焼肉屋でメニューを開いて、「カルビは重いからホルモンにしておこう」と考えたことはありませんか。内臓系はさっぱりしていて軽い、というイメージは根強くあります。ところが日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の数値を並べてみると、その常識はきれいに半分だけ裏切られます。
結論から言うと、ホルモンのカロリーは部位によって100gあたり57kcalから308kcalまで5倍以上開き、脂質にいたっては1.3gから30.0gまで約23倍の差があります。センマイやコブクロは白身魚に近い軽さですが、ギアラやマルチョウはカルビと肩を並べる脂の量です。つまり「ホルモンだから軽い」ではなく、「どのホルモンを頼むか」で結果が決まります。
この記事では、牛と豚の内臓15部位のエネルギー・脂質・たんぱく質を成分表の数値でそのまま並べ、低脂質で選ぶならどれか、脂が多いのはどれか、焼くと数字はどう動くのかまで整理します。焼肉屋の紙メニューを前にして、あと1皿を何にするか迷ったときの判断材料として使ってください。
・ホルモンのカロリーは57kcal〜308kcal/100gで5倍以上の幅がある
・脂質はセンマイ1.3gとギアラ30.0gで約23倍の開きがある
・軽い側はセンマイ・コブクロ・牛コブクロ、重い側はギアラ・マルチョウ・牛タン
・焼くと100gあたりの数字はむしろ上がる(水分が抜けるため)
ホルモンのカロリーと脂質は、同じ「内臓」でここまで違う

いちばん軽いセンマイは57kcal、重い側のギアラは308kcal
ホルモンの中で最も低カロリーなのは、牛の第三胃であるセンマイです。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年では、うし副生物の第三胃(生)は100gあたり57kcal、脂質1.3g、たんぱく質11.7g。対して同じ胃袋でも第四胃のギアラ(ゆで)は308kcal、脂質30.0gと、5倍以上の開きがあります。
なぜ同じ牛の胃でここまで違うのか。センマイは草をすりつぶすためのひだが幾重にも重なった筋肉組織の塊で、脂肪をため込む構造をほとんど持ちません。一方ギアラは消化液を分泌する本来の胃にあたり、外側が厚い脂肪に包まれています。焼肉店で出てくるギアラの、白くとろりとした縁の部分がそれです。
見分け方は単純で、皿に出てきたときの「白さの質」を見ます。センマイは灰黒色または白色でひだが立ち、触ってもぬめった脂は付きません。ギアラは赤褐色の身に乳白色の脂が層状にくっついています。
注意したいのは、この57kcalという数字が「生」の値だということ。センマイは下処理済みで提供されることが多く、ゴマ油やタレをたっぷり絡めれば、その分は当然上乗せされます。部位の数値は素材の実力であって、皿の上の数字ではありません。
脂質は1.3gから30.0gまで、約23倍の開きがある
カロリー以上に差が激しいのが脂質です。センマイの1.3gに対しギアラは30.0g、マルチョウ(牛小腸・生)は26.1g。約23倍という開きは、同じジャンルの食材同士としては珍しい幅です。
理由は内臓ごとの役割の違いにあります。腸は体内で脂肪組織(腸間膜)に吊り下げられており、その脂ごと食べるのがマルチョウ。成分表でも牛小腸のたんぱく質は9.9gしかなく、脂質26.1gが主成分という構成になっています。逆に心臓(ハツ)は常に動き続ける筋肉なので、たんぱく質16.5gに対し脂質7.6gと、赤身肉に近いバランスです。
具体的な見分け方として、皿の上で「肉が脂に見える」ものは脂質が高いと考えて差し支えありません。マルチョウの筒状に丸まった白い部分、ギアラの縁の乳白色、テールの霜降り状の断面はすべて脂肪組織です。
やりがちな失敗が、脂質の低い部位を選んだつもりでマルチョウを頼んでしまうこと。「小腸だから細くて軽そう」という直感は逆で、牛の内臓の中では上位の脂質量です。細いから軽い、太いから重い、という関係は成り立ちません。
「ホルモンはヘルシー」が半分だけ正しい理由
