スーパーの精肉コーナーで「牛もも肉」のパックを手に取って、カロリーが気になって戻した経験はありませんか。赤身だからヘルシーなはず、でも牛肉だから高いはず——その両方の予想が、実はどちらも半分正解です。
結論から言うと、牛もも肉のカロリーは100gあたり117〜235kcalの幅があります。同じ「もも肉」なのに約2倍。この差を決めているのは産地でも値段でもなく、「和牛か輸入牛か」と「脂身を含めて量るか、赤身だけで量るか」の2点です。ここを押さえると、パックのラベルを見るだけで自分が食べるカロリーの見当がつくようになります。
この記事では、文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の実数値をもとに、牛もも肉のカロリーを産地別・調理法別に整理します。焼くと数値が上がる理由、豚もも・鶏むねとの距離、売り場での見分け方、そして赤身に詰まった鉄と亜鉛の話まで、数字を追いながら順に見ていきましょう。
この記事でわかること
・牛もも肉のカロリーが100gあたり117〜235kcalと幅を持つ理由
・和牛・国産牛(乳用種)・輸入牛の実数値と、ラベルでの見分け方
・焼く/ゆでるとカロリー表示がどう変わり、実際の摂取量はどうなるか
・カロリーだけでは見えない鉄・亜鉛・たんぱく質の中身と、選び方の基準
牛もも肉のカロリーは100gあたり117〜235kcal【成分表の実数値】

和牛・国産牛・輸入牛で118kcalも離れている
牛もも肉のカロリーは、牛の種類で階段状に変わります。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の「もも・脂身つき・生」で比べると、和牛が100gあたり235kcal、乳用肥育牛(ホルスタインなどの国産牛)が196kcal、輸入牛が148kcalです。上と下で87kcal、赤身だけを量った輸入牛の117kcalまで含めると118kcalの開きがあります。
理由は霜降りの入り方です。和牛は脂肪交雑(サシ)が入るように肥育されるため、赤身の繊維の間にまで脂肪が入り込みます。もも肉はサシが入りにくい部位ですが、それでも和牛の脂質は100gあたり18.7g、輸入牛は8.6gと2倍以上の差が出ます。
売り場での見分け方は単純で、パックの表示です。「和牛」「黒毛和種」と書かれていれば235kcal側、「国産牛」なら196kcal前後、「オーストラリア産」「アメリカ産」なら148kcal側の数値が目安になります。断面を見て、白い脂の筋が細かく散っているほど上の数値に近づくと考えてください。
注意したいのは、和牛の「もも」でも235kcalは焼肉店の特上カルビ(和牛ばら472kcal)の半分だという点です。もも肉は和牛でも牛肉の中では低い部類に入ります。「和牛だから高カロリー」ではなく「部位で決まる」というのが正確な理解です。
| 部位の位置 | 牛の後ろ脚の付け根から腰にかけての大きな塊。うちもも・しんたま・らんいち・そとももに分割される |
| カロリー(100gあたり) | 和牛235kcal/乳用肥育牛196kcal/輸入牛148kcal(いずれも脂身つき・生) |
| タンパク質・脂質 | 和牛赤肉でたんぱく質21.3g・脂質10.7g/輸入牛赤肉で21.2g・4.3g |
| 食感・味の特徴 | きめが締まった赤身。噛むほどに肉の香りが出るが、火を通しすぎると硬くなりやすい |
| 1頭からの取れる量目安 | 枝肉の中でも大きな部分を占め、スライス・ブロック・ステーキと幅広く出回る |
| おすすめ調理法 | ステーキ、ローストビーフ、しゃぶしゃぶ、煮込み |

「脂身つき」「皮下脂肪なし」「赤肉」は別々に数えられている
成分表を調べたときに数値がばらつく最大の原因が、この3表記の違いです。同じ和牛のももでも、脂身つきは235kcal、皮下脂肪なしは212kcal、赤肉は176kcalと、階段状に下がっていきます。
これは測定対象が違うからです。「脂身つき」は外側の皮下脂肪も筋間脂肪も含めた状態、「皮下脂肪なし」は外周の白い脂を取り除いた状態、「赤肉」は筋間脂肪まで外して赤い部分だけにした状態を指します。つまり、包丁で脂をどこまで削ったかの違いがそのまま数値になっています。
