焼肉店のホルモンメニューで「マメ」という2文字を見つけて、これは何の部位だろうと指が止まったことはありませんか。豆料理でもなければ、豆のような形をした肉でもありません。マメは牛の腎臓のことです。
結論から書くと、マメは牛1頭から2個・合計300〜500gほどしか取れない副生物で、100gあたり118kcal、たんぱく質16.7g、脂質6.4gという低脂質・高たんぱくの数字を持っています(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)。同じホルモンでもマルチョウの脂質は26.1gですから、数字の上ではまったく別ジャンルの食べ物です。
ただしマメには「独特の臭み」という関門があります。ここを越えられるかどうかで評価が真っ二つに割れる部位で、逆に言えば下処理の理屈さえ知っていれば、レバーとも違うコリッとした食感を家でも味わえます。この記事では、部位の位置と呼び名の由来、成分表の数字で見た栄養、レバーとの違い、臭みを抜く具体的な手順、そして焼肉・煮込み・キドニーパイという食べ方の選び方までを一気に整理します。
・マメが牛のどこにある部位で、1頭からどれだけ取れるのか
・豆の形をしていないのに「マメ」と呼ばれる本当の理由
・118kcal・鉄4.5mg・セレン210µgという成分表の数字の読み方
・臭みを抜く下処理の手順と、焼肉・煮込みでの火の入れ方
マメは牛のどこの部位?正体は腰にある左右2つの腎臓

背骨の両脇にある「ろ過装置」がそのままメニュー名になっている
マメは牛の腎臓(じん臓)です。文部科学省の食品成分データベースでも「肉類/<畜肉類>/うし/[副生物]/じん臓/生」という名前で、食品番号11093として収載されています。位置は腰のあたり、背骨を挟んだ左右に1つずつ。焼肉でおなじみのミノやシマチョウが消化管(胃と腸)なのに対して、マメは血液をろ過して尿をつくる泌尿器で、系統からして別物です。
この「系統が違う」という点は味に直結します。胃や腸のホルモンが持つ弾力やゴムのような噛みごたえと違い、マメは肝臓に近い、みっちりと詰まった実質臓器の質感を持っています。実際に食べた人の表現が「レバーに似ているが、もう少し歯ごたえがある」に集まるのはこのためです。
スーパーの精肉コーナーで見分けるとすれば、まず並んでいません。マメは牛1頭から2個しか取れないうえ、ケンネ脂に埋まった状態で外されるため、一般の小売ルートに乗りにくい部位です。出会えるとしたらホルモン専門店か、内臓を扱う通販、あるいは自家処理をしている焼肉店のメニューになります。
豆知識として、英語では素直に「Kidney(キドニー)」。英国のパブ料理「ステーキ&キドニーパイ」のキドニーがまさにこれで、日本の焼肉店で敬遠されがちな部位が、海外では家庭料理の具材として定番になっている、という逆転が起きています。
1頭に2個・合計300〜500gだけ。希少部位と呼ばれる理由
マメが希少部位に分類される理由は単純で、絶対量が少ないからです。牛1頭から取れる腎臓は2個、合計で300〜500g程度。資料によっては1個500g前後とするものもありますが、いずれにせよ1頭あたり数百グラムという桁です。焼肉店で1人前が50〜80g程度と考えると、牛1頭からせいぜい数人前しか出せない計算になります。
比較として、シマチョウ(大腸)は1頭から数kg単位で取れますし、ミノも同様にまとまった量が確保できます。だからチェーンの焼肉店でも安定してメニューに載る。一方でマメは、その日たまたま入荷があれば黒板メニューに書かれる、という扱いになりがちです。
もう1つの理由が処理の手間です。後述する通りマメは下処理を省くと臭みが残る部位で、薄皮を剥き、血の部分を取り、塩水にさらして湯通しする工程が必要になります。1頭から数百グラムしか取れないものに、その手間をかけられる店は限られます。希少なのは量だけでなく、手間をかける店の数でもあるわけです。
注意点として、「希少=高価」とは限らないのがホルモンの世界です。マメは需要そのものが限定的なので、シャトーブリアンのような価格の跳ね上がり方はしません。希少部位という言葉を「レア=ごちそう」と読み替えず、「入荷が読めない=見つけたら頼む」と捉えるほうが実態に合っています。
分厚い「ケンネ脂」に包まれて出てくる特殊な立ち位置
マメを語るうえで外せないのが、腎臓を覆っているケンネ脂の存在です。ケンネ脂は牛の腎臓の周りについている厚い脂肪のことで、熱すると溶けやすくクセがないため、良質な牛脂として扱われます。名称は英語のkidney(腎臓)に由来するとされています。
この脂は、刻んでひき肉料理に加えるとコクが出る、パイ生地でバターの代わりに使える、肉を焼くときの油に使える、といった用途で古くから重宝されてきました。つまりマメは、部位そのものよりも「まとっている脂のほうが有名」という珍しい立場にあります。精肉店でハンバーグ用に牛脂を分けてもらうとき、それがケンネ脂であることは珍しくありません。