ホルモン=ヘルシーという通説は、当たっている部位と外れている部位が同居しています。当たっているのはセンマイ57kcal、コブクロ(豚子宮・生)64kcal、牛コブクロ(牛子宮・ゆで)95kcal、テッポウ(牛直腸・生)106kcal、ガツ(豚胃・ゆで)111kcalあたり。この5部位はすべて120kcalを下回ります。
外れているのはギアラ308kcal、マルチョウ268kcal、ハチノス(牛第二胃・ゆで)186kcal。牛タン(牛舌・生)にいたっては318kcal、脂質31.8gで、内臓系の中でも高い部類に入ります。
この差が生まれるのは、「内臓」という括りが臓器の機能を無視した分類だからです。消化管の内側で働く粘膜組織は脂肪が少なく、それを支える膜や外周にある組織は脂肪が多い。ホルモンという言葉は解剖学的な性質を何ひとつ保証していません。
知っておくと得なのは、低カロリー側の部位ほど鉄や亜鉛が豊富なケースがあること。センマイは鉄6.8mg、ミノ(牛第一胃・ゆで)は亜鉛4.2mgと、100gあたりでは牛の赤身肉を上回る数値が出ています。軽さと栄養密度は必ずしも反比例しません。
部位名と臓器の対応を、先に頭へ入れておく
数値を比較する前提として、カタカナの部位名がどの臓器を指すのかを押さえておくと迷いません。焼肉店の呼び名と成分表の収載名は一対一で対応します。
牛の胃は4つあり、順にミノ(第一胃)、ハチノス(第二胃)、センマイ(第三胃)、ギアラ(第四胃)。腸はマルチョウ(小腸)、シマチョウ(大腸)、テッポウ(直腸)。臓器系はハツ(心臓)、レバー(肝臓)、マメ(じん臓)、コブクロ(子宮)。ハラミは横隔膜、牛タンは舌、テールは尾です。
この対応が頭に入っていると、店ごとに違う呼び名にも対応できます。マルチョウは「コプチャン」「丸腸」、シマチョウは「テッチャン」「大腸」、ギアラは「赤センマイ」「アボミ」と呼ばれることがありますが、指しているものは同じです。
逆に混同しやすいのが、センマイとギアラ。「赤センマイ」がギアラの別名なので、名前だけ見るとセンマイの仲間に思えますが、成分表の数値は57kcalと308kcalで別物です。メニューに「赤」が付いていたら、それは第四胃だと覚えておくと間違えません。

焼肉店のメニューで「ミノ」「シマチョウ」「ギアラ」と並んでいても、どれが胃でどれが腸なのか、パッと言える人は多くありません。ホルモンは牛1頭からたくさんの種類が…
【お肉の教科書調べ】ホルモン15部位のカロリー・脂質・たんぱく質一覧
牛の内臓を、軽い順に並べるとこうなる
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年に収載された牛・豚の副生物を、焼肉店の呼び名で並べ替えたのが下の表です。すべて可食部100gあたりの数値で、加工や味付けは含みません。
| 部位(臓器) | エネルギー | 脂質 | たんぱく質 |
|---|---|---|---|
| センマイ(牛第三胃・生) | 57kcal | 1.3g | 11.7g |
| コブクロ(豚子宮・生) | 64kcal | 0.9g | 14.6g |
| 牛コブクロ(牛子宮・ゆで) | 95kcal | 3.0g | 18.4g |
| テッポウ(牛直腸・生) | 106kcal | 7.0g | 11.6g |
| ガツ(豚胃・ゆで) | 111kcal | 5.1g | 17.4g |
| マメ(牛じん臓・生) | 118kcal | 6.4g | 16.7g |
| レバー(牛肝臓・生) | 119kcal | 3.7g | 19.6g |
| ハツ(牛心臓・生) | 128kcal | 7.6g | 16.5g |
| シマチョウ(牛大腸・生) | 150kcal | 13.0g | 9.3g |
| 豚ホルモン(豚小腸・ゆで) | 159kcal | 11.9g | 14.0g |
| シロコロ(豚大腸・ゆで) | 166kcal | 13.8g | 11.7g |
| ミノ(牛第一胃・ゆで) | 166kcal | 8.4g | 24.5g |
| ハチノス(牛第二胃・ゆで) | 186kcal | 15.7g | 12.4g |
| マルチョウ(牛小腸・生) | 268kcal | 26.1g | 9.9g |
