カヴァレラを中心に、ディリンジャー・エスケイプ・プラン、マストドン、マーズ・ヴォルタのメンバーが集結したスーパープロジェクト、キラー・ビー・キルドのようだ。
エクストリーム・メタルのファンにとってキラー・ビー・キルドが凄い出来事であるが如く、カリフォルニアのリッチなワインの愛好家とってシネガルの誕生は、まさにスーパーバンドの誕生だった。
13VTがファーストVTであるシネガルは、リリースと同時にカリフォルニア・ワイン愛好家のハートをガッチリ掴んだ。それは、まるでCDを掛けたら、デビューアルバムのオープニング・トラックで一撃を喰らったようなものだ。余りにもその衝撃が凄まじく、この14VTが100%自社畑のブドウで醸造されたラスト・イヤー。バンドで例えるならば、オリジナルメンバーでのアルバム制作は2枚のみと言うことに近い。15VTから優れた栽培農家からのブドウを使って、一気に生産量が10培以上になった。栽培農家の信用を勝ち得た証だ。もう、カルトワインとは言わせない。と、一気に勝どきを上げる成果を見せた。
自社畑100%のシネガルを体験出来るのは、この2014VTが最後のチャンスです。Don’t miss it.」
「 1992年の創設に当たり、初代ワインメーカーに招請されたのが、80年代初めにオーパス・ワンを手掛けたポール・ホブス氏。ホブス氏は、現在カリフォルニアワインのカリスマです。
2013年からはジョシュ・ウィンダン氏がワインメーカーを勤めています。その前は、あのパルメイヤーのアシスタント・ワインメーカーでした。エリン・グリーン女史からワイン造りの薫陶を受けた人物です。
力強いスタイルのワインで人気のワインです。
2013VTが、ワインスペクテーター誌が選ぶ2016年度TOP100の1位に輝いています。ワイン愛好家の方ならご存知の、ワイン評論誌で、あのパーカー氏のワイン・アドヴォケイト誌のライバル誌です。因みに、ワイン・アドヴォケイト誌は、皆様ご存知のミシュラン・ガイドが2019年に完全買収しています。
カリフォルニアワイン特有のリッチで果実味たっぷりのワインを愛する方なら、看過は出来ません。ただ力強いだけではありません。葉巻のような甘やかなフレーバーが鼻腔をくすぐりアダルトな世界へと誘ってくれる。そして、ビターチョコレートを思わせる魅惑的なタンニンが、ほろ苦さと伴って憩いを与えてくれる。
オーナーのランディー・ルイス氏は、F3やインディーカーのレーサーとして23年のキャリアを過ごした人物です。
さぁ、何を聴いて楽しもうか。モータースポーツと言えば、日本ではやはり、カシオペアと並ぶフュージョンの巨人T-スクエアのトゥルース。伊東さんのエレキ・サックスや元メンバーの則竹さんのドラムスは最高です。
ですが、ここは、プロデューサーにボブ・ロックを迎えたモトリー・クルーのアルバム、ドクター・フィール・グッドのキック・スタート・マイ・ハートでキック・スタート(エンジンを掛けて)。」
「 憧れのハイ・ブランド・シャンパーニュの中にあって、このルイ・ロデレール クリスタルは、間違いなく煌びやかな存在感がずば抜けている。
1876年、ロシア皇帝アレクサンドル2世のための専用シャンパーニュとして誕生した。
そのため、今でもボトルは透明のままでいる。
それは暗殺防止に備え、毒薬が混入されても、すぐに気付き皇帝を守るため。なので、透明ボトルなのですが、シャンパーニュのためには良くありません。光による変質を防ぐ目的で黄金色のラミネートで包まれています。因みにボジョレー・ヌーヴォーは、すぐに消費されるので、リサイクルのために近年は透明ボトルが採用されています。
ロシアと言って真っ先に思い浮かべる食材。それは、誰がなんと言ってもキャビアでしょう。もう、クリスタルとキャビアとのマリアージュは別世界に連れて行ってくれます。そのキャビアもベルーガが格別。その中でもアルマス・ベルシカスはいったい、いくらするのか。
キャビアと言っても魚卵、塩漬けされたチョウザメの魚卵です。料理に使用する際は様々な食材が緩衝役として機能しています。なので、キャビア単体で召し上がる際に、そば粉のブリニー(意外かも知れませんが、そばの作付け面積世界一はロシアで、世界最大級のそば消費国です)やエシャロットが添えられているのも緩衝役としてシャンパーニュとの仲立ちのするためです。