実務上のポイントは、マメを買うとこの脂がついてくることがある、という点です。腎臓と脂の境目には白い膜と筋が入り込んでいて、ここを丁寧に外さないと口に残ります。逆に、外したケンネ脂は捨てずに取っておけば、そのまま焼き油や煮込みのコク出しに使えます。
知っておくと得なのは、腎臓が脂に守られているぶん、内臓の中では比較的傷みにくい環境に置かれているということ。ただしこれは屠畜後の話ではなく体内での話で、外した後は他の内臓と同じく足が早い食材です。買ったらその日のうちに下処理する、が原則になります。
「セマメ」「キドニー」──メニューでの別名も覚えておく
焼肉店のメニューで「マメ」と書かれていないこともあります。よく使われる別名が「セマメ」で、これも牛の腎臓を指します。英語名そのままの「キドニー」表記も、洋食寄りの店や通販サイトで見かけます。この3つを頭に入れておけば、メニューでの取りこぼしはほぼなくなります。
呼び名が複数あるのは、ホルモンの名称が全国統一の規格名ではなく、地域や業界内の慣習で育ってきたからです。同じことがシマチョウ(テッチャン)やマルチョウ(コプチャン)でも起きています。マメの場合、関西の食肉業界で使われてきた呼称が広く定着した、という経緯があります。
見分け方としては、メニューの写真が手がかりになります。マメは切り分けると赤茶色でみっちりした断面になり、レバーより色がやや暗く、表面に細かい筋目が見えます。ハツのような繊維の並びも、ミノのような白いひだもありません。
店で頼むときの豆知識をひとつ。マメを置いている店は、たいてい他のホルモンも自家処理しています。マメがメニューにあるかどうかは、その店のホルモンへの本気度を測るちょっとした指標になります。
| 部位の位置 | 腰のあたり、背骨の両脇にある腎臓(左右に1つずつ) |
| カロリー(100gあたり) | 118kcal |
| タンパク質・脂質 | たんぱく質16.7g/脂質6.4g |
| 食感・味の特徴 | レバーに似た味でより淡白。プリッとした弾力とコリッとした歯ごたえ |
| 1頭からの取れる量目安 | 2個で合計300〜500g程度 |
| おすすめ調理法 | 焼肉、炒め物、赤ワイン煮・ビール煮などの煮込み、フライ、キドニーパイ |

ホルモン全体の中でマメがどのあたりに位置するのかは、部位一覧で俯瞰すると一気に理解が進みます。

焼肉店のメニューで「ミノ」「シマチョウ」「ギアラ」と並んでいても、どれが胃でどれが腸なのか、パッと言える人は多くありません。ホルモンは牛1頭からたくさんの種類が…
豆の形じゃないのにこの名前?呼び名の由来をたどる
語源をつくったのは牛ではなく豚だった
マメという名前を聞いて、そら豆のような形を思い浮かべた人は正解に近いところにいます。ただし、その形をしているのは豚の腎臓です。豚の腎臓がそら豆に似た形であることが「マメ」という呼び名の語源とされていて、その名前が牛の腎臓にも引き継がれました。
なぜ引き継がれたかというと、食肉の現場では牛と豚の内臓を同じ枠組みで扱うからです。ハツ(心臓)、レバー(肝臓)、ガツ(豚の胃)といった名前が牛豚をまたいで使われているのと同じ構造で、マメも「腎臓を指す業界語」として牛に適用されました。結果として、形が一致しないのに名前だけが残るという、少しねじれた状態になっています。
実際に牛と豚の腎臓を見比べると、形の違いは一目でわかります。豚の腎臓はヒトのものに近い滑らかなそら豆型で、重さは150〜200g程度。牛の腎臓は表面に切れ込みがいくつも入り、デコボコした塊が集まった形をしています。同じ「腎臓」でも見た目の印象はかなり違います。
注意しておきたいのは、名前が同じでも中身の数値は別だということ。豚のじん臓は100gあたり96kcal・たんぱく質14.1g・コレステロール370mgで、牛の118kcal・16.7g・310mgとは差があります。レシピを流用するときは、この違いを頭の片隅に置いておくと安心です。
牛の腎臓はブドウの房。「分葉腎」という構造の話
牛の腎臓は、専門的には分葉腎と呼ばれる構造をしています。多くの哺乳類の腎臓が滑らかなそら豆型で1つの塊になっているのに対し、牛の腎臓は表面に深い切れ込みが走り、小さな塊がいくつも集まった状態に見える。この見た目が、しばしば「ブドウの房のよう」と表現されます。
なぜ牛だけこうなっているのかというと、胎児期に分かれていた腎葉が成体でも融合しきらずに残るためです。ウシ科の動物に見られる特徴で、体が大きく処理する血液量が多い動物ほどこの構造が残りやすいと考えられています。豆の粒が集まったように見えるので、皮肉なことに「豆っぽさ」だけは牛のほうが強い、とも言えます。
調理の現場では、この構造がそのまま作業手順に反映されます。マメを下処理するときは、まず房を1つずつの塊に切り分け、さらに半分にカットしてから中の筋や血を取り除く。1個の塊をドンと切るのではなく、房を解体していくイメージです。
豆知識として、この分葉構造は鮮度の見分けにも使えます。房の1粒1粒がふっくらと張っていて、切れ込みの奥まで色が均一なものは状態が良い。逆に、粒がしぼんでいたり切れ込みの奥が黒ずんでいたりするものは避けたほうが無難です。
「セマメ」という呼び方が生まれた背景
