スーパーの精肉コーナーで、赤い肉の中に白い脂が網目状に走ったパックを見て「これが霜降りか」と思いつつ、隣の赤身との違いをうまく説明できないまま買っていませんか。値札にA5と書いてあれば間違いなさそうな気もするし、でも脂が多そうでカロリーも気になる。そんなもやもやを抱えたまま焼いて、思ったほどおいしく仕上がらなかった経験がある人もいるはずです。
結論から言うと、霜降り肉とは「赤身の筋肉の中に、霜が降りたように網目状の脂肪が入り込んだ肉」のことです。公益社団法人日本食肉格付協会の牛枝肉取引規格では、この脂の入り具合を「脂肪交雑」と呼び、B.M.S. No.1〜No.12の12段階で評価しています。そしてもうひとつ知っておきたいのが、よく見るA5という表示は味そのものの評価ではない、という点です。
この記事では、霜降りの正体と脂が入る仕組み、等級表示の正しい読み方、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の数値で見たカロリー差、そして家で焼くときの火加減までを一気に整理します。読み終わるころには、精肉コーナーで断面を見ただけで「今日はこれ」と選べるようになります。
・霜降りとは赤身の中に網目状に脂肪が沈着した状態。サシ・脂肪交雑・マーブリングはすべて同じものを指す
・脂の量はB.M.S. No.1〜No.12で評価され、No.8〜No.12が肉質等級5にあたる
・A5の「A」は歩留、「5」は肉質。どちらも味の採点ではない
・和牛サーロインは脂身つき100gで460kcal、同じ部位の赤肉なら294kcal
霜降り肉とは赤身に脂が網目状に入った状態のこと

正体は「筋肉のすき間に入り込んだ脂肪」
霜降りとは、赤身肉の中にあたかも霜が降りたように網目状に脂肪が沈着している状態のことです。日本食肉科学会の用語解説でもこの表現が使われており、牛肉に対して使われることがほとんどです。ここで大事なのは、脂が「肉のまわり」ではなく「肉の中」に入っているという点です。
なぜ中に入るのかというと、牛の筋肉は細い筋線維が束になり、その束が薄い膜(筋周膜)で仕切られた構造をしているからです。脂肪はこの膜に沿って蓄積していきます。筋肉内に溜まる脂質は中性脂肪の割合が多く、筋細胞そのものの内部にまでは入らないといわれています。つまり霜降りは、肉の設計図にもともとある「すき間」を脂が埋めた状態なのです。
見分け方は単純で、パックを上から見て白い線が赤身を貫くように何本も走っていれば霜降り、赤身と脂の境界がはっきり分かれていれば脂身つきの赤身肉です。網目が細かいほど加熱時に脂が均等に広がり、口当たりがなめらかになります。
やりがちなのが、パックの縁に沿って白く見える脂を霜降りと数えてしまうこと。あれは皮下脂肪や筋間脂肪で、霜降りの評価対象とは別物です。判断するときは肉の断面の内側だけを見てください。(出典:日本食肉科学会 食肉用語の解説「霜降り」)
サシ・脂肪交雑・マーブリングは全部同じものを指す
焼肉店やスーパーでは「サシが入っている」「脂肪交雑が良い」「マーブリングが美しい」といった表現が飛び交いますが、指しているものはすべて同じです。呼び方が分かれているのは、使う人の立場が違うだけと考えて構いません。
「サシ」は現場や食べ手の言葉で、赤身に脂が差し込むように入ることから来ています。「脂肪交雑」は牛枝肉取引規格で使われる正式な用語で、格付の評価項目のひとつです。「マーブリング」は大理石(marble)の模様に似ていることから来た英語表現で、輸出入や海外向けの表記でよく登場します。
売り場でこの3語を見分ける実益もあります。「サシがきれい」とだけ書かれたポップは店の主観、「脂肪交雑○等級」「B.M.S. No.○」と数字が書かれていれば格付にもとづく客観的な表示です。数字が併記されているほうが、あとで別の店の肉と比べるときの物差しになります。
ただし、店によっては「霜降り」を単に脂の多い肉全般を指す言葉として使っていることもあります。牛以外の食材、たとえば魚の腹身や鶏の一部にも「霜降り」という言い方をする例があるので、牛肉売り場を離れたら同じ意味とは限らないと覚えておくと混乱しません。
小ザシ・大ザシ・粗ザシで見え方はまったく変わる
同じ「サシが入った肉」でも、脂の粒の細かさによって呼び分けがあります。日本食肉科学会の解説では、ロース芯内部の脂肪交雑の大きさや細かさによって「小ザシ」「大ザシ」「粗ザシ」という言葉が使われると説明されています。
細かい網目が均一に散っているものが小ザシ、脂の筋が太くまとまって見えるものが大ザシ・粗ザシです。理由は脂肪が蓄積する順序にあります。脂は膜の太い部分から先に溜まりやすく、そこで止まれば太い筋のまま、さらに細かい膜まで行き渡ると網目が細かくなります。時間をかけて仕上げた肉ほど網目が細かくなる傾向があるのは、このためです。