ですが、ハイ・クオリティーのキャビアとクリスタルなら、そんな心配は入りません。そのままスプーンですくって召し上がって至福の悦びを味わって下さい。ただし、その際は通常のスプーンを避けるのが懸命です。金属のイオン臭がキャビアに移ってしまい、せっかくのベルーガ・キャビアを不快なものにしてしまうかも知れません。。出来れば、金や水牛の角、貝などのキャビア専用スプーンがベストです。代用品としては、香りが余りしない使い込んだ木のスプーンですね。
そして、キャビアにはレモンが添えられていると思いますが、クリスタルなら、レモンがなくても、石灰質土壌を存分に感じるシャルドネが柑橘系の爽やかな香りと共に、ミネラルが相乗して得も言われない世界が広がります。そして、ピノ・ノワールが凝縮した威厳を演出しています。
シャルドネ40%、ピノ・ノワール60%です。ブドウは、モンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ、コート・デ・ブランのグラン・クリュの厳選されたブドウが使用され、セルゲイ・エイゼンシュタインのサイレント映画の金字塔、戦艦ポチョムキンのような威厳に満ちたシャンパーニュです。
皇帝を守り、威厳を讃えたクリスタルは、守ってあげたいソノ人とグラスを傾いて欲しいシャンパーニュです。
クリスタルと言うことは、クリスタル・キングのアニメ・北斗の拳の主題歌、愛を取り戻せ!!を聴いて、愛する貴方のユリアに思いを馳せるも良し。
ロシアとハイトーン・ヴォーカル繋がりで、コネチカット州出身の4人組、スティール・ハートのロシア系ヴォーカリスト、マイク・マティアビッチが驚愕のハイトーンで歌い上げる珠玉のバラード、シーズ・ゴーンで思い出をプレイバック。そう、昔大好きだったあの娘を思い耽ってみては。
でも我々バブル世代は、どうしても田中康夫の・・・なんとなく、クリスタルが脳裏をよぎる。」
「 ドミニクに会う度、膝が痛いと椅子に座っている。あの巨体では無理もない。本来なら、毎年5月に新しいVTの御披露目で来日しているドミニク、今年はそうはいかない。ここ数年は、これが最期の来日になる、が決まり文句。我々をヒヤヒヤさせます。長女を伴って来日する時は、彼女に聞こえないように、『あいつは、年を追うごとに年々母親に似てきて口うるさい』と。でも、彼女は父親の身体を気遣っていて、テキパキと大きな子供の面倒を甲斐甲斐しく見ている。そして、次女をドミニクは溺愛している。洋の東西を問わず、末っ子の女の子に父親は甘い。ホテルの部屋へ引き上げる時も、膝が痛い父親と腕を組んでフォローしている。もう、ドミニクはデレデレでニコニコしている。
テクニカルなコメントは、2020年焼肉たまき家特選、お薦めワイン第2弾『 Special Focus in Dominique Laurent:ドミニク・ローランに敬愛の念を込めて』に著しています。
そこで私は、ドミニクを孤高の吟遊詩人と形容しています。
音楽で孤高の吟遊詩人と言えば、それは、キング・クリムゾンのロバート・フリップ教授でしょう。衝撃のデビューアルバム、クリムゾン・キングの宮殿は、ドミニクが元パティシエのキャリアから成し遂げたファーストVTのワインの衝撃に通じる。エピタフ、ザ・コート・オブ・ザ・クリムゾン・キングを聴いた時の驚きは、まるで昨日のことように鮮明に刻まれている。デビューアルバムは、ロバートよりも、オリジナル・メンバーのイアン・マクドナルドの功績だろう。まさしく、彼のコンポーザーとしての偉大な功績。
全房発酵で醸される崇高なワインは、エレガントの極み。この畑は、引退したエジュラン・ジャイエから2009年に購入した由緒あるグラン・クリュ。
醸造はもう息子のジャンに委ねられ、孤高なる吟遊詩人の精神性は受け継がれた。
キング・クリムゾンと一緒に、私がクリムゾンとメタリカが合体したようなバンドと言っているドリーム・シアターも、このワインと一緒にお楽しみ下さい。」
「 近年、高級寿司屋では、シャンパーニュに留まらず、フランチャコルタの人気が爆発している。先ずは、お造りなどの前菜で、おつまみを召し上がる方は、有名なグラン・メゾンのシャンパーニュを楽しまれています。
