スーパーの精肉売り場に並ぶ豚肉のパックを見て、「ロース」「かたロース」「バラ」「うで」と書かれた名前の違いが分からないまま、いつも同じものをカゴに入れていませんか。牛肉なら「カルビ」「ハラミ」と覚えやすいのに、豚肉の名前は似た漢字とカタカナが並んでいて、どれを買えばいいのか判断しづらいものです。
結論から言うと、豚肉の名前はカタ・カタロース・ロース・ヒレ・バラ・モモ・ソトモモの7つを覚えれば、売り場の表示はほぼ読めるようになります。これは店ごとに勝手に決めた呼び名ではなく、食肉小売品質基準という共通のものさしで定められた区分だからです。しかも、それぞれの名前は「豚のどこにある肉か」をそのまま表しているので、名前さえ分かれば脂の量も、硬さも、向いている料理も予想がつきます。
この記事では、7つの名前の意味と位置関係、100gあたりのカロリーと栄養の差、400を超えるブランド豚の名前の読み解き方、そして豚肉だからこそ外せない加熱と保存の基準まで、公的資料と日本食品標準成分表の数値をもとに整理していきます。読み終わるころには、売り場のラベルが「豚のどこの肉で、今日の料理に合うかどうか」まで含めて読めるようになっているはずです。
・豚肉の名前が7つに整理されている理由と、それぞれの位置
・ヒレ105kcalとバラ366kcalという、同じ豚のなかでの成分の開き
・ブランド豚の名前を「品種・産地・飼料」の3つの軸で読む方法
・生食が禁止されている理由と、中心部75℃で1分間以上という加熱の基準
豚肉の名前は7つ覚えれば売り場で迷わなくなる

国の品質基準が決めた7つの名前が土台になっている
豚肉の名前は、食肉小売品質基準でカタ、カタロース、ロース、ヒレ、バラ、モモ、ソトモモの7部位に整理されています。牛肉が13前後に分けられ、焼肉店ではさらに細かい呼び名が飛び交うのと比べると、豚肉の名前は覚える数が少なくて済みます。
この7つが土台になっているのは、精肉店やスーパーが同じ言葉で同じ肉を指すためです。名前がバラバラだと、同じ「ロース」を買ったつもりでも店によって中身が違う、という事態が起きてしまいます。だから表示のルールとして共通の区分が決められているわけです。
売り場で確かめる方法は簡単で、パックのラベルに印字された部位名を見るだけ。「豚ロース」「豚かたロース」「豚もも」のように、この7つのどれかが必ず書かれています。ラベルがひらがな・カタカナ・漢字のどれで書かれていても、指している肉は同じです。
注意したいのは、店頭の呼び名がこの7つと完全に一致するとは限らない点です。「うで」はカタのこと、「三枚肉」はバラのことというように、別名が併記されたり、そちらだけが書かれたりすることがあります。名前が違っても、7つのどれに当たるかを頭のなかで変換できれば迷いません。
| 名前 | 位置の目安 | 脂の入り方 | 得意な料理 |
|---|---|---|---|
| カタ(ウデ) | 前脚側 | 脂身がほどよく、肉質はやや粗い | 煮込み・シチュー・ひき肉 |
| カタロース | 肩から背中にかけて | 赤身に網目状 | カレー・焼き豚・しょうが焼き |
| ロース | 背中の中心部 | 外側に厚い脂身 | とんカツ・すき焼き・ステーキ |
| ヒレ | ロースの内側 | 脂が少ない | ヒレカツ・ステーキ・ソテー |
| バラ | お腹側 | 赤身と脂が3層 | 角煮・スペアリブ・チャーシュー |
| モモ | 後ろ脚 | 脂が少なくきめが細かい | ローストポーク・炒め物 |
| ソトモモ | 後ろ脚の外側 | 赤身主体 | 薄切りの炒め物・煮物 |

※部位の特徴・調理適性は農林水産省および食肉関連団体の公開資料をもとに、お肉の教科書が一覧化
カタとカタロースは、名前が似ているだけの別部位
もっとも間違えやすいのが、カタ(ウデ)とカタロースです。名前に同じ「カタ」が入っているので同じ肉の切り分け違いだと思われがちですが、この2つは別部位として扱われます。
カタロースは首の一部から肩、背中にかけて広がる部位で、赤身のなかに適度な脂肪が網目状に入り組んでいるのが構造上の特徴です。一方のカタ(ウデ)は前脚まわりの筋肉質な部位で、脂肪が少なく、肉質がやや粗くてかためだと説明されています。触った印象も断面も別物です。
売り場での見分け方は断面の脂の入り方を見ること。赤身のなかに細かい脂が網目のように散っていればカタロース、赤身がどっしり詰まって脂が縁にまとまっていればカタです。スライスパックなら、断面がまだらに白いか、赤身一色に近いかで判断できます。
やりがちな失敗は、カレー用と書かれた角切りを見て「どちらでも同じ」と考えてしまうこと。カタロースは網目状の脂が煮込みでほぐれてコクになり、カタは筋肉質な分だけ長時間の煮込みで持ち味が出ます。同じ煮込みでも、短時間で仕上げたい日はカタロース、じっくり火を入れる日はカタと使い分けると結果が変わります。
売り場の表示名は「部位+厚み・用途」でできている
ラベルの文字列が長く見えるのは、部位名のうしろに用途や切り方がくっついているからです。「豚ロースとんかつ用」「豚ももしゃぶしゃぶ用」「豚バラ薄切り」のように、前半が部位、後半が切り方だと分解すれば読めます。