具体例で言えば、ブロックのまま買って外側の脂をそのまま焼けば235kcal側、脂を切り落としてから焼けば212kcal側の計算になります。しゃぶしゃぶ用の薄切りは脂身が少ない部分が多く、赤肉の176kcalに近い場合もあります。ネット上で「牛もも肉は176kcal」と「235kcal」の両方の記述を見かけるのは、どちらも正しく、前提が違うだけです。
知っておくと得なのは、この差が調理前の一手間で自分の手に入るという点です。和牛ももで脂身つきと赤肉の差は59kcal。150gのステーキなら約89kcalの差になります。カロリーを気にするなら、焼く前に外周の白い脂をどこまで落とすかが最初の分岐点です。
ステーキ150g・薄切り3枚だと結局何kcalになるか
100gあたりの数値は比較には便利ですが、実際に食べる量とは一致しません。使う場面ごとに換算しておくと現実的な把握ができます。
ステーキ用の厚切り1枚を150gとすると、和牛ももの赤肉なら176kcal×1.5で264kcal、輸入牛ももの赤肉なら117kcal×1.5で176kcalです。すき焼き・しゃぶしゃぶ用の薄切りは1枚20g前後なので、3枚で約60g。国産牛(乳用肥育牛)のもも脂身つき196kcalで計算すると約118kcalになります。
この換算で見えてくるのは、部位より「量」の影響が大きい場面があるという事実です。輸入牛ももの赤肉を150g食べる(176kcal)のと、和牛ももの赤肉を100g食べる(176kcal)のは同じカロリー。安い輸入牛を選んで量を増やすか、和牛を少量にするかは好みで選べます。
やりがちな失敗が、パックの総グラム数と食べる量を混同することです。300gのパックを2人で分ければ1人150gですが、味付けの脂やタレは別勘定になります。肉のカロリーだけを見て安心すると、フライパンに引いた油や焼肉のタレの分が抜け落ちます。
自分が買った肉がどの数値に当たるかを見分ける
成分表の数値を自分の食卓に当てはめる手順は、ラベルの3か所を順に見るだけです。品種表示(和牛/国産牛/輸入)、部位表示(もも/そともも/らんいち)、そして肉の断面。この3つで、ほぼ数値が定まります。
根拠は、成分表の分類がまさにこの3軸で作られているからです。うし[和牛肉][乳用肥育牛肉][交雑牛肉][輸入牛肉]の4系統があり、それぞれに「もも」「そともも」の項目があり、さらに脂身つき/皮下脂肪なし/赤肉に分かれています。ラベルと成分表は同じ言葉で書かれているので、突き合わせが可能です。
実際の見分け方としては、断面の白い部分の面積が判断材料になります。赤身の中に白い線がほとんど見えなければ赤肉の数値(和牛176kcal・輸入牛117kcal)に近く、外周に白い脂の帯がはっきり残っていれば脂身つきの数値(和牛235kcal・輸入牛148kcal)で考えるのが妥当です。
豆知識として、成分表の数値は文部科学省の食品成分データベースで誰でも無料で調べられます。食品番号11019が和牛もも脂身つき、11021が和牛もも赤肉です。気になったその場で確認できるので、ブックマークしておくと買い物中に役立ちます。
同じもも肉で数値が2倍変わるのはなぜ?
差の正体は「水分と脂の入れ替わり」
牛肉のカロリーが動く仕組みは、意外なほど単純です。肉の重さの大半は水分とたんぱく質と脂質で、このうちカロリーを持つのは主にたんぱく質(1gあたり約4kcal)と脂質(1gあたり約9kcal)。脂が増えるとその分だけ水分が押し出されるため、同じ100gでもカロリーが跳ね上がります。
数字で追うとはっきりします。和牛ももの赤肉は脂質10.7gでたんぱく質21.3g、脂身つきになると脂質18.7gに増える代わりにたんぱく質は19.2gに減ります。脂が8g増えてたんぱく質が2.1g減った結果、カロリーは176kcalから235kcalへ59kcal上がりました。
ここから実用的な結論が出ます。カロリーを下げたいなら「たんぱく質の数値が高い肉を選ぶ」のが近道です。たんぱく質21g台の牛もも肉は、脂質が10g前後に収まっている証拠。パックにたんぱく質量が書かれていなくても、赤身が濃く白い部分が少ない肉ほどこの条件を満たします。
誤解しやすいのは「水っぽい肉は低カロリー」という発想です。ドリップ(赤い汁)が出ている肉は水分が抜けている最中なので、その分カロリー密度はむしろ上がります。ドリップの多さは鮮度と食感の問題であり、カロリーの目安にはなりません。
| 比較項目 | 脂身つき | 皮下脂肪なし | 赤肉 |
|---|---|---|---|
| エネルギー | 235kcal | 212kcal | 176kcal |