マメと並んでよく使われる「セマメ」という呼称は、背中側にある豆、という位置の説明がそのまま名前になったものです。腎臓は腹腔の背中側、腰椎の脇に張りついているため、解体作業の目線では「背中の豆」として認識されます。加えて、豆状の小さな塊が房状に集まった見た目そのものが、呼び名の定着を後押ししました。
この命名の仕方は、ホルモンの世界ではむしろ標準的です。ハツモト(ハツの根元=大動脈)、ミノサンド(ミノに脂を挟んだ部分)、ウルテ(のど軟骨)など、位置や見た目、食感をそのまま名前にした例が並びます。学術名ではなく作業者の目線で名前がついていくのが、この分野の面白さです。
店で迷ったときの実用的な見分け方としては、メニューに「マメ」「セマメ」「キドニー」のいずれかがあれば、それは牛または豚の腎臓だと考えて差し支えありません。牛か豚かが書かれていない場合は、焼肉店なら牛、串焼き・もつ焼きの店なら豚である可能性が高くなります。
注意点として、「マメ」を「マルチョウ」や「ミノ」と読み違えるケースが意外とあります。カタカナ3文字のホルモン名は似た響きが多いので、初めて頼むときは店員さんに「どの部位ですか」と一言確認するのが確実です。
実は、名前から味を想像すると盛大に外す部位
意外と知られていないのですが、マメという柔らかい響きと、実際の味の方向性はほとんど一致しません。名前から想像されるのは豆のようなほっくりした食感ですが、実際はレバーに似た鉄の風味を持ち、噛むとコリッと弾き返してくる、かなり主張の強い部位です。この落差が、初めて食べた人が戸惑う最大の原因になっています。
逆に言うと、「レバーの親戚で、少し硬めで、癖が強い」と最初から分かっていれば、心の準備ができます。レバーが苦手な人がマメだけ平気ということはあまりなく、レバーが好きな人はマメも高い確率で気に入る。味の予測には、名前ではなく「肝臓と同じ実質臓器である」という事実を使うほうが正確です。
もう1つの逆張り視点が、臭みの扱いです。マメの臭みは欠点として語られがちですが、下処理を丁寧にやったマメは、レバーより淡白でむしろあっさりしています。「臭いから避ける」ではなく「臭みを抜く工程を知っているかどうか」で評価が変わる、という意味で、料理する側の技術がストレートに出る部位です。
豆知識として、ヨーロッパでマメが日常的に食べられているのは、煮込みやパイという「臭みを別の香りで包む」料理法が発達しているからでもあります。日本の焼肉という調理法は、素材の状態がそのまま出てしまう。同じ部位でも文化によって難易度が変わる、という良い例です。
118kcalという数字が語る栄養バランス

エネルギー118kcal・たんぱく質16.7g・脂質6.4gの意味
マメ(うし・じん臓・生)の100gあたりの数値は、エネルギー118kcal、たんぱく質16.7g、脂質6.4g、炭水化物0.2g、水分75.7gです(文部科学省 食品成分データベース)。この数字が示しているのは、マメがホルモンの中でも明確に「低脂質・高たんぱく」の側にいるということです。
理由は臓器としての役割にあります。腎臓は血液をろ過する装置なので、組織の大部分が細かい血管とネフロンで構成され、脂肪を蓄える場所がほとんどありません。脂を蓄えるのは腎臓の周囲、つまりケンネ脂の側であって、腎臓そのものではない。だから外した瞬間から低脂質な素材になります。
具体的な比較で見ると差が際立ちます。マルチョウ(小腸・生)は脂質26.1gで268kcal、ギアラ(第四胃・ゆで)は脂質30.0gで308kcal。同じ「ホルモン」というくくりでも、100gあたりのカロリーはマメの2倍以上です。ホルモンは高カロリーというイメージが定着していますが、それはあくまで腸と胃の話で、実質臓器のマメには当てはまりません。
注意点として、この数値は「生」の状態のものです。焼肉ではタレの糖分と塩分が加わりますし、煮込みにすればバターや油の分が乗ります。素材が低脂質であっても、食べ方次第で最終的な数字は動く、という当たり前の前提は押さえておきましょう。
鉄4.5mg・ビタミンB12は22.0µg・葉酸250µgという密度
マメが栄養面で注目される最大の理由が、微量栄養素の密度です。100gあたり鉄4.5mg、ビタミンB12は22.0µg、葉酸250µg、ビタミンB2は0.85mg、ビタミンB1は0.46mg。鉄については牛レバーの4.0mgを上回っており、「鉄といえばレバー」という常識が必ずしも部位順位と一致しないことがわかります。
なぜこの密度になるのかというと、腎臓が常に大量の血液を処理する臓器だからです。血液そのものに由来する鉄、そして高い代謝活動を支えるビタミンB群が、組織中に濃く存在します。臭みの原因と栄養価の高さが同じ理由から来ている、というのがこの部位の面白いところです。
実際の食卓に落とすと、マメ100gで鉄4.5mgという数字は、赤身肉のもも肉(1〜2mg台)と比べて明確に多い水準です。焼肉で1人前50g前後を食べるなら鉄2mg強。ホルモンの盛り合わせに1〜2切れ混ざっている、という食べ方でも、微量栄養素の面では意味のある一皿になります。