| ギアラ(牛第四胃・ゆで) | 308kcal | 30.0g | 11.1g |

出典:文部科学省「食品成分データベース」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)をもとにお肉の教科書が部位名で整理
豚ホルモンは牛より脂質が控えめに収まる
牛と豚を並べると、同じ部位でも豚のほうが脂質が低いことがわかります。牛小腸26.1gに対し豚小腸11.9g、牛大腸13.0gに対し豚大腸13.8g。小腸では2倍以上の差がつきます。
差の理由は、牛のマルチョウが腸間膜の脂を内側に巻き込んだ状態で流通するのに対し、豚の小腸はその脂を落として下処理されることが多いためです。成分表の豚小腸・豚大腸はいずれも「ゆで」の値で、ゆでる工程でも脂が抜けます。
実際の使い分けとしては、もつ鍋や煮込みでよく使われる豚の白もつがこの豚小腸・豚大腸にあたります。牛のマルチョウを想像して脂の量を身構える必要はなく、100gあたりで見れば豚ホルモン159kcalはハツ128kcalと同じ帯にあります。
知っておきたいのが、豚ガツ(胃)の優秀さ。111kcalで脂質5.1g、たんぱく質17.4gと、脂質を抑えつつたんぱく質を確保したい場面に向いた構成です。コリコリした食感で満足感も出やすく、居酒屋の定番串としても選びやすい部位です。
表を読むとき「生」と「ゆで」が混ざっている点に注意
この表を使ううえで押さえておきたいのが、成分表の収載形態が部位ごとに違うことです。ミノ・ハチノス・ギアラ・豚の各部位は「ゆで」、センマイ・マルチョウ・シマチョウ・ハツ・レバーなどは「生」で収載されています。
なぜ揃っていないのか。理由は流通実態に合わせているためで、胃袋類は下ゆで済みで小売されるのが一般的だからです。ゆでると水分が抜けて重量が減るため、同じ100gで比べると「ゆで」の数値は生よりも凝縮された値になります。
具体的には、ギアラ308kcalという数値はゆでて水分が抜けた後の100g。生の状態から見れば同じ重量でも中身が違います。牛の胃4種を横並びで比べるときは、センマイだけが生の値だという点を頭の隅に置いてください。
とはいえ、実務的にはこの表のまま使って問題ありません。焼肉店で皿に載って出てくる胃袋類はすでに下ゆで済みで、成分表の「ゆで」の状態に近いためです。数値の絶対値より、部位間の順位関係を見るほうが役に立ちます。
低脂質で選ぶなら、この4部位を覚えておけばいい

センマイは57kcal・脂質1.3gで、鉄6.8mgも入っている
脂質を抑えて焼肉を楽しみたいなら、最初に頼むべきはセンマイです。100gあたり57kcal・脂質1.3gという数字は、牛肉の赤身部位を含めても最も軽い部類に入ります。
軽さの理由は組織構造にあります。センマイは葉状のひだが百枚重なったように見えることから名付けられた器官で、その正体は食べたものをすりつぶす筋肉と粘膜の層。脂肪をため込む役割を持たないため、脂質が1.3gに収まります。
スーパーや焼肉店での見分け方は色です。黒っぽい灰色のものが「黒センマイ」で表面の突起が残った状態、下処理で皮を剥いた白いものが「白センマイ」。どちらも成分としては同じ第三胃で、成分表の値は共通です。
あわせて覚えておきたいのが、鉄6.8mg・亜鉛2.6mgという数値。100gあたりの鉄はレバー4.0mgを上回ります。低脂質かつミネラルが取れる部位という点で、ホルモンの中では例外的な立ち位置です。ただし歯ごたえが強く、噛み切れずに残しやすいので、細かく切れ目が入ったものを選ぶと食べやすくなります。

焼肉店のメニューで見かける「センマイ」。頼んでみたいけれど、そもそも牛のどこの部位なのか、どうしてあんなにコリコリしているのか、気になったことはありませんか。名…
コブクロは64kcal・脂質0.9gで、脂質の最少記録
脂質という一点だけで見れば、コブクロ(豚子宮・生)の0.9gが今回並べた15部位で最も少ない値です。エネルギーも64kcalで、センマイに次ぐ軽さになります。
子宮は伸縮する平滑筋の器官で、脂肪組織をほとんど含みません。たんぱく質は14.6gあるので、重量あたりの内訳としてはほぼ「たんぱく質と水分」でできている部位ということになります。