こういう表示になるのは、同じ部位でも厚みが変われば向く料理が変わるためです。ロースは厚く切ればとんカツやステーキ、薄く切ればしょうが焼きやしゃぶしゃぶと、公的資料でも複数の調理法が挙げられています。厚みの指定は、その部位のどの食べ方を想定したパックかという案内なのです。
具体的には、「こま切れ」「切り落とし」と書かれたものは複数の部位の端材が混ざることがあり、部位名が併記されていない場合もあります。逆に部位名がはっきり書かれているパックは、その部位の性格がそのまま出ると考えて構いません。料理の仕上がりを揃えたいときは、部位名が明記されたものを選ぶほうが読みやすくなります。
知っておくと得なのは、骨付きの呼び名です。バラを骨ごと切り出せばスペアリブ、かたまりのまま煮込んで焼き豚やチャーシューにする、といった具合に、料理名がそのまま売り場の呼び名になっていることがあります。料理名で書かれていても、元の部位に戻して考えれば脂の量が予想できます。
7つの外側にある呼び名も、元をたどれば7つに戻る
精肉店や飲食店のメニューには、7つに入らない名前も登場します。ただし、それらの多くは7部位のどこかを切り出した別名か、加工した形の呼び名です。名前が増えたように見えても、覚える軸は増えません。
たとえばひき肉は部位名ではなく形状の名前です。どの部位を挽いたかで脂の量が変わるため、成分表でも「ぶた ひき肉」として別枠で扱われています。カタ(ウデ)はひき肉に向く部位として挙げられており、パックの裏でどの部位が使われているかまでは分からないのが普通です。
スペアリブやチャーシュー用ブロックも同じ考え方で、バラの骨付きやかたまりを指す料理由来の呼び名です。売り場でこの名前を見たら「バラなら脂が多い」と読み替えれば、仕上がりの想像がつきます。
逆に注意したいのは、店ごとの独自の呼び名を7部位と同列に覚えようとすること。呼び名は地域や店で揺れますが、食肉小売品質基準の7つは共通です。迷ったら「これは7つのどれに近いか」と考える癖をつけると、初めて見る名前でも判断できます。部位の規格そのものをもう少し詳しく知りたい方は、こちらの記事でも整理しています。

名前は「豚のどこにあるか」で決まっている
背中に並ぶロース家系:ロースとカタロース
背中側にある肉には、共通して「ロース」という名前が付きます。ロースは背中の中心部に位置する代表的な部位で、農林水産省の資料でも「豚肉の代名詞ともいえる代表的な部位」と紹介されています。
背中の肉にロースという名前が付くのは、この位置の筋肉があまり動かず、きめが細かくやわらかい肉になるからです。ロースは肉のキメが細かくて柔らかく、外側に上質な脂身が厚めに付いているのが構造上の大きな特徴とされています。脂身が「外側に厚く」付くという点が、後で触れるバラとの決定的な違いです。
カタロースは、そのロースの列を肩側に延長した位置にあります。首の一部から肩、背中にかけて広がる部位で、赤身に網目状の脂が入り組んでいます。同じロース家系でも、肩に近づくほど動く筋肉になるため、きめはやや粗く、味は濃くなります。
見分けのポイントは、縁に沿って白い脂が帯のように付いていればロース、赤身の内側にまだらに脂が散っていればカタロースということ。とんカツ用として厚切りで売られるのは前者、カレーや焼き豚向けに角切り・厚切りで売られるのは後者が多くなります。
お腹側のバラは、名前のとおり「あばら」まわり
バラは豚のお腹側、あばら骨のまわりにある肉です。名前の由来がそのまま位置を指しているので、覚えるのに理屈はいりません。
この位置の肉が特徴的なのは、赤身と脂肪が交互に3層に折り重なった構造になっているためです。この見た目から「三枚肉」という別名が付いています。濃厚な脂と赤身が交互に並ぶので、火を入れると脂が溶け出して赤身にからみ、独特のコクが生まれます。
売り場では、断面に白と赤のしま模様がはっきり見えるかどうかで確認できます。薄切りなら炒め物やしゃぶしゃぶ、厚切りやブロックなら角煮、シチュー、スペアリブ、チャーシューと、公的資料でも煮込み系の料理が多く挙げられています。
注意点は、3層の比率がパックごとに違うこと。同じ「豚バラ薄切り」でも、脂の層が厚いものとそうでないものがあります。脂を控えたい日は赤身の層が太いパックを選ぶだけで、口当たりがずいぶん変わります。
脚の肉はモモ・ソトモモ・カタに分かれる
脚まわりの肉は、後ろ脚がモモとソトモモ、前脚側がカタ(ウデ)という名前になります。よく動く部位なので、背中側に比べると赤身が主体で脂が少なめです。
モモは脂肪が少なく、きめが細かいのが特徴で、ヒレの次にビタミンB1が豊富だと農林水産省の資料でも紹介されています。ローストポーク、ステーキ、焼き豚、しゃぶしゃぶ、炒め物と用途が広く、あっさり食べたい日の主力になります。
ソトモモは、そのモモの外側にあたる区分です。売り場では「もも」として一括りに表示されることも多く、名前を見かける機会はモモより少なめ。赤身主体なので、薄切りの炒め物や煮物のように、火を入れすぎない料理と相性がよくなります。