豆知識として、葉酸250µgという数字も内臓ならではです。ただし葉酸は水溶性で加熱に弱いため、下茹でを長くすると流出します。煮込みにする場合は、煮汁ごといただく料理にしたほうが栄養面では合理的です。
セレン210µgは牛の副生物の中でも突出した数字
マメの成分表でひときわ目を引くのがセレンです。100gあたり210µgという値は、牛の副生物の中でも突出しています。セレンは体内で抗酸化に関わる酵素の構成成分となるミネラルで、通常の食事で不足することは少ない一方、腎臓や内臓系の食品に濃く含まれるという特徴があります。
なぜ腎臓に多いのかというと、セレンを含む酵素が腎臓の組織中に多く存在するためです。ろ過という酸化ストレスの高い仕事をしている臓器ほど、抗酸化に関わる成分を持っている。臓器の機能と成分がきれいに対応している例と言えます。
ただしここは正直に注意点も書いておきます。セレンは不足も過剰も望ましくないミネラルで、日本人の通常の食生活では魚介類などから十分に摂れているのが実情です。マメを「セレン補給のために毎日食べる」という発想ではなく、「たまに食べる内臓料理に、たまたま濃く入っている」と捉えるほうが現実的です。栄養素を目的にした極端な食べ方は避けてください。
知っておくと得なのは、こうした微量栄養素の数値は文部科学省の食品成分データベースで誰でも部位ごとに検索できるということ。「うし じん臓」で引けば、この記事の数字はすべて自分で確認できます。
コレステロール310mgという数字は頭に入れておく
マメのもう一つの顔がコレステロールです。100gあたり310mgという値は、牛レバーの240mg、ハツの110mg、マルチョウの210mgより高く、内臓系の中でも上位に位置します。低カロリー・低脂質だからといって、あらゆる面で軽い食材というわけではありません。
これは腎臓に限らず内臓全般に見られる傾向で、細胞密度が高く細胞膜の材料であるコレステロールが多い組織ほど数値が上がります。ちなみに豚のじん臓は370mgとさらに高い数字です。
実際の食べ方で言えば、焼肉で1人前50〜80gを食べるなら155〜250mg程度。これを多いと見るか許容範囲と見るかは食生活全体との兼ね合いで、ここで医学的な線引きをするつもりはありません。健康状態に応じた食事の判断が必要な場合は、医師や管理栄養士など専門家に相談してください。
失敗しない考え方としては、「マメは毎日の主菜ではなく、月に数回の楽しみ」という位置づけがしっくりきます。そもそも1頭から数百グラムしか取れず、日常的に手に入る部位でもありません。希少性と食べ方の頻度が自然に噛み合っている部位だと言えます。
マメの数字は「低カロリー・低脂質・高ミネラル・高コレステロール」の4点セットです。118kcal・脂質6.4gという軽さと、鉄4.5mg・セレン210µg・コレステロール310mgという濃さが同居しているのがこの部位の個性。軽いから量を食べていい部位ではなく、少量で栄養密度を取りにいく部位だと考えるとバランスが取れます。
ホルモン7種をカロリーと鉄で並べ替えたら順位が意外だった
成分表の数字で並べた比較表(お肉の教科書調べ)
ホルモンは「どれも脂っこくて高カロリー」とひとまとめにされがちですが、成分表の数字を横に並べると、部位ごとの性格がはっきり分かれます。牛の代表的な副生物6種と豚のマメを、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の値で並べたのが次の表です。すべて可食部100gあたりの数値になります。
この表を作って一番驚くのは、マメとレバーがほぼ同じカロリー帯(118kcalと119kcal)にいるのに、含まれているものがまるで違うという点です。同じ実質臓器、同じくらいのエネルギー、それでもビタミンB12は22.0µgと53.0µg、鉄は4.5mgと4.0mgと、優劣が入れ替わります。
もう一つ見えてくるのが、消化管系(小腸・第四胃)と実質臓器系(腎臓・肝臓・心臓)のあいだにある明確な断層です。脂質で見ると前者は26.1〜30.0g、後者は3.7〜7.6g。この差はホルモンを選ぶときの実用的な指標になります。
注意点として、第四胃(ギアラ)だけは成分表の収載が「ゆで」の値である点に留意してください。ゆでることで水分が抜けて成分が凝縮するため、生同士の単純比較にはならない箇所です。
| 部位(100gあたり) | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 鉄 | コレステロール |
|---|---|---|---|---|---|
| センマイ(第三胃・生) | 57kcal | 11.7g | 1.3g | 6.8mg | 120mg |
| 豚マメ(じん臓・生) | 96kcal | 14.1g | 5.8g | 3.7mg | 370mg |
| 牛マメ(じん臓・生) | 118kcal | 16.7g | 6.4g | 4.5mg | 310mg |
| レバー(肝臓・生) | 119kcal | 19.6g | 3.7g | 4.0mg | 240mg |