店で出てくるコブクロは、白いホースのような形に切られているのが特徴。噛むとコリコリと弾力が返ってきて、脂の甘みではなく食感で食べる部位です。牛のコブクロも扱う店があり、こちらは牛子宮(ゆで)で95kcal・脂質3.0g・たんぱく質18.4gと、豚より少し数値が上がります。
注意点として、コブクロは脂が乗っていないぶん焼きすぎると硬くなります。表面に焼き色が付いたら早めに引き上げるほうが食感が残ります。塩・レモンで食べる店が多いのは、この部位に濃いタレを合わせると持ち味の淡白さが消えてしまうためです。
ハツは128kcal・脂質7.6gで、たんぱく質16.5gが取れる
脂質を抑えつつたんぱく質もほしい、という条件で選ぶならハツ(牛心臓)が現実的な答えになります。128kcal・脂質7.6g・たんぱく質16.5gという構成は、内臓系の中では赤身肉に近いバランスです。
心臓は生涯止まらずに動き続ける筋肉なので、脂肪をため込む余地が構造的にありません。断面を見ると繊維が密に詰まっていて、脂の白い筋がほとんど入っていないのがわかります。この見た目がそのまま数値に表れています。
選ぶときのポイントは色。鮮やかな赤褐色で表面に張りのあるものが新鮮な状態です。焼肉店では厚めに切られて出てくることが多く、片面30秒ずつ、表面に焼き色が付いて中心に赤みが残るくらいが食感の残る目安になります。
豆知識として、ハツは鉄3.3mg・亜鉛2.1mgを含みます。コレステロールは110mgで、内臓の中ではマメ310mg・ガツ250mgより低い水準。ホルモンを食べるとコレステロールが気になるという人にとって、ハツは相対的に選びやすい部位といえます。
レバーは119kcal・脂質3.7gで、鉄4.0mgとビタミンAが突出
レバー(牛肝臓・生)は119kcal・脂質3.7g・たんぱく質19.6gと、低脂質と高たんぱくを両立した数値です。ホルモンの中で、栄養密度という観点では際立った部位になります。
肝臓は栄養素を貯蔵・代謝する器官なので、鉄4.0mg、亜鉛3.8mg、ビタミンAのレチノール活性当量1100μgと、ミネラル・ビタミンの数値が他の部位とは桁が違います。脂質が少ないのは、肝臓が脂肪の「貯蔵庫」ではなく「処理場」だからです。
ただしコレステロールは240mgと高めで、この点は覚えておく必要があります。また炭水化物3.7gという数値も内臓では珍しく、これは肝臓に蓄えられたグリコーゲンによるものです。
実は意外と知られていないのですが、レバーの数値は「牛・豚・鶏」で大きく変わります。焼肉店で出るのは牛レバーですが、串焼き店の鶏レバーやもつ鍋の豚レバーとは鉄やビタミンAの量が別物です。「レバーは鉄が多い」と一括りにせず、どの動物のレバーかまで見ると数字が読めるようになります。なお牛レバーは生食用としての販売・提供が禁止されており、必ず加熱して食べる部位です(詳しくは後半で解説します)。
| 部位の位置 | 牛の第三胃(センマイ) |
| カロリー(100gあたり) | 57kcal |
| タンパク質・脂質 | たんぱく質11.7g/脂質1.3g |
| 食感・味の特徴 | ひだのコリコリした歯ごたえ、脂の甘みはほぼない |
| ミネラル | 鉄6.8mg/亜鉛2.6mg |
| おすすめ調理法 | 刺身風の和え物、さっと炙って塩・ゴマ油 |
脂が多いのはどれ?数字で見る「重い側」の顔ぶれ
ギアラは308kcal・脂質30.0gで、内臓の脂質トップ
牛の第四胃であるギアラは、308kcal・脂質30.0gで今回の15部位の脂質1位です。「赤センマイ」の名前で出てくることもありますが、センマイ1.3gとは23倍離れた別物だと考えてください。
第四胃は4つの胃の中で唯一、胃液を出して消化を行う「本物の胃」です。この器官は外側を厚い脂肪層が包んでおり、その脂ごと切り分けて提供されるため、成分表でも脂質30.0gという値が出ます。
見分け方は簡単で、赤みがかった身に乳白色の脂の縁が付いているのがギアラ。ひだが立って灰白色をしているセンマイとは、皿の上で見間違えることはまずありません。