カタ(ウデ)は前脚まわりで、筋肉質で脂身がほどよく入り、味が濃くしっかりとした旨みがあると説明されています。硬さが気になるぶん、ほぐれるまで煮込む料理やひき肉にすると持ち味が出ます。見た目で選ぶときは、断面に筋が走っているかどうかが手がかりになります。
位置が分かると、硬さと脂の量まで予想できる
ここまでの3つをつなげると、ひとつの法則が見えてきます。よく動く場所ほど硬くて味が濃く、動かない場所ほどやわらかいという、筋肉の使われ方に沿った並びです。
脚(カタ・モモ・ソトモモ)は体を支えて動かす筋肉なので、繊維がしっかりしていて赤身主体。背中(ロース・カタロース)とその内側(ヒレ)はほとんど動かないため、きめが細かくやわらかい。お腹(バラ)は内臓を包む位置で、赤身と脂が層になる。名前と位置を覚えれば、初めて買う部位でも見当が付きます。
売り場で試すなら、同じ日に「もも薄切り」と「バラ薄切り」を見比べてみてください。前者は赤身がほぼ一色、後者ははっきりしたしま模様と、位置の違いが見た目にそのまま出ています。値札を見る前に断面を見る習慣が付くと、選ぶ速度が上がります。
ひとつ落とし穴があります。硬い=おいしくない、ではないという点です。よく動く部位は繊維が強いぶん、うま味の成分も蓄えています。硬さは切り方と火の入れ方で対処できるので、名前で敬遠せず、料理のほうを合わせるのが正解です。
ロースとヒレ、背中に並ぶ2つの名前を数字で見分ける

ロースは「外側に厚い脂身」が名前の目印
ロースは、ヒレと並んで最上部位とされる背中の中心部の肉です。100gあたり248kcal、たんぱく質19.3g、脂質19.2gと、赤身と脂のどちらもしっかり持っている数字になります。
この数字になる理由は、脂身が肉の外側に帯状で付いているからです。赤身のなかに細かく脂が散る構造ではなく、縁に厚く付くので、料理のときに脂を残すか外すかを自分で選べます。とんカツのように脂ごと味わう料理でも、しょうが焼きのように脂を落としながら焼く料理でも通用するのは、この構造のおかげです。
売り場では、断面の片側に白い脂が三日月形に付いているものを探してください。とんカツ用の厚切りなら脂の帯がはっきり見え、しゃぶしゃぶ用の薄切りなら脂の縁が波打って見えます。脂の帯が細いパックはあっさり仕上がります。
覚えておきたいのは、ビタミンB1が100gあたり0.69mg、ナイアシンが7.3mg(ナイアシン当量11.0mg)と、脂が多めの部位でも栄養面で見どころがある点です。ロースを「脂の多い肉」とだけ捉えるのは、少しもったいない見方になります。
| 部位の位置 | 背中の中心部 |
| カロリー(100gあたり) | 248kcal |
| タンパク質・脂質 | 19.3g・19.2g |
| 食感・味の特徴 | きめが細かく柔らかい。外側に上質な脂身が厚めに付く |
| ビタミンB1(100gあたり) | 0.69mg |
| おすすめ調理法 | とんカツ、すき焼き、ローストポーク、ステーキ、しゃぶしゃぶ、しょうが焼き |
ヒレは一頭から800g程度しか取れない希少部位
ヒレはロースの内側にある細長い肉で、きめが細かく、やわらかい最上の部位で低脂肪と説明されています。100gあたり105kcal、たんぱく質22.7g、脂質1.7gと、豚肉のなかでも際立って脂が少ない数字です。
やわらかい理由は位置にあります。体の内側でほとんど動かない筋肉なので、繊維が細く、結合組織も少ない。そして一頭から800g程度しか取れないため、希少部位として扱われます。ロースが背中一列ぶん取れるのに対し、ヒレは細い棒状の肉が左右にあるだけ、と考えると量の少なさが分かります。
売り場では、筒のような細長い形で売られているか、円形に近い断面のカツ用スライスで並んでいます。脂の帯がほとんど見えず、全体が淡いピンクの赤身であれば、それがヒレです。ヒレカツ、ステーキ、ソテー、サラダなど、素材の食感を活かす料理に向きます。
見逃せないのがビタミンB1で、100gあたり1.22mgと豚肉のなかで高い水準にあります。脂質が1.7gと低いのに栄養面で見劣りしないのがヒレの立ち位置で、「軽いのに物足りなくない」肉を探しているならまず候補に入ります。
| 部位の位置 | ロースの内側にある細長い部位 |
| カロリー(100gあたり) | 105kcal |
| タンパク質・脂質 | 22.7g・1.7g |
| 食感・味の特徴 | きめが細かく、やわらかい最上の部位で低脂肪 |
| 1頭から取れる量の目安 | 800g程度 |
| おすすめ調理法 | とんカツ(ヒレカツ)、ステーキ、ソテー、サラダ |
とんかつでロースとヒレを選び分ける基準
とんかつ屋のメニューでロースかヒレかを迷うなら、判断軸は「脂の甘みを食べたいか、肉の食感を食べたいか」の一点です。名前の違いは、そのまま食べ心地の違いになります。
根拠は成分の差です。ロースは脂質19.2g、ヒレは1.7g。ロースは衣の内側で脂が溶けて赤身にからむので、噛むほど脂の甘みが出ます。ヒレは脂がほとんどないぶん、肉そのもののほぐれる食感が前に出ます。同じ揚げ物でも、口に残る印象がまったく違うのはこのためです。