ですが始めから握り、それもやはり白身魚からと言う方は、サロンを筆頭にブラン・ド・ブランのシャンパーニュが最高です。そして、そこにあるべくしてフィットしたのが、イタリアのフランチャコルタです。洗練された気品に、日本人は魅了されてしまいました。
実は、最近のブラン・ド・ブランのブームは、フランチャコルタの成功を追随する形で巻き起こりました。今、日本料理がユネスコ無形文化遺産に登録されて以降、海外からのお客様をおもてなしするのに、ブラン・ド・ブランのシャンパーニュがもてはやられている背景には、フランチャコルタが火付け役として礎を築いた歴史があります。
当店にブラン・ド・ブランのシャンパーニュやフランチャコルタがオン・リストされているのは、焼肉はやっぱりタン塩からと思われるゲストに素晴らしい幕開けを向かえて欲しいと思っているからです。塩コショウにレモンで召し上がるタン塩。
そこで出番となるのが、このフランチャコルタやブラン・ド・ブランのシャンパーニュ。ワイン好きのための焼肉をコンセプトとしている焼肉たまき家としてはマストです。
このフランチャコルタ・ビオンデッリは、小規模な親族経営のカンティーナです。昨年、カルロッターヴィオ・ビオンデッリのファミリーが来日されて、お会いしたのですが、皆さんがあまりに上品で。それもそのはずです。カルロッターヴィオ・ビオンデッリ氏の父親のジョゼッペ・ビオンデッリ氏は、在オーストリア・イタリア大使館の総領事であり、のちのイタリア大使となった人物です。第二次世界大戦後にワイン畑を購入しました。
ブドウは、自社畑100%です。品種は、サテンではないのですが、シャルドネ100%。昨年はサテンの方をオン・リストしていたのですが、ブラン・ド・ブランのシャンパーニュが増えましたので、今年は同じシャルドネ100%でも、少し厚味のあるブリュットにしました。日本では、フランチャコルタと言えばサテンの方が人気がありますが、今年はブリュットも楽しんで欲しい。
実直で厚味あるフランチャコルタ。そこに優美な気品が溢れているのは、イゼオ湖の冷涼な気候と、氷堆石土壌のミネラルが美しい旋律を奏でている。
それはまるで、フィンランドのスピード・メタル、ストラトヴァリウスがアルバム・エピソードのクロージング・トラック、フォーエヴァーで美しい旋律を奏でているように。」
「 この焼肉たまき家から、ワインを主役にした焼肉屋をしたいので、焼肉屋でのソムリエをと打診されて、お請けした時から、焼肉のタレを考慮して、イタリアワインのタウラージとアマローネをリストに入れると決めていました。
そして今、当店には、2種類のアマローネがオン・リストされています。
焼き目をしっかり(と言ってもウエルダンではなりません)付けた香ばしい焼肉とタレとの相性・・・それとアマローネは、アマーロ(苦い)とリパッソ(陰干し)から来るドライフルーツの甘やかさがバッチリ。
それは間違いではなかった。いつも決まって、数本ワインを飲まれた後にアマローネを最後に飲まれる常連でソアニエのAさんがいらっしゃいます。初めてご来店下さった時に、『もしかして、アマローネある?』と。勿論です、とお答えすると、『いやぁ、焼肉にアマローネは最高だと思うんだけど、俺が今まで行った焼肉屋にはなくてさぁ』と大変喜んで下さり、毎回アマローネを飲んでは、『やっぱ、これやな!』と。
このアマローネは、アマローネの名門ベルターニの2009年。抜栓をしてから、香りと味わいが開くのに時間が掛かるワインです。なので、Aさんは、2本目のワインを抜栓する時に『もう、アマローネも一緒にデキャンタしといて』とおっしゃいます。流石、ワインの楽しみ方を良く判っていらっしゃいます。そう言うお客様に巡り会えるのは、ソムリエとして喜びを感じる瞬間です。ワインを愛してらっしゃるんだと感嘆します。
ベルターニを創業したベルターニ兄弟は、ヴェローナがオーストリアに占領されていた1850年から1857年の間、フランスのブルゴーニュに亡命して、グイヨー仕立て(垣根仕立て)の考案者、グイヨー氏に師事しています。そして、アラブやアフリカからもたらされた陰干しの技術が融合して、得も言われぬアマローネに結実しています。アマローネはワインの世界にあって、唯一無二の存在です。数年ぶりに再会出来ると思っていたのですが、ベルターニさんの3月の来日も中止になってしまいました。