| たんぱく質 | 19.2g | 20.2g | 21.3g |
| 脂質 | 18.7g | 15.5g | 10.7g |
| 見た目の目安 | 外周に白い脂の帯 | 外周の脂を除いた状態 | 赤い部分だけ |
※和牛肉のもも(生)100gあたり。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より
牛の脂身だけを量ると100gで594kcalになる
脂がカロリーに与える影響の大きさは、脂身そのものの数値を見ると腑に落ちます。成分表には「乳用肥育牛肉/もも/脂身/生」という項目があり、その値は100gあたり594kcal。同じ牛の同じももでも、赤肉の130kcalとは4倍以上離れています。
この差が生まれるのは、脂身の成分構成が極端だからです。脂身100gの内訳は脂質64.1g、水分30.2g、たんぱく質はわずか5.1g。1gで9kcalの脂質が全体の6割以上を占めているため、少量でもカロリーが積み上がります。
実際の場面に置き換えると、ステーキの外周に付いている脂の帯を10g食べるだけで約59kcal。ごはん軽く4分の1杯ほどに相当します。同じ10gを赤身で食べれば13kcal前後ですから、同じ一口でも意味がまったく違います。
ただし脂を全部落とせばいいという話でもありません。脂は加熱中に肉の表面をコーティングして水分の蒸発を抑える役割があり、完全に除くとパサつきやすくなります。焼く前ではなく食べる直前に脂を残すか外すか決められるよう、ブロックなら焼いてから切り分けるのが現実的です。
交雑牛のももが312kcalになる例外
ここまで「和牛が最も高い」と書いてきましたが、成分表にはそれを上回る項目があります。交雑牛肉のもも(脂身つき・生)は100gあたり312kcalで、和牛の235kcalより77kcal高い数値です。
交雑牛とは、黒毛和種の雄と乳用種(ホルスタイン)の雌を掛け合わせた「F1」と呼ばれる牛のこと。和牛の脂ののりやすさと乳用種の体格を併せ持つため、部位によっては和牛以上に脂が入ることがあります。成分表の交雑牛もものたんぱく質は16.4g、脂質28.9gと、和牛のもも(19.2g/18.7g)より明らかに脂寄りの数値です。
売り場では「交雑種」「国産牛(交雑種)」「F1」などと表示されます。値段は和牛より抑えめなことが多く、「和牛じゃないから軽いはず」と考えて選ぶと、成分表の上では逆になる場合があるわけです。
もっとも、これは成分表に収載された1つのサンプルの数値であり、実際の肉は個体差があります。数値を絶対視するより、「交雑種のももは和牛並みかそれ以上に脂が入ることがある」と幅を持って捉え、断面の白さで判断するのが実践的です。
失敗パターン①「国産牛」を和牛の数値で計算してしまう
カロリー計算でつまずきやすいのが、「国産牛」と「和牛」を同じものとして扱ってしまうケースです。この2つは別の表示であり、成分表でも別項目、数値も39kcal違います。
原因は言葉の紛らわしさにあります。「和牛」は黒毛和種など指定された4品種を指す品種の表示で、「国産牛」は日本国内で一定期間飼育された牛全般を指す産地の表示。乳用種のオス牛も交雑種も、輸入されて日本で育った牛も「国産牛」になり得ます。つまり国産牛の大半は和牛ではありません。
具体的な影響を計算してみます。国産牛(乳用肥育牛)のもも脂身つきは196kcal。これを和牛の235kcalで計算すると、150gあたり59kcalの過大評価になります。逆に和牛を国産牛の数値で計算すれば、同じだけ少なく見積もることになります。
対策はラベルの語を一字読むだけです。「和」の字があるかどうか。ないなら196kcal、あるなら235kcalを起点にする。これだけで日々の見積もりのズレが大きく減ります。
焼く・ゆでるとカロリーはどこまで動くのか

100gあたりで比べると、加熱後のほうが高くなる
調理後の数値を見て驚く人が多いのがこの項目です。国産牛(乳用肥育牛)のもも・皮下脂肪なしで比べると、生が169kcalなのに対し、ゆでが235kcal、焼きが227kcal。加熱すると100gあたりの数値は上がります。
理由は水分です。生の状態では水分が68.2gありますが、ゆでると56.4g、焼くと56.9gまで減ります。水分は0kcalなので、水が抜けた分だけ100g中のたんぱく質と脂質の割合が高まり、数値が押し上げられる仕組みです。たんぱく質は生20.5g→ゆで28.4g、焼き28.0gと、実際に濃縮されています。