家で作る場合の目安としては、ソースをしっかりかけて白米と食べたい日はロース、おろしや塩でさっぱり食べたい日はヒレが合います。脂の帯があるロースは、揚げる前に筋切りをしておくと反り返りを防げます。
注意点として、揚げ物は衣が油を吸うため、素材の成分差がそのまま皿の上の差になるわけではありません。「ヒレなら軽い」と決め打ちせず、衣の厚みや揚げ方も含めて考えるほうが実態に近くなります。
失敗パターン①:ヒレを強火で焼き続けてパサつかせる
ヒレでいちばん多い失敗が、ステーキやソテーにしたときの「硬くてパサパサ」です。やわらかいはずの部位なのに、食べたら口の中で水分が飛んでいる——この原因は、脂の少なさを考えずに焼いてしまうことにあります。
ヒレは脂質1.7gで、ロースの脂身のような「溶けて肉を守る脂」がほとんどありません。強火で長く焼くと、たんぱく質が縮んで肉汁が押し出され、そのまま逃げていきます。脂の多い部位なら多少の焼きすぎを脂がごまかしてくれますが、ヒレにその余地は少ないのです。
対策は、冷蔵庫から出して30分ほど室温に置き、中心まで火が通りやすい状態にしてから焼くこと。表面を色づかせたら火を弱め、中心部が75℃で1分間以上になるようにじっくり火を入れます。焼き上がったら切らずに少し休ませ、肉汁を落ち着かせてから切り分けます。
もうひとつのコツは厚みです。薄く切ったヒレは、加熱の基準を満たすころには火が入りすぎている状態になりがち。ステーキにするなら厚めに切ったものを選び、薄切りのヒレは短時間で仕上がる炒め物や揚げ物に回すほうが結果が安定します。
バラ・モモ・カタロース・ウデの使い分け
バラは3層構造そのものが調理の設計図
バラは100gあたり366kcal、たんぱく質14.4g、脂質35.4gと、7部位のなかで脂がもっとも多い部位です。赤身と脂肪が交互に3層になっている構造が、そのままこの数字を作っています。
この構造が優秀なのは、脂の層が加熱中に溶けて赤身を内側から潤すからです。角煮やチャーシューのように長く煮込む料理でも、赤身がパサつかずにほろりとほぐれるのは、間に挟まった脂が水分の逃げ道をふさぐ役割をしているため。シチューやスペアリブのような骨付き料理でも同じことが起きます。
売り場で選ぶときは、しま模様の等間隔さを見てください。赤身と脂の幅が揃っているブロックは、切ったときの断面が均一になり、火の通りもムラになりにくくなります。薄切りなら、脂の層が細めのパックを選ぶと炒め物が重くなりません。
注意したいのは、脂が多いぶん煙とはねが出やすいこと。フライパンで焼くときは油を追加せず、出てきた脂をペーパーで拭き取りながら焼くと、仕上がりが軽くなります。ビタミンB1は100gあたり0.51mgと、7部位のなかでは控えめです。
| 部位の位置 | お腹側(あばらまわり) |
| カロリー(100gあたり) | 366kcal |
| タンパク質・脂質 | 14.4g・35.4g |
| 食感・味の特徴 | 赤身と脂肪が交互に3層(三枚肉)。濃厚な脂 |
| ビタミンB1(100gあたり) | 0.51mg |
| おすすめ調理法 | 角煮、シチュー、スペアリブ、チャーシュー、しゃぶしゃぶ |
モモは「あっさりなのに栄養が濃い」バランス型
モモは100gあたり171kcal、たんぱく質20.5g、脂質10.2gで、ヒレほど脂を落とさず、ロースほど重くない中間の位置にあります。日常づかいで扱いやすいのがこの部位です。
特徴は、脂肪が少なくきめが細かいこと、そしてヒレの次にビタミンB1が豊富だと農林水産省の資料で紹介されている点。実際、ビタミンB1は0.90mg、ナイアシンは6.2mg、鉄分は0.7mgと、赤身主体の部位らしい数字が並びます。
選び方のコツは、ブロックと薄切りで用途を分けること。ブロックならローストポークや焼き豚、薄切りならしゃぶしゃぶや炒め物と、公的資料でも幅広い調理法が挙げられています。赤身主体なので、タレや香味野菜の味を受け止めやすいのも利点です。
気をつけたいのは火の入れすぎ。脂が少ないぶん、長時間の加熱で硬くなりやすい性質があります。炒め物なら強めの火で短く、ローストポークなら弱めの火でじっくりと、料理ごとに火加減の方向を変えるのが扱い方のコツです。
カタロースは網目状の脂が煮込みでコクになる
カタロースは100gあたり237kcal、たんぱく質17.1g、脂質19.2gの部位です。やや粗いきめと、赤身のなかに網目状に入る脂が、濃厚な味わいを作っています。
この網目状の脂が効くのは、火を入れたときに肉の内側から均等に溶け出すからです。外側に脂の帯があるロースと違い、脂が赤身のあいだに散らばっているので、煮込んでも炒めても全体にコクが行き渡ります。カレー、焼き豚、しょうが焼き、ステーキ、しゃぶしゃぶと用途が広いのはこのためです。
売り場では、角切り(カレー・シチュー用)とスライス(しょうが焼き用)で見かけることが多い部位。角切りなら断面の脂の散り方、スライスなら光にかざしたときの白いまだら模様が判断材料になります。