脂が多いということは、それだけ焼いたときに落ちる量も多いということでもあります。網の上でじっくり焼けば脂は下に落ちますが、鉄板やフライパンでは落ちた脂をそのまま吸い戻します。ギアラを食べるなら網焼き、が数値のうえでも理にかなった選択です。
マルチョウ268kcal・脂質26.1g——「小腸だから軽い」は逆
マルチョウ(牛小腸)は268kcal・脂質26.1gで、ギアラに次ぐ2位です。たんぱく質は9.9gしかなく、重量の4分の1以上が脂質という構成になっています。
この数値になるのは、マルチョウが「腸を裏返して脂を内側に包んだ」状態で提供されるからです。腸そのものは薄い管ですが、腸を吊っている腸間膜の脂を落とさずに丸めるため、食べる部分の主成分が脂になります。焼くとぷっくり膨らんで中からジューシーな脂が出るのは、この構造によるものです。
ここでよくある失敗を1つ。「ホルモンで済ませたから軽く上がった」と思っていたのに、実際はマルチョウを3〜4皿食べていた、というパターンです。原因は、マルチョウが1切れ数gと小さく、皿数の感覚と実際の摂取量がずれること。対策は、脂の多い部位は最初の1皿だけと決め、追加は低脂質側の部位に回すこと。皿数ではなく部位で管理すると数字がぶれません。
もう1つ知っておきたいのが、マルチョウのビタミンB12が21.0μgと高いこと。脂質は多いものの、栄養面でまったく無価値というわけではありません。量を決めて楽しむ部位、という位置づけが実情に合っています。
シマチョウ150kcal・ハチノス186kcalは「中間層」
脂が多い側と少ない側の間に位置するのが、シマチョウ(牛大腸・生)150kcal・脂質13.0g、ハチノス(牛第二胃・ゆで)186kcal・脂質15.7g、ミノ(牛第一胃・ゆで)166kcal・脂質8.4gあたりです。
シマチョウはマルチョウと同じ腸ですが、大腸は小腸より壁が厚く、脂の付き方も控えめです。だから同じ「腸」でも268kcalと150kcalに分かれます。マルチョウとシマチョウを混同していると、脂質の見積もりが倍近くずれます。
ミノは中間層の中でも特殊で、166kcalながら脂質8.4g・たんぱく質24.5gという構成。たんぱく質量は今回の15部位で最も多く、亜鉛4.2mgも最多です。脂質を抑えつつ食べごたえを求めるなら、実はミノが有力な選択肢になります。
ハチノスは第二胃で、蜂の巣状の突起が名前の由来。脂質15.7gと中間層では高めですが、イタリア料理のトリッパとして煮込みに使われるように、下ゆでと煮込みで脂を落とす調理と相性がいい部位です。
牛タン318kcal・テール440kcalは、内臓の中でも別格
ホルモンの括りに入ることもある牛タン(牛舌・生)は318kcal・脂質31.8g、テール(牛尾・生)は440kcal・脂質47.1gで、いずれも今回の内臓系より上の数値です。
牛タンが高い理由は、舌が動き続ける筋肉であると同時に、根元側(タン元)に厚い脂肪層を持つためです。テールに至っては可食部の半分近くが脂質で、これは骨のまわりの脂とゼラチン質を一緒に食べる部位だからです。
とはいえ、この数字がそのまま「食べてはいけない」を意味するわけではありません。テールはスープにして脂を浮かせて取り除けば、口に入る量は変わります。牛タンも薄切りのタン先側なら脂は少なくなります。
覚えておきたいのは、成分表の値は「素材100gをまるごと食べたとき」の数字だということ。調理法で脂を落とす工程が入ると実際の摂取量は下がります。数値は上限の目安として読むのが、現実に近い使い方です。
| 部位の位置 | 牛の小腸(マルチョウ) |
| カロリー(100gあたり) | 268kcal |
| タンパク質・脂質 | たんぱく質9.9g/脂質26.1g |
| 食感・味の特徴 | 噛むと脂が出る、弾力のある皮とやわらかい脂の対比 |
| ビタミンB12 | 21.0μg |
| おすすめ調理法 | 網焼きで脂を落とす、もつ鍋で脂をスープに移す |
焼くとカロリーは下がる?実は数字は上がります
ハラミは生288kcalが、焼くと401kcalになる
「焼けば脂が落ちるからカロリーは下がる」と思われがちですが、成分表の数値は逆を示します。ハラミ(牛横隔膜)は生288kcal・脂質27.3gですが、焼きの値は401kcal・脂質37.2g。エネルギーで113kcal、脂質で9.9g増えています。