| ハツ(心臓・生) | 128kcal | 16.5g | 7.6g | 3.3mg | 110mg |
| マルチョウ(小腸・生) | 268kcal | 9.9g | 26.1g | 1.2mg | 210mg |
| ギアラ(第四胃・ゆで) | 308kcal | 11.1g | 30.0g | 1.8mg | 190mg |
※日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の可食部100gあたりの値をもとに、お肉の教科書が並べ替えて作成。
カロリー順に並べると、マメは下から3番目に軽い
エネルギーで昇順に並べると、センマイ57kcal → 豚マメ96kcal → 牛マメ118kcal → レバー119kcal → ハツ128kcal → マルチョウ268kcal → ギアラ308kcal という順番になります。牛のマメは7種中3番目に軽く、上位のマルチョウ・ギアラとは2倍以上の開きがあります。
この順位が生まれる理由は脂質量とほぼ一致します。上位3種は脂質が1.3〜6.4gに収まっているのに対し、マルチョウとギアラは26.1gと30.0g。ホルモンのカロリーは、たんぱく質ではなく脂の量でほぼ決まります。
実際の焼肉での使い分けに落とすと、脂の甘みを楽しみたい日はマルチョウやギアラ、口の中をリセットしながら食べ進めたい日はセンマイやマメ、という組み立てになります。ホルモン盛り合わせが飽きずに食べられるのは、この対比が皿の上で成立しているからです。
豆知識として、センマイは脂質1.3gで57kcalと、7種の中で群を抜いて軽い部位です。その代わり噛みごたえは最も強い部類に入ります。数字の軽さと食べやすさは必ずしも一致しません。

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鉄で並べ替えると順位がひっくり返る
同じ7種を鉄の多い順に並べ替えると、センマイ6.8mg → 牛マメ4.5mg → レバー4.0mg → 豚マメ3.7mg → ハツ3.3mg → ギアラ1.8mg → マルチョウ1.2mg となります。カロリー順で最下位だったセンマイが鉄では1位、逆にカロリー上位のマルチョウが鉄では最下位という、きれいな逆転が起きます。
理由は組織の性質です。鉄は血液と代謝活動に紐づくミネラルなので、血流の多い組織や筋層の厚い胃壁に濃く含まれ、脂肪主体の小腸には少ない。脂が多いほどカロリーは上がるが、脂そのものには鉄が入っていない、というだけの話です。
この見方は買い物や注文のときに使えます。「今日は軽く、でも中身は濃く食べたい」ならセンマイとマメ、「がっつり脂を楽しみたい」ならマルチョウとギアラ。数字で組み立てると、なんとなく頼むより満足度がはっきりします。
注意点として、ビタミンB12だけは順位がまた違います。レバー53.0µgが圧倒的で、次いで牛マメ22.0µgとマルチョウ21.0µg、ハツ12.0µg、センマイ4.6µg。栄養素ごとに主役が入れ替わるのがホルモンの世界で、「この部位が全部で1位」という単純な構図にはなりません。
この表から読み取れるマメの立ち位置
7種を通して見ると、マメは「軽さの上位グループにいながら、ミネラルは濃い」という、かなり珍しいポジションを占めています。カロリーは下から3番目、鉄は上から2番目、ビタミンB12は上から2番目。センマイほど軽くはないが、センマイよりたんぱく質は多く(16.7g対11.7g)、レバーほどビタミンAは持たないが鉄では上回る、という中間かつ独自の位置です。
この立ち位置が生まれるのは、腎臓が「脂を蓄えない実質臓器」だからです。脂を持たないので軽く、代謝の激しい組織なのでミネラルは濃い。臓器の役割がそのまま栄養プロファイルになっている、と考えると理解しやすくなります。
実際にホルモンを選ぶ場面では、「レバーは食べ飽きた、でも軽い赤身系の内臓が食べたい」という要望にマメがぴたりとはまります。逆に「脂の甘みを味わいたい」という日には向きません。期待値を合わせておくことが、この部位を楽しむ最大のコツです。
失敗しやすいのは、希少部位という言葉に引っ張られて「霜降りのような濃厚さ」を期待してしまうケース。マメの脂質は6.4gで、濃厚さの方向ではまったく勝負していません。数字を先に知っておけば、この期待のズレは起きません。
レバーと似ているようで違う、3つの分かれ道
味と食感:似ているのは風味、違うのは歯ごたえ
マメとレバーを食べ比べたときに最初に気づくのは、風味は近いのに食感がはっきり違うということです。マメはレバーに似た味を持ちながらより淡白で、プリッとした弾力とコリッとした歯ごたえがあります。レバーの、噛むとほろりと崩れて口の中で溶けるような質感とは別方向です。
この差は組織構造から来ています。肝臓は柔らかい細胞の塊で、加熱するとねっとりした食感になる。腎臓は細かい管の集合体で、周囲を膜と筋が支えているため、加熱しても構造が残り、噛んだときに弾き返してきます。同じ実質臓器でも中身の作りが違うわけです。