注意点は、きめがやや粗く、かための食感になることです。薄切りをそのまま強火で焼くと縮みやすいので、しょうが焼きにするなら下味に漬けてから焼く、煮込みにするなら大きめに切るなど、繊維の強さを前提に扱うと仕上がりが変わります。
ウデ(カタ)は長い加熱で本領を出す
カタ(ウデ)は、筋肉質で脂身がほどよく入り、味が濃くしっかりとした旨みがある部位です。そのぶん肉質はやや粗くかためで、短時間で焼くだけの料理には向きにくい性格があります。
理由は前脚まわりという位置にあります。よく動く筋肉には繊維と結合組織が多く、短い加熱ではほぐれません。逆に、時間をかけて火を入れれば結合組織がやわらかくなり、濃い味が煮汁に出てきます。シチューなどの長時間煮込みや、ほぐして食べる料理に向くとされているのはこのためです。
売り場で見つけるコツは、「うで」「かた」と表示されたブロックや角切りを探すこと。断面に筋が走っているものは煮込み向き、比較的きれいな赤身は炒め物にも使えます。ひき肉にも使われる部位なので、パックのひき肉がしっかりした味に感じるときは、この部位の性格が出ていることがあります。
覚えておきたいのは、ウデは「安いから味が落ちる部位」ではないという点です。味が濃くしっかりした旨みという評価は、料理を選べばそのまま強みになります。火を入れる時間を確保できる日に選ぶ部位、と位置づけると失敗しません。
カロリーと栄養から見る豚肉の名前の選び方

ヒレ105kcalとバラ366kcal、同じ豚でここまで開く
豚肉の名前を覚える実利がもっとも出るのが、栄養の場面です。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の数値で見ると、100gあたりのカロリーはヒレが105kcal、バラが366kcalと、同じ豚のなかで大きく開きます。
この開きの正体は脂質です。ヒレは1.7g、バラは35.4g。脂質は少ない量でもエネルギーが大きいため、脂の層が多い部位ほど数字が跳ね上がります。逆に言えば、名前で部位が分かれば、パックを手に取った時点でおおよその見当が付くということです。
実際の使い分けとしては、同じ量を食べるなら部位を替えるのがいちばん効きます。量を減らすより、バラ薄切りをモモ薄切りに替えるほうが、満足感を保ったまま数字が動きます。炒め物ならモモやカタロース、脂のコクが欲しい料理だけバラ、という配分です。
注意したいのは、成分表の数値は生の状態のものだということ。揚げれば衣が油を吸い、焼けば脂が落ちるので、皿に乗った状態の数字とは変わります。部位ごとの順番を知る目安として使うのが、いちばん実用的な読み方です。
| 部位の名前 | カロリー | たんぱく質 | 脂質 | ビタミンB1 |
|---|---|---|---|---|
| ヒレ | 105kcal | 22.7g | 1.7g | 1.22mg |
| モモ | 171kcal | 20.5g | 10.2g | 0.90mg |
| ひき肉 | 209kcal | 17.7g | 17.2g | 0.69mg |
| カタロース | 237kcal | 17.1g | 19.2g | 0.63mg |
| ロース | 248kcal | 19.3g | 19.2g | 0.69mg |
| バラ | 366kcal | 14.4g | 35.4g | 0.51mg |
※可食部100gあたり(生)。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の数値をもとに、お肉の教科書がカロリー順に並べ替え
ビタミンB1は豚肉の看板、ヒレは1.22mg
豚肉が「疲れたときの肉」と言われる背景にあるのがビタミンB1です。表のとおり、ヒレは100gあたり1.22mgと、比較した6つのなかで最も多い数値になります。
注目すべきは、脂の量とビタミンB1の量が逆の方向に並んでいることです。ヒレ1.22mg、モモ0.90mg、ロース0.69mg、ひき肉0.69mg、カタロース0.63mg、バラ0.51mg——脂質が増えるほどB1は減っていく。赤身の量がそのままB1の量に効いているためです。
売り場での使い方としては、「あっさりした部位を選ぶ=栄養面でも損をしない」と考えて差し支えありません。農林水産省の資料でも、モモはヒレの次にビタミンB1が豊富で、脂肪が少なくきめが細かいと紹介されています。
ただし、B1だけで部位を決める必要はありません。ロースにはナイアシンが7.3mg(ナイアシン当量11.0mg)、ひき肉には鉄分が1.0mg含まれるなど、部位ごとに数字の出方が違います。その日の料理に合う部位を選んだうえで、数字は選択の後押しに使うくらいがちょうどいい距離感です。

スーパーの精肉コーナーで「豚肉ってどれもだいたい同じカロリーでしょ」と思ってパックを手に取っていませんか。実はここに、ダイエットが進む人と進まない人を分ける大き…
実は、ロースとカタロースの脂質はどちらも19.2g
意外と知られていないのが、ロースとカタロースの脂質が100gあたりどちらも19.2gで並んでいることです。ロースのほうが脂が多そうに見えるのに、数字の上では同じ量が入っています。