見分け方として役立つのは、この現象が「凝縮」であって「増加」ではないという点です。生100gを焼けば重さは100gより軽くなるので、焼き上がったもの全部を食べても、生100g分のカロリーを超えることはありません(フライパンの油を足さない限り)。
注意したいのは、外食やお惣菜の栄養表示を見るときです。表示は調理後の重量で計算されているのが一般的なので、「生の数値より高い」と感じても、それは水分が抜けた後の値だからです。生の数値と調理後の数値をそのまま比べないようにしましょう。
| 比較項目 | 生 | ゆで | 焼き |
|---|---|---|---|
| エネルギー | 169kcal | 235kcal | 227kcal |
| たんぱく質 | 20.5g | 28.4g | 28.0g |
| 脂質 | 9.9g | 13.8g | 13.2g |
| 水分 | 68.2g | 56.4g | 56.9g |
※乳用肥育牛肉のもも・皮下脂肪なし100gあたり。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より。お肉の教科書調べ
「1食分」で考えると数値は増えていない
カロリー管理で本当に必要なのは100gあたりの値ではなく、皿に乗った肉全体の総量です。ここを分けて考えると、加熱による数値の上昇に振り回されずに済みます。
仕組みはこうです。生の肉は加熱すると水分が抜けて軽くなります。生150gの肉を焼いて110gになったとすると、食べているたんぱく質と脂質の総量は基本的に変わりません(脂が溶け出して落ちた分は減ります)。100gあたりの数値が上がったのは、分母である重さが小さくなったからです。
実際の運用としては、肉は生の状態のグラム数で記録するのが簡単です。パックに書かれた内容量をそのまま使えるうえ、成分表の「生」の数値と対応するので計算が一度で済みます。焼き上がりを量り直す必要はありません。
落とし穴は調理油と調味料です。植物油は大さじ1(12g)で約110kcal。牛もも肉100g分の半分以上に相当します。肉のカロリーを気にしてフライパンに油をたっぷり引いてしまうと、努力の方向が逆になります。テフロン加工のフライパンや、肉から出た脂で焼く方法が実用的です。
焼き方で脂を落とすとどれくらい変わるか
加熱中に溶け出た脂を落とせば、実際に口に入る脂質は減ります。網焼き・グリル・湯通しの3つが代表的な方法です。
根拠は脂の融点にあります。牛脂は40〜50度前後で溶け始めるため、加熱すると肉の外へ流れ出ます。網焼きは落ちた脂が下に落ちるので回収されず、フライパンは受け皿に溜まった脂で焼き続けることになります。同じ肉でも、焼く道具で口に入る脂の量は変わります。
具体的な手順としては、しゃぶしゃぶが分かりやすい例です。薄切りのもも肉を湯にくぐらせると、脂の一部が湯に移り、湯の表面に浮きます。これをすくって捨てれば、その分は食べていません。同じ肉をすき焼きにすると、割り下と一緒に脂も食べることになります。
覚えておきたいのは、脂を落とすと同時に旨味も一部逃げるという点です。もも肉はもともと脂が少ないので、落としすぎると硬くパサついた食感になります。カロリーを削るのが目的なら、脂の多いばら肉やカルビでこそ効果が大きく、もも肉ではやりすぎない方が満足度が保てます。
ローストビーフにすると100gで190kcal
牛もも肉の代表的な使い道であるローストビーフは、成分表に加工品として収載されています。その値は100gあたり190kcal、たんぱく質21.7g、脂質11.7gです。
この数値が示すのは、ローストビーフが赤身寄りの食品だということです。たんぱく質21.7gは和牛もも赤肉の21.3gとほぼ同じ水準で、脂質11.7gも赤肉の10.7gに近い。低温でじっくり火を入れる調理法なので、水分が飛びすぎず、脂も過剰に足されていないことが数値から読み取れます。
実際に食卓で使うなら、薄切り3枚で約50gと考えると95kcal前後。サラダに乗せる用途なら、たんぱく質を10g以上足しながらカロリーは100kcal以下に収まる計算です。市販品はソース込みのことが多いので、ソースの量は別に見ておきましょう。
気をつけたいのは、家庭で作る場合の加熱です。ローストビーフは中心がピンク色に仕上がる料理ですが、これは「生でよい」という意味ではありません。加熱の考え方は記事後半の安全パートで詳しく扱います。