そんな唯一無二のアマローネと、チェロの世界で唯一無二の存在、クロアチア出身のルカ・スーリッチとステファン・ハウザーのチェロによるデュオ、2チェロズを。未体験の方は驚きますよ。
ハウザーは純粋にクラッシック音楽のコンサートでも、ソリストとして公演しています。勿論彼らのショパンやバッハも最高です。それでも、何と言っても彼らの魅力は、AC/DC、メタリカ、アイアン・メイデン、ガンズ&ローゼス、レッド・ツェッペリン、クイーン、ニルヴァーナ、U2のカヴァーです。驚愕です。今までクラッシック音楽の演奏家が誰も成し得なかったエッジの効いた演奏をロック・ファンが拍手喝采、スタンディング・オベーションするレヴェルでの超絶技巧。クラッシック音楽の人達は、エッジの効いた演奏は、苦手。どうしても、音がだらけてしまう。それなのに、もう彼らには、ただただビックリです。」
〖Champagne シャンパーニュ〗
NV Bollinger Special Cuvee ボランジェ・スペシャル・キュヴェ
「厚味のあるシャンパーニュの代表格。
グラン・クリュおよびプルミエ・クリュの黒ブドウを主体にした深みのある味わいは、シャンパーニュ・ラヴァーだけに留まらず、映画ファンにも愛好家が多いことでも知られている。
007 ジェームス・ボンドが愛したシャンパーニュと言えば・・・。
イアン・フレミングの原作に『ボランジェ・ラ・グランダネ』が登場し、映画にも忠実に描かれている。
上流階級のアイコンとして、時にセクシーなシーンでは、英国紳士の嗜みとして映画を彩っている。
ただ一人、007でボランジェを飲んでいない名優がいる。それは、ショーン・コネリー。彼だけは、ドン・ペリニヨンをメゾンと親しいと云う理由で飲んでいる。
だが、彼以外のジェームス・ボンドを演じた俳優達は、原作に忠実に、ボンドの厳格な人となりを醸し出すマスター・ピースとしてボランジェを愛飲している。
1884年からイギリス王室御用達を拝命しているシャンパーニュ・メゾン『ボランジェ』。
MI6の工作員であるジェームス・ボンドを描くに当たり、ボンドを品格と優雅さを兼ね備えた人物像にするため、ボンドにボランジェを愛飲させているのではないかと、私は思っています。」
〖Vin Rouge 赤ワイン〗
2015 Vosne Romanee 1er Cru Les Suchots (DM Chanson) ヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュ レ・スショ (ドメーヌ・シャンソン)
「名門復活!輝きを取り戻したドメーヌ・シャンソン。
この言葉が真っ先に思い浮かぶ。
ついこの間まで、ワイン上級者には見向きもされてなかった。
平坦な味わいで、かつて憧れを持って語られていたワインが・・・。
それが、1999年、シャンパーニュ・メゾン『ボランジェ』の傘下に入ると状況が一変する。
2001年に大規模な投資を断行し、改革が行われた。
最新の醸造施設と人材に多額の資金を投入。勿論、ブドウ畑にも多額の資金と人材を投入。
それが今、見事に花を咲かせている。
サプライズは何と言っても、2000年、醸造家にあのブルオタ垂涎のコンフュロン・コトティドのジャン・ピエール・コンフュロンを迎えた事だ。彼の意向に沿ったプランにボランジェが資金を投入。
ジャンは、70年代から80年代に掛けてブルゴーニュワインに革命をもたらしたレバノン人醸造コンサルタントのギイ・アカ氏の薫陶を受けた父から、ワインとは何かを学んだ。
低温長期マセレーションならではの美しい果実味。シュール・リー由来による酵母溶解性の旨味。そして、スショならではのミネラル。完璧なトライアングルに、ヴォーヌ・ロマネならではのテロワールが表現されており、フィネスが鼻腔をくすぐる珠玉のワイン。
このドメーヌ・シャンソンでは、モダンな要素を前面に出している。ブルゴーニュワインに新たな1ページが書き加えられた。
モダンなブルゴーニュって何?と思った方。ならば、このワインを体験しなければ。」