では、カロリーが248kcalと237kcalで分かれるのはなぜか。たんぱく質の量が19.3gと17.1gで違うからです。脂の量が同じでも、赤身の詰まり方で数字がわずかに動く——これが、見た目の印象と成分表がずれる理由になります。
売り場で意識すると効くのは、「脂の量」と「脂の付き方」を分けて考えることです。ロースは縁に帯状、カタロースは赤身のなかに網目状。総量が同じでも付き方が違うので、脂を外せるのはロース、外せないのはカタロースという差が生まれます。脂を落としたいならロースの帯を切り落とすのがいちばん確実です。
この見方を持っておくと、見た目のサシだけで部位を判断しなくなります。脂が細かく散った肉は「上等そう」に見えますが、成分の上では帯状に付いた肉と変わらないこともある。名前と数字をセットで覚える価値は、こういう場面で出てきます。
シーン別:今日の目的から部位名を逆引きする
ここまでの数字を、生活の場面に落とし込んでおきます。名前を覚える目的は、売り場で3秒で決められるようになることです。
体づくり中・軽く食べたい日は、ヒレ(105kcal・たんぱく質22.7g・脂質1.7g)かモモ(171kcal・20.5g・10.2g)。脂を抑えながらたんぱく質を確保できる並びです。ヒレカツやソテー、モモの薄切り炒めが扱いやすい形になります。
育ち盛りがいる食卓・しっかり満足させたい日は、ロース(248kcal)かカタロース(237kcal)。とんカツ、しょうが焼き、焼き豚と、ご飯が進む料理がそのまま調理適性に挙がっている部位です。
作り置き・週末に煮込む日は、バラ(366kcal)かカタ(ウデ)。角煮やシチューのように、時間をかけるほど持ち味が出る組み合わせになります。ひき肉(209kcal・鉄分1.0mg)は、ハンバーグ、ミートソース、肉味噌、餃子と展開が広く、平日の短時間調理に向きます。
ひき肉は名前に部位が出ないぶん、中身が揺れる
ひき肉は7部位のどれでもなく、形状につけられた名前です。だからこそ、パックの表示だけでは「どの部位を挽いたか」が分かりません。
成分表の「ぶた ひき肉」は100gあたり209kcal、たんぱく質17.7g、脂質17.2g、ビタミンB1 0.69mg、鉄分1.0mg。ロースとモモのあいだくらいの数字ですが、実際の商品は使われた部位と脂の混ぜ方で幅が出ます。赤身の多い部位が中心なら締まった仕上がりに、脂が多ければジューシーな方向に振れます。
見分け方は色です。赤身が強く見えるひき肉は脂が少なめ、全体が白っぽくピンクがかっているものは脂が多め。ハンバーグのようにつなぎと一緒に焼く料理なら後者、肉味噌や餃子の餡のように味付けが濃い料理なら前者でも十分成立します。
知っておきたい注意点として、ひき肉は表面積が大きく、空気に触れる面が多い形状です。そのため保存の扱いは他の部位より慎重にする必要があります。この点は後半の保存の項でくわしく触れます。
ブランド豚の名前が400を超える理由
ブランド名は「品種・産地・飼料」の組み合わせでできている
豚肉売り場には、7部位の名前とは別に、聞き慣れないブランド名が並びます。国内のブランド豚は400以上あるとされ、すべてを覚えるのは現実的ではありません。読み方の軸を持つほうが早道です。
ブランド豚の名前を分解すると、だいたい品種・産地・飼料のどれか、あるいはその組み合わせでできています。バークシャー種やデュロック種といった品種名、鹿児島や山形といった産地名、そして何を食べさせたかという飼料の工夫。この3つが味の方向を決める要素だからです。
たとえば鹿児島黒豚は、純粋バークシャー種を中心に育てられ、きめ細かな肉質と上品な甘み、さっぱりとした脂が特徴とされます。出荷前にさつまいもを配合した飼料を与えることで、脂に自然な甘みが生まれるという説明で、品種・産地・飼料の3つが名前のなかに凝縮されています。
注意点は、ブランド名だけでは部位が分からないことです。同じブランドでもヒレとバラでは脂質の桁が違います。ブランドは「どの豚か」を示す情報、部位名は「どこの肉か」を示す情報。売り場では両方を見るのが正解です。
三大ブランド豚として挙げられる3つの名前
数あるブランドのなかで、日本三大ブランド豚として紹介されることが多いのが、鹿児島黒豚・平田牧場三元豚・TOKYO Xの3つです。それぞれ成り立ちが違うので、並べて見ると豚のブランドの作られ方が分かります。
鹿児島黒豚は品種で勝負するタイプ。純粋バークシャー種という品種名がそのまま個性になっています。平田牧場三元豚は山形県で、ランドレース・大ヨークシャー・デュロックという3品種の掛け合わせにより、やわらかな肉質とジューシーな旨みを実現し、脂の口どけが良いことが特徴とされます。掛け合わせの設計そのものがブランドの中身です。
TOKYO Xは東京都による独自開発品種で、きめ細かな霜降りとコクのある味わいが特徴。高級料理店などでも提供されていますが、流通量が限定的なため、スーパーの棚で日常的に見かける名前ではありません。
押さえておきたいのは、「三大」という括りに国の基準があるわけではないという点です。どの3つを挙げるかは紹介する側によって変わることがあります。名前の格付けとして受け取るより、それぞれの成り立ちを知る入口として使うほうが実用的です。