牛もも肉のカロリーを他の部位・豚・鶏と並べて確認する
牛肉7部位を1枚の表で比較する【お肉の教科書調べ】
もも肉の位置づけは、他の部位と並べたときにはっきりします。すべて日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の生の数値です。
| 部位 | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 |
|---|---|---|---|
| 和牛リブロース(脂身つき) | 514kcal | 9.7g | 56.5g |
| 和牛ばら(脂身つき) | 472kcal | 11.0g | 50.0g |
| 和牛サーロイン(脂身つき) | 460kcal | 11.7g | 47.5g |
| 和牛もも(脂身つき) | 235kcal | 19.2g | 18.7g |
| 和牛ヒレ(赤肉) | 207kcal | 19.1g | 15.0g |
| 和牛もも(赤肉) | 176kcal | 21.3g | 10.7g |
| 輸入牛もも(赤肉) | 117kcal | 21.2g | 4.3g |
表を縦に見ると、カロリーの順位とたんぱく質の順位がきれいに逆転しているのがわかります。514kcalのリブロースはたんぱく質9.7g、117kcalの輸入牛ももは21.2g。牛肉を「たんぱく源」として食べるなら、もも肉は同じ量でリブロースの2倍以上のたんぱく質が取れる部位です。
興味深いのは、和牛もも赤肉(176kcal)が和牛ヒレ赤肉(207kcal)より低い点です。ヒレは高級な赤身部位として知られますが、成分表の上ではもも肉のほうが脂質が少なくなっています。柔らかさと低脂質は別の指標だということが、この2行から読み取れます。
部位ごとのカロリー差をさらに広く見たい方は、こちらの記事で焼肉の定番部位を横断的に比較しています。

「焼肉って結局どのくらいカロリーがあるの?」——注文する直前、タッチパネルの前で手が止まった経験はありませんか。カルビもハラミもタンも、見た目はどれも同じ「肉の…
豚もも171kcal・鶏むね105kcalとの距離を測る
牛もも肉は、他の肉のもも肉と比べてどうなのか。豚もも肉(大型種・脂身つき・生)は171kcal、鶏むね肉(若どり・皮なし・生)は105kcalです。国産牛のもも脂身つき196kcalと並べると、牛・豚・鶏の順に下がっていきます。
この差は脂質で説明できます。国産牛もも13.3g、豚もも10.2g、鶏むね1.9g。鶏むねは皮を外すと脂質が2g未満になるため、カロリーが飛び抜けて低くなります。たんぱく質は鶏むね23.3g、豚もも20.5g、国産牛もも19.5gと、こちらは差が小さめです。
実際の使い分けで見ると、カロリーだけを基準にするなら鶏むねが有利です。ただしミネラルまで見ると景色が変わります。鉄は牛もも赤肉(乳用肥育牛)が2.7mg、豚ももが0.7mg。亜鉛も牛もも赤肉5.1mgに対し豚もも2.0mgで、牛の赤身が抜けています。
注意点として、鶏むねも皮つきなら数値は上がります。「鶏=低カロリー」ではなく「皮なしの鶏むね=低カロリー」が正確です。牛もも肉における「脂身つきか赤肉か」と、まったく同じ構造の話だと考えてください。
失敗パターン②「ももが高いからひき肉に」で脂質が倍になる
節約とカロリー管理を同時にやろうとしたときに起きやすいのが、もも肉を牛ひき肉に置き換えるパターンです。この置き換えは、カロリー面では逆方向に働きます。
牛ひき肉(生)は100gあたり251kcal、たんぱく質17.1g、脂質21.1g。和牛もも赤肉(176kcal・脂質10.7g)と比べると、カロリーは75kcal高く、脂質は約2倍です。ひき肉は端材や脂の多い部分を含めて挽くため、赤身のブロックより脂質が高くなりやすい構造になっています。
具体例で言えば、150gのハンバーグをひき肉で作ると肉だけで376kcal。同じ150gをもも肉のステーキにすれば264kcalです。112kcalの差は、つなぎのパン粉や調理油を加える前の段階で生まれています。
対策は、ひき肉を使うなら赤身の比率が高いものを選ぶことです。パックに「赤身」と書かれたひき肉や、もも肉のブロックを買ってフードプロセッサーにかける方法もあります。ひき肉が悪いのではなく、「もも肉と同じ感覚でカロリーを見積もると外れる」というのが要点です。
数値の裏側にある赤身の中身——鉄・亜鉛・たんぱく質