実際の見分け方としては、切ってみるのが一番確実です。レバーは断面が均一でつややか、マメは断面に細かい筋目と、中心に向かう白い筋の走りが見えます。焼肉店で皿に出てきた状態でも、この筋目の有無で判別できます。
豆知識として、マメが好きな人はハツモトやウルテのような「コリコリ系」も好む傾向があります。レバー好きの延長ではなく、食感系ホルモン好きの入口として捉えると、次に頼む部位が選びやすくなります。

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栄養:ビタミンAとB2で、数字は大きく離れる
栄養面での最大の分かれ道はビタミンAです。牛レバーのレチノール活性当量は100gあたり1100µg。対してマメは5µgで、桁が3つ違います。レバーが「ビタミンAの塊」と言われるのはこの数字が根拠で、マメにはその性質がまったくありません。
ビタミンB2も同様で、レバー3.00mgに対しマメ0.85mg。ビタミンB12はレバー53.0µgに対しマメ22.0µg。総じて「レバーが持つ栄養素の多くを、マメは中程度に持っている」という関係です。一方で鉄はマメ4.5mgがレバー4.0mgを上回り、脂質はレバー3.7gに対しマメ6.4gと逆転します。
なぜこの差が出るかというと、肝臓が脂溶性ビタミンの貯蔵庫として機能しているからです。ビタミンAは肝臓に蓄えられる。腎臓にはその貯蔵機能がないので、数字が伸びません。臓器の役割の違いが、そのまま成分表に反映されています。
注意点として、レバーのビタミンAは多すぎる面もあり、特に妊娠中はレバーの食べ方に配慮が必要とされています。個別の食事の判断は医師や管理栄養士に相談してください。マメについてはビタミンAが5µgしかないため、この論点自体が発生しないという違いがあります。
法律の扱い:レバーには生食禁止の規定がある
3つ目の、そして最も重要な分かれ道が法規制です。厚生労働省によれば、平成24年7月から、食品衛生法に基づいて牛のレバーを生食用として販売・提供することが禁止されています。牛レバーは表面だけでなく内部からも腸管出血性大腸菌O157が検出されることがあり、安全に生で食べる方法がないためとされています。
この規定で名指しされているのは牛の肝臓(レバー)で、厚生労働省の同ページには牛の腎臓など肝臓以外の内臓についての記載はありません。ただし「禁止されていない=生で食べてよい」という意味ではまったくない、という点は強調しておきます。内臓は腸管出血性大腸菌などの食中毒リスクを持つ食材であり、加熱して食べるのが基本です。
加熱の目安として、牛レバーを加工・調理する場合の基準は中心部の温度が63℃で30分間以上、もしくは75℃で1分間以上と定められています。家庭でマメを扱うときも、この水準を1つの物差しにして「中心まで確実に火を通す」と考えておけば間違いがありません。
なお豚については、豚肉・豚レバー等の豚の内臓も生食用としての販売・提供が禁止されています。豚のマメを扱う場合も、当然ながら十分な加熱が前提になります。
厚生労働省は、平成24年7月から食品衛生法に基づき牛のレバーを生食用として販売・提供することを禁止しています。加熱の基準は中心部の温度が63℃で30分間以上、もしくは75℃で1分間以上。マメを含む牛の内臓は加熱して食べるのが基本です。詳細は厚生労働省「牛レバーを生食するのは、やめましょう(「レバ刺し」等)」をご確認ください。
失敗パターン①:レバーの下処理をそのまま流用して臭みが残る
マメでよく起きる失敗が、「レバーと同じだろう」と考えて牛乳に浸けるだけで済ませてしまうケースです。レバーの下処理では血抜きが中心になりますが、マメの場合はそれだけでは足りません。房状の塊の内部に脂肪と血が入り込んでおり、外側から浸けても届かないからです。
原因は構造の違いにあります。肝臓は比較的均一な塊なので、切って水や牛乳にさらせば血が抜けていく。腎臓は分葉構造で、房を切り分けて開かないと内部にアクセスできません。工程を1つ飛ばすと、焼いたときに中心から臭みが立ちます。
対策は明確で、「切り分けてから開く」を必ず入れることです。房を1粒ずつに分け、それをさらに半分にカットして、中に見える白い脂肪と赤い血の部分、そして筋を丁寧に取り除く。ここまでやってから水洗いと塩水浸けに進みます。この順番を守るだけで、仕上がりは別物になります。
豆知識として、下処理の質は焼く前の匂いで判断できます。処理後のマメを鼻に近づけて、鉄っぽい匂いはしても不快なアンモニア様の匂いがしなければ合格です。焼いてから気づくと手遅れなので、必ず焼く前に確認してください。
| 比較項目 | マメ(腎臓) | レバー(肝臓) |
|---|---|---|
| 食感 | プリッと弾力、コリッとした歯ごたえ | ねっとり、ほろりと崩れる |
| エネルギー/脂質 | 118kcal/6.4g | 119kcal/3.7g |
| 鉄/ビタミンB12 | 4.5mg/22.0µg | 4.0mg/53.0µg |
| ビタミンA(レチノール活性当量) | 5µg | 1100µg |