| ブランド名 | 産地 | 品種 | 名前を支える特徴 |
|---|---|---|---|
| 鹿児島黒豚 | 鹿児島県 | 純粋バークシャー種 | さつまいも配合飼料による脂の甘み |
| 平田牧場三元豚 | 山形県 | ランドレース・大ヨークシャー・デュロック | やわらかな肉質と脂の口どけ |
| TOKYO X | 東京都 | 東京都による独自開発品種 | きめ細かな霜降りとコク(流通量は限定的) |
| 館ヶ森高原豚 | 岩手県一関市 | バブコック・スワイン種を改良 | 赤身があっさり、脂にコク |
| 常陸の輝き | 茨城県 | 三元豚(系統豚ローズD-1が父豚) | やわらかい肉質と濃厚なうま味 |
地域ブランドは「飼い方の工夫」が名前に入っている
三大と呼ばれる銘柄以外にも、育て方そのものを売りにした地域ブランドがあります。館ヶ森高原豚と常陸の輝きは、その分かりやすい例です。
館ヶ森高原豚は岩手県一関市のブランドで、バブコック・スワイン種を40年前に輸入し、独自の交配プログラムで品種を改良してきました。ミネラル豊富な地下水で飼育し、トウモロコシを使わない飼料(小麦、米、マイロ)を用い、タイムやローズマリーを配合して豚特有の臭みを抑制しているのが特徴です。赤身があっさり、脂にコクがあると紹介されており、JGAP・HACCPの認証も取得しています。
常陸の輝きは茨城県のブランドで、父豚は約7年の歳月をかけて選抜を繰り返して作り上げたデュロック種の系統豚「ローズD-1」。麦類10%以上を配合した専用飼料に乳酸菌・ビタミンEを添加しており、やわらかい肉質で、赤身はコクのある濃厚なうま味、香りが良く豚肉特有の嫌なにおいがないと説明されています。
こうしたブランドを売り場で見かけたら、パックの裏やPOPで飼料や飼育方法の説明を探してみてください。飼い方が具体的に書かれているブランドは、味の方向性も予想しやすくなります。においが気になる人は、飼料設計で臭みを抑えていると明記されたものを選ぶのが手がかりになります。
ブランド名より、部位名のほうが味の差は大きい
最後に、ブランド豚の名前とのつき合い方について。同じブランドのなかで部位を変えたときの差のほうが、同じ部位でブランドを変えたときの差より分かりやすい——これが、数字から見た率直な結論です。
理由は単純で、部位が変われば脂質が1.7gから35.4gまで動くのに対し、ブランドの違いは同じ部位のなかでの質の差だからです。ブランド豚のバラは、一般的な豚のヒレより確実に脂が多い。名前の格より、部位名のほうが料理の結果を左右します。
実際の買い方としては、まず料理から部位を決め、そのうえで予算と好みでブランドを選ぶ順番がおすすめです。しょうが焼きを作る日にブランド名から選び始めると、売り場で迷子になります。
とはいえ、ブランドの価値がないわけではありません。飼料や品種の工夫は、脂の甘みや香りといった、成分表には出てこない部分に効いてきます。部位で大枠を決め、ブランドで細部を選ぶ。この二段構えが、名前を覚えたあとの使い方です。
名前が分かったら守りたい、豚肉の火入れと保存の線引き
厚生労働省は2015年6月12日から、豚の肉や内臓(レバーなど)を生食用として販売・提供することを禁止しています。E型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌などの食中毒菌、寄生虫による危害要因があるためです。家庭で調理する際は、中心部を75℃で1分間以上加熱することが基準とされています(飲食店での提供時は、中心部63℃で30分間以上、またはそれと同等の殺菌効果のある方法)。
豚肉が生で食べられない理由は、名前や部位に関係ない
どの部位を選んでも、豚肉は生や半生で食べられません。厚生労働省は、豚の肉や内臓(レバーなど)を生食用として販売・提供することを禁止しています。
理由は、E型肝炎ウイルス、食中毒菌(腸管出血性大腸菌・サルモネラ属菌)、寄生虫という複数の危害要因が挙げられているためです。牛肉の一部で語られる「表面だけ焼けばよい」という考え方は、豚肉には当てはまりません。ヒレのような希少部位でも、新鮮な肉でも、この扱いは変わりません。
実際の調理では、焼き色ではなく中心の状態で判断します。切ったときに中心部の赤みがなくなっているか、肉汁が透明になっているかが目安です。厚みのある肉ほど、表面の焼き色と中心の状態がずれます。
注意すべきは、加熱前の肉に触れた菜箸やトングをそのまま使い回さないこと。焼く前の肉に使った道具と、焼けた肉を取り分ける道具は分けるのが基本です。加熱が足りていても、道具経由で菌が移れば意味がなくなります。
中心部75℃で1分間以上を、部位ごとにどう実現するか
加熱の基準は、中心部を75℃で1分間以上。これをどう実現するかは、部位と厚みによって変わります。名前を知っていると、火の入れ方まで逆算できます。
脂が少ないヒレやモモは、強火で長く焼くと水分が抜けやすいので、表面を色づかせたあとは火を弱めて中心まで届かせるのが向いています。脂が多いバラやロースは、溶け出た脂が熱を伝える役割をするため、脂を拭き取りながら焼くと表面が焦げる前に中心へ火が入ります。