理由は水分です。焼くと肉から水分が抜けて重量が減り、同じ100gで比べたときの中身が濃くなります。落ちた脂の量よりも、抜けた水分の量のほうが大きいため、100gあたりの数値は上がるわけです。
実際の場面で言えば、生の状態で150g買ったハラミを焼くと、焼き上がりは110g程度に縮みます。この110gに対して401kcalの比率を掛けるのが正しい計算で、生150gに288kcalを掛けた値と大きくは変わりません。
ここを誤解すると、「焼いたら401kcalになった、焼くと太る」という逆の結論に行き着きます。増えているのは濃度であって総量ではない、という点を押さえておけば数字に振り回されずに済みます。

焼肉屋のメニューで「ハラミ」を見つけると、なんとなく「赤身っぽいしヘルシーそう」と手が伸びる人は多いはずです。でも実際のところ、ハラミのカロリーはカルビより低い…
それでも網焼きに意味があるのは、脂が「落ちる」から
100gあたりの数値は上がっても、網焼きで脂を落とす行為そのものには意味があります。落ちた脂は口に入らないため、皿1枚あたりの実際の摂取量は減るからです。
網焼きとフライパン焼きの違いはここに出ます。網の下に脂が落ちる網焼きに対し、フライパンは溶け出た脂の上で肉が焼かれるため、落ちた脂を吸い戻します。同じ部位でも仕上がりの脂の量が変わります。
家で焼くときの具体策は、フライパンなら途中でキッチンペーパーを使って溶けた脂を拭き取ること。ギアラやマルチョウのような脂質25g超の部位ほど効果が出ます。魚焼きグリルや網状のトレーを使えば、より近い条件になります。
注意したいのが、脂を落とそうとして焼きすぎること。特に脂の少ないコブクロ・センマイ・ハツは、長く焼くほど水分が抜けて硬くなるだけで、落ちる脂はほとんどありません。網焼きの利点が効くのは脂質の多い部位に限られます。
2つめの失敗パターン:タレ・締めのごはんで帳消しになる
部位選びで脂質を抑えたのに、結果として重くなってしまう典型が「周辺の追加」です。センマイやコブクロを選んで100gあたりの脂質を1g台に抑えても、甘辛いタレをたっぷり付け、締めに冷麺やクッパを追加すれば、その差は簡単に埋まります。
原因は、部位の数値だけを見て食事全体を見ていないこと。ホルモンの成分表の値は素材そのものであり、タレ・ゴマ油・ライス・ビールは別勘定です。低脂質部位を選んだ安心感が、周辺の追加を後押ししてしまう構図になります。
対策は単純で、味付けを塩とレモンに寄せること。センマイもコブクロもハツも、もともと脂の甘みより食感で食べる部位なので、塩系のほうが持ち味が出ます。タレは脂の多い部位に絞って使うと、満足感を残したまま総量を抑えられます。
もう1つの手が、順番の工夫です。脂の多いマルチョウやギアラを最初の1〜2皿で楽しみ、そこから先は低脂質側に切り替える。最後まで脂の多い部位を追加し続けるより、満足度を保ったまま着地しやすくなります。
焼くと100gあたりの数値は上がります(ハラミ:生288kcal→焼き401kcal)。これは水分が抜けて濃度が上がるためで、総量が増えているわけではありません。網焼きで脂を落とす効果は、脂質25g超のマルチョウ・ギアラのような部位でこそ効きます。
目的別・焼肉屋での頼み方を4タイプで整理する
脂質を抑えたい人:センマイ・コブクロ・レバーで組む
脂質を優先して抑えるなら、センマイ1.3g・コブクロ0.9g・レバー3.7g・牛コブクロ3.0gの4部位で組み立てるのが数値上は最も効率的です。この4つはいずれも脂質が4g未満に収まります。
この組み合わせが成立するのは、4部位とも食感や味の方向性が違うためです。センマイはコリコリ、コブクロは弾力、レバーはねっとり。同じ低脂質でも口の中の変化があるので、単調になりません。
店での頼み方としては、まずセンマイとレバーを1皿ずつ。センマイが刺身風で出る店なら焼かずに食べられるので、焼き時間の管理も楽です。コブクロは扱いのない店もあるので、メニューにあれば追加する、くらいの位置づけになります。
気をつけたいのは、レバーの焼き加減。低脂質だからと薄く焼くのは避けるべきで、中心まで加熱するのが前提の部位です。加熱条件については次のH2で扱います。