鉄2.8mgは、月経のある女性の推奨量の4分の1以上
牛もも肉の赤身が支持される理由は、カロリーの低さより鉄の多さにあります。和牛もも赤肉の鉄は100gあたり2.8mg、国産牛(乳用肥育牛)のもも赤肉は2.7mgです。
この数値の意味は、基準と並べるとわかります。厚生労働省のe-ヘルスネットによれば、日本人の食事摂取基準(2025年版)での鉄の推奨量は、成人男性で6.5〜7.5mg、月経のない女性で5.5〜6.0mg、月経のある女性で10.0〜10.5mg。牛もも赤肉100gの2.8mgは、月経のある女性の推奨量の4分の1以上、成人男性なら約4割に当たります。
さらに、肉の鉄は「ヘム鉄」という形で存在します。e-ヘルスネットには「ヘム鉄は非ヘム鉄よりも吸収がよく」と記載されており、野菜や穀物に含まれる非ヘム鉄より体に取り込まれやすい形です。同じ数値のミリグラムでも、取り込まれる量に差が出ます。
豆知識として、鉄はもも肉の中でも赤身が濃い部分に多く含まれます。脂身つき(2.5mg)より赤肉(2.8mg)のほうが高いのは、脂身の部分にはほとんど鉄がないから。カロリーを下げる選択と鉄を取る選択が同じ方向を向いているのが、赤身部位の面白いところです。
亜鉛4.5〜5.1mgは牛肉ならではの数値
牛もも肉のもう一つの持ち味が亜鉛です。和牛もも赤肉で4.5mg、国産牛のもも赤肉では5.1mgと、100gでかなりまとまった量が含まれています。
比較対象を置くとその位置がわかります。豚もも肉(脂身つき)の亜鉛は2.0mg。牛もも赤肉の5.1mgは、その2.5倍以上です。輸入牛のもも赤肉も4.1mgあり、産地を問わず牛の赤身は亜鉛の供給源になっています。
選ぶときの目安としては、亜鉛も鉄と同じく赤身に寄っています。和牛もも脂身つきの4.0mgに対し赤肉は4.5mg、国産牛のもも脂身つき4.5mgに対し赤肉は5.1mg。脂を落とすほど100gあたりのミネラル濃度が上がる関係です。
気をつけたいのは、亜鉛をサプリメントで補う発想に飛びつかないことです。日常の食事で牛の赤身を取り入れれば、たんぱく質・鉄・亜鉛が同時に取れます。特定の栄養素だけを切り出すより、部位を選んで肉として食べるほうが素直な方法です。
たんぱく質21.3gは、牛肉の中でトップクラス
牛もも肉の赤身は、たんぱく質量でも牛肉の上位に位置します。和牛もも赤肉が21.3g、輸入牛もも赤肉が21.2g、国産牛のもも赤肉が21.9g。いずれも100gで20gを超えています。
なぜ高いかというと、赤身は筋肉そのものだからです。もも肉は牛が体重を支えて歩くために使う筋肉なので、筋繊維が発達しており、脂肪より筋肉の割合が高くなります。逆にリブロースやばらは脂肪の割合が高く、たんぱく質は10g前後まで下がります。
使い分けの例を挙げると、たんぱく質を20g確保したい場合、もも赤肉なら約95g、和牛リブロースなら約206g必要です。同じたんぱく質20gでも、前者は約167kcal、後者は1,000kcalを超える計算になります。この差は、日々の食事では無視できない大きさです。
覚えておきたいのは、加熱すると100gあたりのたんぱく質はさらに上がるという点です。国産牛もも(皮下脂肪なし)は生で20.5g、焼きで28.0g。水分が抜けて濃縮された結果ですが、食べやすい量に対してしっかりたんぱく質が入っていることの裏付けにはなります。
実は「もも肉=ヘルシー」が成り立たない買い方がある
ここまで数値を追ってきて、あえて逆の視点も置いておきます。意外と知られていないけれど、もも肉を選んでも結果的に高カロリーになる買い方が存在します。
1つ目は、そとももを選んだ場合です。成分表では「もも」と「そともも」が別項目で、和牛そとももは244kcal、和牛ももは235kcal。国産牛ではそともも220kcal対もも196kcalで、24kcalの差がつきます。同じ後ろ脚でも部位名が違えば数値も違います。
2つ目は、交雑種のももを選んだ場合で、これは312kcalとサーロイン・リブロースには及ばないものの、和牛ももを上回ります。3つ目は、切り落としやこま切れです。複数部位が混ざるため、ばら由来の脂の多い切れ端が入っていれば表示部位から想像した数値より上振れします。
だからといってもも肉を避ける必要はありません。要するに「もも」の2文字だけで判断せず、品種表示・部位表示・断面の3点セットで見るということ。逆に言えば、この3点さえ見れば、もも肉は牛肉の中でカロリーとたんぱく質のバランスが取りやすい部位であり続けます。