厚みのあるブロックやとんカツ用の厚切りは、冷蔵庫から出して30分ほど室温に置いてから調理すると、中心と表面の温度差が小さくなり、焦げる前に中心まで届きます。焼き上がったら少し休ませてから切ると、肉汁が落ち着いて断面の確認もしやすくなります。
やりがちな失敗は、表面の色だけで判断して切ってしまうこと。特に厚切りのロースやカタロースは、外がしっかり色づいていても中心が追いついていないことがあります。切って中心の赤みを確認し、足りなければ弱火で加熱を続けるのが確実です。
失敗パターン②:冷凍の目安を部位で分けずに買い置きする
もうひとつ多い失敗が、冷凍の期限を一律に考えてしまうことです。「冷凍したから2〜3か月は大丈夫」と思い込んで薄切りやひき肉をため込むと、解凍したときに色も風味も落ちています。
冷凍保存の目安は形状で分かれます。かたまりなど一般的な状態で2〜3か月、細切れ・薄切りは3〜4週間、ひき肉は2週間。切り方が細かいほど空気に触れる面積が増え、品質の低下が早く進むためです。ひき肉がもっとも短いのは、この理屈から当然の並びになります。
対策は、買った日に使う単位で小分けし、空気を抜いて包むこと。そして包みに日付と部位名を書いておくことです。名前を書く習慣があると、「これは薄切りだから早めに使う」と判断できます。冷蔵で置く場合の目安は最長3日程度なので、使い切れない分はその日のうちに冷凍へ回します。
鮮度の見分け方も押さえておきましょう。新鮮な豚肉は淡いピンク色でツヤがあり、灰色がかっていないのが特徴です。くすんだ灰色になっている、ドリップが出ている、水っぽくて締まりや弾力に欠ける——こうした状態のものは避けるのが基本になります。
妊娠中の豚肉は「加熱すれば食べられる」が前提
妊娠中の豚肉については、加熱の徹底が前提になります。豚肉を介したトキソプラズマ感染が人間の感染源の主体と考えられており、全国各地の食肉衛生検査機関での抗体検査では数〜十数%程度の豚が陽性となっている、という報告があるためです。
妊娠中に初めて感染すると、胎盤を通して胎児に感染する可能性があり、妊娠初期の感染では流産・死産・水頭症・脳室肥大などが引き起こされる可能性が指摘されています。だからこそ、豚肉は十分に加熱して食べることが重要とされ、調理前に数日間冷凍するとさらに効果が高いとも説明されています。
実際の食卓での運用は、これまでと同じです。中心部まで確実に火を通し、加熱前の肉に触れた器具と食べる用の器具を分ける。焼肉のように自分で焼くスタイルの料理では、生肉をつかむ箸と食べる箸を分けるだけでリスクの入口が減ります。
体調や治療方針に関わる判断は、かかりつけの医師や自治体の窓口に相談してください。ここで紹介しているのは公的機関が公開している一般的な情報であり、個別の状況に対する助言ではありません。

妊娠がわかってから、焼肉の予定を断り続けていませんか。「生肉がダメなのは知っているけれど、焼けば食べていいのかどうか、はっきり書いてあるものが見つからない」——…
一次情報を自分で確かめたいときの入口
この記事で使った数値と基準は、次の公的な資料で確認できます。売り場やキッチンで迷ったとき、自分で当たれる場所を知っておくと判断が早くなります。
部位の名前と特徴は、農林水産省の豚肉の部位を解説したページと豚肉の特集ページに整理されています。ブランド豚の飼い方や品種の情報は、同じく農林水産省のブランド豚の紹介ページが参考になります。
カロリーやたんぱく質、ビタミンB1などの成分値は、文部科学省の食品成分データベースで部位ごとに検索できます。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の数値がそのまま確認できるので、気になる部位を自分で引いてみるのが確実です。
生食の禁止と加熱の基準は、厚生労働省の豚肉の生食に関するページに、トキソプラズマについては感染症に関する公的な情報ページに記載があります。安全にかかわる情報は、こうした一次情報で確認するのが確実です。
まとめ:豚肉の名前は7つと3つの軸で整理できる
売り場での最初の一歩としておすすめなのは、次に豚肉を買うときにパックの部位名を声に出さずに確認して、「背中・お腹・脚のどれか」を当ててみることです。ロースなら背中、バラならお腹、ももなら後ろ脚。位置が言えるようになれば、脂の量も向いている料理も自然についてきます。慣れてきたら、いつも買っている部位を一段階だけ別の名前に替えてみてください。脂を軽くしたい日はバラからモモへ、食べごたえが欲しい日はモモからカタロースへ。名前を覚えることの価値は、こういう小さな選び替えができるようになることにあります。
※成分値は日本食品標準成分表(八訂)増補2023年に基づく数値です。加熱・保存の基準やブランド豚の内容は変更されることがあるため、最新情報は各公的機関・公式サイトでご確認ください。

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