たんぱく質を確保したい人:ミノ・牛コブクロ・ガツ
たんぱく質量で選ぶなら、ミノ24.5g・レバー19.6g・牛コブクロ18.4g・ガツ17.4g・マメ16.7g・ハツ16.5gの順です。ミノの24.5gは今回の15部位で突出しています。
ミノが高い理由は、第一胃が食べ物を貯めて発酵させる巨大な筋肉の袋だからです。焼肉店で出る「上ミノ」は、この胃壁の厚い部分を切り出したもので、白い層に見えるのは脂ではなく筋層です。
組み合わせの例としては、ミノを2皿、ガツを1皿、ハツを1皿。この構成なら脂質を10g以下の部位で揃えつつ、たんぱく質を厚く取れます。ミノは亜鉛4.2mgも最多なので、栄養面でも取りこぼしが少ない選択です。
豆知識として、ミノは厚みがあるぶん火の通りに時間がかかります。切れ目が細かく入っているものは中まで火が入りやすく、逆に厚切りのまま短時間で上げると中心が生のままになりやすいので、断面の色を見て判断してください。
脂の旨味を楽しみたい人:量を決めてマルチョウを1皿
ホルモンの醍醐味である脂の甘みを求めるなら、マルチョウ26.1g・ギアラ30.0g・ハチノス15.7gが候補です。避けるのではなく、量を先に決めて楽しむのが現実的な向き合い方になります。
これらの部位が旨いのは、脂に含まれる香り成分が焼くことで立ち上がるためです。マルチョウを焼くと表面がぷくっと膨らみ、噛んだ瞬間に脂が出る。この体験は低脂質部位では代替できません。
具体的な組み方としては、マルチョウかギアラを1皿だけ最初に頼み、残りをセンマイ・ミノ・ハツで固める。1皿を我慢する代わりに全体で調整するほうが、満足度と数値の折り合いが付きます。
焼き方の注意点として、脂の多い部位は皮目を下にして先に焼くこと。脂側から火を入れると余分な脂が落ちてから身に火が入るので、仕上がりが重くなりません。焦げやすいので、火が上がったら網の端に避難させます。
家で焼く人:網に近づけるほど脂は落ちる
家でホルモンを焼くときは、器具の選択で結果が変わります。ホットプレートの平面よりも、溝付きプレートや魚焼きグリルのほうが脂が落ちる構造です。
理由は前述のとおりで、溶け出た脂の上で焼くか、脂が落ちた状態で焼くかの違いです。フライパンしかない場合は、途中で1〜2回キッチンペーパーで脂を拭き取ると近い条件になります。
下ごしらえの目安としては、ミノやハチノスのような厚みのある胃袋類は下ゆで済みの市販品を使うのが現実的。マルチョウやシマチョウは、脂の付き方を見て気になる場合は湯通しすると軽くなります。
もう1点、家で焼くときに落としがちなのが加熱の徹底です。店と違って火力が弱い器具では中心まで火が入りにくく、表面の焼き色だけで判断すると不十分になります。次のH2で扱う加熱条件を守ってください。
| タイプ | おすすめ部位 | 脂質の目安 | 味付け |
|---|---|---|---|
| 脂質を抑えたい | センマイ・コブクロ・レバー | 0.9〜3.7g | 塩・レモン |
| たんぱく質重視 | ミノ・牛コブクロ・ガツ | 3.0〜8.4g | 塩・ゴマ油少量 |
| 脂の旨味を楽しむ | マルチョウ・ギアラ | 26.1〜30.0g | タレ(1皿に限定) |
| 家で焼く | 豚ホルモン・シロコロ・ガツ | 5.1〜13.8g | 味噌だれ・塩 |
数字より先に守るべき、ホルモンの加熱ルール
牛レバーの生食は2012年7月から禁止されている
厚生労働省は、平成24年(2012年)7月1日から食品衛生法に基づき、牛のレバーを生食用として販売・提供することを禁止しています。カロリーや脂質を考える前に、この点が大前提になります。
規制の理由は、牛の肝臓の内部から腸管出血性大腸菌が検出され、安全に生食するために有効な予防対策が加熱殺菌以外に見出されなかったためだと厚生労働省は説明しています。表面を洗う、切り落とすといった処理では対応できないという判断です。
加熱の基準は明確で、中心部の温度が63℃で30分間以上、もしくは75℃で1分間以上とされています。家庭で温度計を使わない場合は、切ったときに中心までしっかり色が変わっていることが目安になります。