| 生食の規定 | 厚労省ページに個別記載なし(加熱が基本) | 生食用の販売・提供が法律で禁止 |
臭みの9割は仕込みで決まる|塩水30分と湯通し1分
なぜ臭うのか。原因がわかれば対策も決まる
マメが臭う理由は臓器の仕事内容そのものにあります。腎臓は血液から老廃物をろ過して尿をつくる器官なので、組織の中に血液由来の成分と代謝産物が残りやすく、これが独特の臭みになります。裏を返せば、臭みの正体は「血」と「中に残った液体」なので、この2つを物理的に取り除けば臭いは大きく減ります。
ここを誤解して「臭いのは部位の性質だから消せない」と考えると、下処理を諦めることになります。実際には、下処理をしっかりしたマメは、レバーよりむしろ淡白であっさりした味わいになります。「消せない臭み」ではなく「残してしまった臭み」だと理解するのが第一歩です。
具体的な判断材料として、鮮度が良いものは臭みが気になりにくいという点も押さえておきましょう。処理直後の新鮮なマメを扱う店では、シンプルに塩で食べさせることも珍しくありません。逆に時間が経ったものは、どれだけ下処理をしても臭みが残ります。素材選びが半分、仕込みが半分です。
注意点として、臭みを消そうとして下茹でを長くしすぎると、今度は食感が硬くなり水溶性のビタミンも抜けていきます。臭みと食感はトレードオフの関係にあるので、「必要な工程を正しくやって、やりすぎない」が正解になります。
塩水30分・湯通し1分。手順を分解する
マメの下処理は工程が多いように見えますが、やることは「取り除く」と「さらす」の2種類だけです。まず白い薄皮と赤い血の部分を除去し、房を1つずつ切り分けてからさらに半分にカット。中に見える筋をすべて取り除いて水で洗い、たっぷりの塩水に30分ほどさらします。水気を拭き取ったら、沸騰したお湯で約1分間茹でて仕上げます。
それぞれの工程には意味があります。薄皮と筋を取るのは口当たりのため。房を切り分けて半分にするのは、内部の血と脂肪にアクセスするため。塩水にさらすのは浸透圧で残った血を引き出すため。最後の湯通しは、表面の残り血を凝固させて洗い流し、同時に臭いの元を飛ばすためです。どれか1つを飛ばすと、その分だけ臭みが残ります。
具体的な作業のコツとしては、切り分けたマメを塩水に入れる前に一度流水でしっかり揉み洗いすると効果が上がります。水が透明になるまで洗い、それから塩水に移す。塩水の濃度は海水程度(水1Lに塩30g前後)を目安にすると扱いやすくなります。
豆知識として、湯通しの後に氷水に取ると食感が締まります。焼肉用にスライスする場合は、この状態のほうが薄く均一に切れて焼きやすくなります。煮込みに使う場合は湯通し後そのまま鍋へ移して構いません。
失敗パターン②:薄皮と血を残したまま網にのせてしまう
2つ目の典型的な失敗が、見た目にきれいだからと下処理を軽く済ませ、薄皮と内部の血を残したまま焼いてしまうケースです。焼き始めた直後は問題なく見えるのに、火が通るにつれて独特の匂いが立ち上り、口に入れたときに苦味と臭みが同時に来る──これがマメで一番よく起きる失敗です。
原因は加熱によって内部の血液成分が変性し、匂いが揮発するからです。生の状態では表面の匂いしかしないため、下処理不足に気づけません。焼いてから発覚するのがこの失敗の厄介なところで、リカバリーが効きません。
対策は2つ。1つは前述の「切り分けて開く」工程を必ず入れること。もう1つは、湯通しの湯を見ることです。湯通ししたときに湯が濁って灰色のアクが大量に出るようなら、血が残っている証拠。その場合は一度冷まして、塩水にもう一度さらしてから焼き直しの判断をします。
豆知識として、白い薄皮は加熱すると縮んで硬くなり、噛み切れないゴムのような食感になります。臭みだけでなく食感の面でも、薄皮取りは省略できない工程です。ピンセットや小さなナイフを使うと効率よく外せます。
買った日にやるべきこと、やってはいけないこと
マメを手に入れたら、まず優先すべきは下処理を当日中に済ませることです。内臓は表面積が大きく、生の状態で置いておくほど状態が落ちます。買ってきたら他の予定を後回しにしてでも、薄皮取りから湯通しまでを一気に進めるのが基本の動きになります。
理由は単純で、下処理前と下処理後では傷みやすさが変わるからです。血や薄皮が残った状態は、匂いの発生源を抱えたまま置いておくのと同じこと。湯通しまで済ませてしまえば、少なくとも表面の状態は安定します。
具体的な進め方としては、量が多い場合は下処理を全量分やってしまい、その日に食べる分だけ焼肉用にスライスし、残りは煮込み用のサイズに切って小分けにするのが効率的です。保存する場合は空気に触れないように包み、なるべく早めに使い切ってください。
やってはいけないのは、下処理をしないまま冷凍することです。血を含んだまま凍らせると、解凍時のドリップに臭みが濃く出て、そこから全体に匂いが回ります。凍らせるなら下処理後、という順番だけは守ってください。保存期間の目安は取り扱う店や状態によって変わるため、購入先の案内に従うのが確実です。
焼肉・煮込み・キドニーパイ、どれで食べるのが正解?