牛もも肉の赤身は、100gでたんぱく質21g前後・鉄2.7〜2.8mg・亜鉛4.5〜5.1mgが同時に取れます。カロリーを抑えたい人にとっても、鉄や亜鉛を意識したい人にとっても選びやすい構成です。脂を落とすほどこれらの濃度は上がるので、「赤身を選ぶ」ことが両方の目的に効きます。
売り場でカロリーを下げる牛もも肉の選び方
ラベルの4分類を覚えれば、数値は自動的に決まる
売り場で見るべき表示は4つに整理できます。「和牛」「交雑種」「国産牛(乳用種)」「輸入牛」。この4分類がそのまま成分表の系統に対応しています。
対応関係を確認しておくと、和牛=235kcal、交雑種=312kcal、国産牛(乳用肥育牛)=196kcal、輸入牛=148kcal(いずれももも・脂身つき・生100gあたり)。カロリーを抑えたいなら輸入牛、風味を優先するなら和牛、という選択が数値の上でも成立します。
実際の売り場では、和牛には個体識別番号が印字されていることが多く、産地と品種を追えます。「国産牛」表示のパックには品種が書かれていない場合もあり、その場合は乳用種か交雑種かの判別は断面の脂の量で推測することになります。白い霜降りが目立つ「国産牛」は交雑種の可能性を考えたほうが実態に近づきます。
やりがちなのが、値段の安さでカロリーを推測することです。輸入牛は価格が抑えめでカロリーも低い傾向にありますが、これはたまたま両方が同じ方向に動いているだけ。値段と数値は本来別の話なので、ラベルで確認するのが確実です。
もも肉は4ブロック——うちもも・しんたま・らんいち・そともも
「もも」は1つの部位名のようでいて、実際は複数のブロックの総称です。農林水産省関係の牛肉小売品質基準でも、うちもも・しんたま・らんいち・そとももといった名前で区分されています。
それぞれ性格が違います。うちももは内股側の大きな赤身で、きめが細かくローストビーフやたたきに向きます。しんたまは膝の上あたりの球形の塊で、中にシンシンやトモサンカクなどの小分けが取れます。らんいちは腰寄りでランプとイチボを含み、もも系の中では柔らかい部類。そとももは外側の運動量が多い部分で、繊維が強く煮込み向きです。
成分表の数値でも違いは出ていて、和牛のもも235kcalに対しそとももは244kcal、国産牛ではもも196kcalに対しそともも220kcalです。同じ後ろ脚でも、部位表示によってカロリーは変わります。
選ぶときの実用的なコツは、用途で選ぶことです。ステーキやローストビーフならうちもも・らんいち、しゃぶしゃぶなら薄切りにしやすいうちもも、シチューやカレーならそともも。柔らかさとカロリーが同時に気になるなら、しんたま系の小分け部位に目を向けるのも手です。

焼肉店のメニューで「トモサンカク」を見かけて、「これって一体どこの部位なんだろう?」と気になったことはありませんか。もも肉の仲間と聞くと赤身であっさりしたイメー…
シーン別・カロリーを抑えたい人の選び方
目的別に整理すると、選ぶべきパックが変わります。同じ「牛もも肉」でも、狙いによって最適解は違います。
たんぱく質をしっかり取りながらカロリーを抑えたい人は、輸入牛のももブロックが有利です。赤肉117kcal・たんぱく質21.2g・脂質4.3gという構成は、牛肉の中で最も効率の良い組み合わせのひとつ。焼く前に外周の脂を切り落とせば、さらに数値が下がります。
味と満足度を優先しつつ数値も抑えたい人は、国産牛のもも薄切りが向きます。196kcalは和牛より39kcal低く、しゃぶしゃぶにすれば脂の一部は湯に落ちます。特別な日に和牛を選ぶ場合でも、部位をももにすればサーロイン460kcalの半分程度で収まります。
鉄や亜鉛を意識したい人は、赤身の色が濃いブロックを選び、赤肉の状態に近づけて食べるのが合理的です。ミネラルは赤身側に寄っているので、脂を落とすほど100gあたりの含有量が上がります。
注意点は、カロリーを下げる工夫をしすぎて食べ切れない硬さにしないことです。もも肉は火を通しすぎると縮んで硬くなります。次の章の焼き方まで含めて選ぶと、数値と満足度の両立がしやすくなります。
脂の少ない部位を横断的に知りたい方は、こちらもあわせてどうぞ。

「牛肉は食べたいけれど脂が気になる」「ダイエット中でも肉でタンパク質をとりたい」。そんなときに知っておきたいのが、牛肉の中でも脂が少ない部位です。同じ牛の肉でも…
やわらかく仕上げる焼き方と、加熱で外せない一線