詳細は厚生労働省の「牛レバーを生食するのは、やめましょう(「レバ刺し」等)」で確認できます。店で「レバ刺し」の名称のメニューを見かけた場合も、生の牛レバーが提供されることはありません。
豚の内臓は2015年6月12日から生食用の提供が禁止
豚についても、平成27年(2015年)6月12日から、豚の食肉(内臓を含む)を生食用として販売・提供することが禁止されています。牛レバーに続く規制で、豚ホルモン・シロコロ・ガツ・コブクロもこの対象に含まれます。
理由として挙げられているのは、E型肝炎ウイルスのほか、サルモネラ属菌、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ等の食中毒菌や寄生虫のリスクがあり、安全に生で食べる方法がないためです。加熱条件は牛レバーと同様に、中心部を63℃で30分間以上、または同等以上(75℃で1分間以上など)とされています。
家庭で確認する方法としては、豚の内臓は「表面が白っぽく縮み、中心を切っても赤みや透明感が残っていない」状態まで焼くこと。豚ホルモンや豚大腸はゆで済みで売られていることが多いものの、再加熱を省略しない前提で扱ってください。
豆知識として、成分表の豚小腸・豚大腸・豚胃がいずれも「ゆで」で収載されているのは、こうした流通実態を反映したものです。数値の形態と安全上の扱いが一致している、と考えるとわかりやすくなります。
焼き上がりを見分ける3つの手順
ホルモンは形が不揃いで厚みも一定でないため、見た目だけの判断がずれやすい食材です。手順を決めておくと迷いません。
基本は、脂の多い面から先に焼き、色の変化を追い、中心を切って確認する、の3段階。特にマルチョウのような筒状の部位は、外側が焦げても内側に火が入っていないことがあります。
やりがちなのが、表面の焦げ目を「焼けた合図」と読むこと。焦げは表面温度の話であって、中心温度とは別です。厚みのあるミノやハツは、1切れ切って断面を見るのが確実な確認方法になります。
トングと箸を分ける、という基本を飛ばさない
加熱そのものと同じくらい大切なのが、生の状態のホルモンに触れたトングや皿を、焼けた肉に使い回さないことです。焼く工程で菌を減らしても、器具を介して戻ってしまえば意味がなくなります。
内臓は表面積が広く、ひだや筒状の構造が多いぶん、汚れや菌が残りやすい形をしています。センマイのひだ、ハチノスの蜂の巣状の突起、マルチョウの内側はいずれも複雑な形状です。
実践としては、焼肉店なら備え付けのトングを使い、取り箸は別に用意する。家庭なら生肉用の菜箸を1膳決めておき、焼けた肉には触れさせないルールにしておくと確実です。
牛レバーは平成24年7月1日から、豚の食肉(内臓を含む)は平成27年6月12日から、生食用としての販売・提供が食品衛生法に基づき禁止されています。加熱の基準は中心部が63℃で30分間以上、または75℃で1分間以上。カロリーや脂質を気にして焼き時間を短くする、という選択はしないでください。
まとめ|部位を1つ覚えるだけで、ホルモンの数字は読めるようになる
ホルモンのカロリーと脂質を左右しているのは、「内臓かどうか」ではなく「その臓器が脂肪をため込む構造かどうか」でした。胃をすりつぶす筋肉であるセンマイは57kcal、消化液を出す第四胃を厚い脂が包むギアラは308kcal。腸でも、脂ごと巻き込むマルチョウは268kcal、壁の厚い大腸のシマチョウは150kcalと倍近く違います。この理屈がわかっていれば、初めて見る部位名でも「どういう組織か」から見当がつけられます。最初の一歩として、次の焼肉ではセンマイとミノを1皿ずつ頼んでみてください。低脂質の代表と高たんぱくの代表を同時に体験できて、数値と食感の関係が体で理解できます。
なお、成分表の数値は日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の可食部100gあたりの値であり、実際に提供される量や下処理・味付けによって摂取量は変わります。最新情報は文部科学省 食品成分データベースでご確認ください。

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