焼肉:薄く切って、中心まで確実に火を通す
マメを焼肉で食べるなら、下処理を済ませたうえで厚さ5ミリ前後にスライスするのが扱いやすいサイズです。厚く切ると中心まで火が通る前に表面が焦げやすく、薄すぎるとコリッとした食感が失われます。この厚みが、火の通りと歯ごたえのバランスが取れる目安になります。
火加減は強めの中火で、片面ずつ焼いて中心の色が変わるまでしっかり加熱します。ホルモンは弱火でじっくり焼くと水分が抜けてパサつきやすいため、しっかり熱した網やフライパンで手早く火を入れるほうが向いています。ただし内臓である以上、生焼けは避けてください。切って断面を確認するくらいの慎重さでちょうどいい部位です。
味付けは塩コショウかポン酢が合います。マメはレバーより淡白なので、濃いタレをかけると持ち味が隠れてしまう。新鮮なものであれば塩だけで十分成立します。レモンを添えると鉄の風味が軽くなり、初めての人にも食べやすくなります。
注意点として、焼き網でマメを焼くときは他の部位と同じトングを使い回さないでください。生の内臓に触れたトングで焼けた肉を取ると、食中毒の原因になります。生肉用と食べる用のトングを分けるのは、ホルモンを扱ううえでの基本動作です。
煮込み:赤ワイン煮・ビール煮で臭みを香りに変える
マメが本領を発揮しやすいのが煮込みです。赤ワイン煮やビール煮といった、酒とハーブの香りで包む調理法が定番で、ヨーロッパではこちらのほうが一般的な食べ方になっています。焼肉が素材の状態をそのまま出すのに対し、煮込みは香りの層を重ねられるのが強みです。
理由は加熱時間にあります。長時間の煮込みで残った臭みの成分が揮発し、代わりにワインや香味野菜の香りが入り込む。さらに、コリッとした食感が煮込みによってほろりと柔らかくなり、まったく別の顔を見せます。食感の変化を楽しめるのは煮込みならではです。
具体的には、下処理と湯通しを済ませたマメを一口大に切り、玉ねぎ・にんじん・セロリと一緒に赤ワインで煮込むのが作りやすい構成です。ローリエやタイムなどのハーブを1〜2種入れると輪郭が締まります。仕上げに外しておいたケンネ脂を少量加えると、コクが出て全体がまとまります。
豆知識として、煮込みは葉酸のような水溶性ビタミンが煮汁に流れ出します。パンやマッシュポテトを添えて煮汁ごと食べる構成にすれば、栄養面でも無駄がありません。
キドニーパイ・ソテー・フライという選択肢
英国のステーキ&キドニーパイは、マメを使った料理の中で世界的に最も知られているものです。牛肉とキドニー(腎臓)を煮込んでパイ生地に詰めて焼く家庭料理で、ヨーロッパではキドニーパイに入れたりソテーにして食べられています。日本の焼肉文化から見ると意外な使われ方ですが、パイ生地と煮汁が臭みを包み込む合理的な調理法です。
ソテーは、下処理済みのマメを薄めに切ってバターとにんにくで手早く焼く食べ方です。強めの火で表面に焼き色をつけ、中心まで火を通したところで白ワインを少量加えて香りを立てる。焼肉に近い手軽さで、洋風の味付けに振れるのが利点です。
フライも相性がいい調理法で、衣が臭みを閉じ込めつつ、中の食感を残してくれます。パン粉をつける前にしっかり水気を拭き、下味に塩コショウとハーブを効かせるのがコツです。揚げ物にすると当然カロリーは上がりますが、素材が6.4gと低脂質なぶん、他の部位を揚げるより軽く仕上がります。
注意点として、いずれの料理でも中心まで確実に加熱することが前提です。パイやフライは中心温度が読みにくいので、あらかじめ湯通しや下煮で火を入れてから仕上げの調理に進むと安心できます。
タイプ別:あなたはどの食べ方から始めるべきか
内臓料理に慣れていて、鉄の風味が好きな人は焼肉から入って構いません。塩とレモンで、素材の輪郭をそのまま味わうのが一番早くマメを理解できる方法です。ホルモン専門店でメニューに見つけたら、まず1人前を頼んでみてください。
レバーは食べられるけれど癖の強いものは苦手、という人は煮込みが向いています。赤ワイン煮なら臭みの角が取れ、食感も柔らかくなるので、マメの持つ旨味の部分だけを受け取れます。家で作るなら、この入口が最も失敗しにくい選択です。
内臓そのものが初挑戦という人には、フライかパイをおすすめします。衣や生地が緩衝材になるので、内臓特有の風味との距離を取りながら食感だけを楽しめます。ここで慣れてから煮込み、焼肉と進むと、抵抗なくステップアップできます。
栄養面を重視して選びたい人は、煮汁ごと食べられる煮込みが合理的です。鉄4.5mg、ビタミンB12は22.0µg、葉酸250µgという数字のうち、水溶性のものを取りこぼさずに済みます。目的から逆算して調理法を選ぶ、という発想はホルモン全般に応用できます。
まとめ|牛のマメは下処理さえ越えれば怖くない部位
マメという名前の柔らかさに反して、この部位の本体はレバーの親戚にあたる実質臓器です。脂を蓄えない腎臓だから100gあたり118kcal・脂質6.4gと軽く、それでいて鉄4.5mg、ビタミンB12は22.0µg、セレン210µgという密度を持つ。マルチョウの脂質26.1gやギアラの30.0gと並べてみれば、同じホルモンという言葉でくくるのが乱暴に思えるほど性格が違います。
そしてこの部位の評価を分けるのは、味の好みではなく仕込みの丁寧さです。房を1粒ずつ切り分け、白い薄皮と赤い血を取り除き、塩水に30分さらして湯通しを1分。この工程を飛ばさなければ、マメはレバーより淡白でコリッとした、扱いやすい素材に変わります。逆にどこか1つを省けば、焼いた瞬間に匂いで気づくことになる。腕の差がはっきり出るという意味で、料理好きにとっては挑戦しがいのある部位です。
最初の一歩としておすすめしたいのは、ホルモン専門店のメニューに「マメ」「セマメ」「キドニー」の文字を探してみることです。プロが下処理したマメを一度食べておけば、自分で仕込むときのゴールがはっきりします。塩とレモンで頼んで、コリッとした歯ごたえと鉄の風味を確かめてみてください。そこから家での赤ワイン煮に進めば、この部位の振れ幅の広さが実感できるはずです。
※本記事の栄養成分値は日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の可食部100gあたりの値です。食品衛生に関する制度や店舗の取り扱いは変更されることがあるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。

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