もも肉が硬くなる原因は「焼きすぎ」と「冷たいまま焼く」
もも肉の調理でつまずく最大の理由は、赤身ゆえに脂の助けが少ないことです。手順を決めておけば、家庭のフライパンでも縮みを抑えられます。
科学的な背景としては、肉のたんぱく質は加熱で収縮し、水分を外に押し出します。冷蔵庫から出したての冷たい肉を強火にかけると、表面と中心の温度差が大きくなり、外側が縮み切ってから中心に火が入ることになります。常温に戻すのは、この温度差を減らすためです。
厚みごとの目安を持っておくと失敗が減ります。厚さ1cm程度のステーキなら中火で片面1分30秒〜2分、厚さ2cmの塊なら表面を強火で焼き固めてから弱火に落として時間をかける、という組み立てです。薄切りは火の通りが速いので、色が変わったら引き上げます。
豆知識として、焼き上がった後にアルミホイルで包んで数分休ませると、肉汁が中心に戻って切ったときの流出が減ります。休ませる時間は焼いた時間の半分から同じくらいが目安です。
加熱の目安は中心温度75度で1分間以上
カロリーの話とは別に、牛肉を扱ううえで外せないのが加熱です。厚生労働省は食肉について、中心温度75度で1分間以上の加熱が重要としています。
理由は、牛などの家畜の腸内には腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌といった食中毒の原因菌が存在し、食肉になる過程で肉の表面に付着することがあるためです。厚生労働省は広報誌の解説ページで、2011年に牛肉のユッケで発生した食中毒により181名の患者が出て5名が亡くなった事例を挙げ、加熱の必要性を説明しています。
実際の判断としては、ひき肉料理は中心部までしっかり火を通し、肉汁が透明になって中心部の色が白っぽく変化したことを目安にするよう案内されています。ブロックのステーキと違い、ひき肉は内部にも菌が混ざり込む可能性があるためです。
また、牛のレバーや豚の肉(内臓を含む)は生食用としての販売が禁止されています。もも肉のカロリーが低いからといって生に近い状態で量を食べる、といった発想は避け、加熱の基準を優先してください。
厚生労働省は、食肉について中心温度75度で1分間以上の加熱が重要としています。ひき肉料理は肉汁が透明になり、中心部の色が白っぽく変化したことを目安にしてください。また、牛のレバーや豚の肉(内臓を含む)は生食用としての販売が禁止されています。生食用の表示がない食肉を生で食べることは避けましょう。
ローストビーフ・低温調理で気をつけたいこと
牛もも肉の花形料理であるローストビーフは、中心がピンク色に仕上がります。ここで理解しておきたいのは、色と加熱の状態は必ずしも一致しないという点です。
肉の色はミオグロビンという色素の変化で決まり、温度以外の要因でも変わります。そのため見た目の色だけで加熱の可否を判断するのは確実ではありません。厚生労働省が示す中心温度75度で1分間以上という基準や、これと同等以上の加熱効果を持つ方法を目安にするのが、公的な案内に沿った考え方です。
家庭で塊肉を扱う場合の実践としては、調理用の温度計で中心温度を測るのが最も確実です。表面が焼けていても中心は冷たいままということが起こりやすいのが塊肉。特に冷蔵庫から出したての肉を短時間で焼くと、中心温度が上がりきりません。
もう一点、生肉を扱った包丁とまな板をそのまま野菜に使わないことも大切です。加熱で菌を減らしても、調理器具を介して加熱しない食材に移れば意味がなくなります。もも肉は塊で扱う機会が多い部位なので、器具の使い分けは習慣にしておきたいところです。
まとめ:牛もも肉のカロリーは「品種×脂の落とし方」で決まる
牛もも肉は、牛肉の中でカロリーとたんぱく質のバランスが取りやすい部位です。和牛でも235kcalとサーロインの半分程度に収まり、赤身だけで量れば176kcal、輸入牛なら117kcalまで下がります。同時にたんぱく質21g前後、鉄2.7〜2.8mg、亜鉛4.5〜5.1mgが取れるのは、脂の多い部位にはない持ち味です。最初の一歩として、次の買い物ではパックの品種表示を一度だけ確認してみてください。「和」の字があるかないかで、その日の見積もりが39kcal変わります。
※栄養成分値は日本食品標準成分表(八訂)増補2023年に基づく数値です。実際の食品は個体差や部位の取り方により変動します。最新情報は食品成分データベースおよび厚生労働省の公式ページでご確認ください。

コメント