売り場での見分け方はシンプルで、パックを腕1本ぶんくらい離して見ることです。近くで見ると全部同じに見えますが、離すと網目の細かさの差がはっきり出ます。細かいものは加熱後の断面がピンクがかった均一な色に、太いサシのものは焼くと脂が抜けた白い筋が残りやすくなります。
細かければ良いとも言い切れません。太いサシは加熱時に脂が流れ出しやすいぶん、すき焼きのように割下と合わせる料理では甘みが出て働きます。用途で選ぶほうが失敗が減ります。
「脂身つき」と「霜降り」は別の話
成分表や商品表示でよく見る「脂身つき」という言葉は、霜降りの度合いを表す言葉ではありません。肉のまわりについた皮下脂肪を取り除かずに含めた状態を指す表示上の区分です。ここを混同すると、カロリーの読み違いが起きます。
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年では、和牛サーロインは「脂身つき」で100gあたり460kcal、同じ部位の「赤肉」では294kcalと記載されています。この差の大半は、断面の内側のサシではなく、外周についた脂の有無によるものです。つまり、家で外側の脂を切り落とせばカロリーは目に見えて下がります。
売り場での実践としては、値札の「サーロイン」だけでなく、断面のサシと外周の脂を分けて見る癖をつけることです。外周の脂が指1本ぶんの幅で付いているなら、それを外すだけでかなり軽くなります。
逆に、外周の脂をすべて落としてしまうと焼いたときに縮みやすくなります。外周の脂は焼き縮みを抑える役目もあるので、半分だけ残すという選び方が現実的です。
牛の体の中で、サシはどこにどうやって入るのか
脂は筋線維の中ではなく、筋肉を仕切る膜に溜まる
サシの正体は、筋肉を束ねる結合組織に沿って蓄積した脂肪です。筋細胞(筋線維)そのものの内部には入らないといわれており、脂が入る場所は最初から決まっています。だから霜降りは無秩序な模様ではなく、部位ごとに似た網目のパターンになります。
この構造がわかると、部位による差にも説明がつきます。よく動かす部位は筋線維が太く密に詰まり、脂の入るすき間が少ない。逆に、あまり動かない背中側やお尻まわりは膜の層が緩く、脂が入り込む余地が大きい。サーロインやリブロースにサシが乗りやすく、すねやももに乗りにくいのはこのためです。
売り場で確かめるなら、同じ牛の別部位を並べてみると一目瞭然です。ロース系は網目が全体に散り、もも系は赤身の面積が広く、サシがあっても線が短く途切れて見えます。
覚えておくと得なのは、サシの入りやすさは部位でほぼ決まっているという点です。「もも肉なのにサシがすごい」という表示があれば、それはもも肉の中でも脂が乗りやすい一部の希少部位である可能性が高く、値段も跳ね上がります。
黒毛和種にサシが乗りやすいのは品種の性質
霜降りの入りやすさは、育て方だけでなく品種によっても大きく変わります。農林水産省の資料によると、和牛と表示できるのは黒毛和種・褐毛和種・無角和種・日本短角種の4品種で、このうち国内で肥育される和牛の90%以上を黒毛和種が占めています。そして黒毛和種は「肉質は脂肪交雑の面で優れる」と説明されています。
理由は、長年にわたる改良の方向性にあります。日本では枝肉の格付で脂肪交雑が重く評価されてきたため、サシが入りやすい牛を選んで交配する育種が積み重ねられてきました。海外の肉牛が赤身の量や増体を重視して改良されてきたのとは、目指した方向が違うわけです。
売り場での見分け方としては、「和牛」と「国産牛」の表示の違いを見ることです。「和牛」は前述の4品種とその交雑種で国内で生まれ育ったものに限られ、「国産牛」は品種を問わず国内で飼育された牛を指します。サシの入り方に明確な差が出るのは、この表示の違いが理由のひとつです。
ただし、和牛であればすべてサシが多いわけではありません。褐毛和種や日本短角種は赤身の味わいで評価される品種で、黒毛和種と同じ基準で比べる意味はあまりありません。(出典:農林水産省「特集1 和牛」)
20カ月の肥育と飼料設計が網目をつくる
霜降りは、生まれつきの素質に時間と飼料を掛け合わせてできあがります。農林水産省の資料では、肉用牛は家畜市場で子牛を購入してから20カ月程度肥育して出荷され、種付けから出荷までは約3年かかると説明されています。この長い肥育期間が、筋肉のすき間に脂を蓄えていく時間になります。
飼料の設計も効いています。肥育の後半は穀物を中心とした濃厚飼料の比率を上げ、エネルギーを筋肉内の脂肪として蓄えさせます。さらに、ビタミンAには脂肪細胞への分化を抑える働きがあることが知られており、肥育の一時期にビタミンAを多く含む粗飼料を控える「ビタミンAコントロール」という飼養管理も現場で行われています。
この背景を知っておくと、価格差の理由が腑に落ちます。霜降りが高いのは希少だからというより、同じ牛を長く飼い、濃厚飼料を食べさせ続けたコストがそのまま乗っているからです。
注意したいのは、ビタミンAの管理は牛の健康に影響しうるデリケートな技術で、生産者が細かく血中濃度を見ながら調整しているという点です。「サシが多いほど無条件に良い」という見方は、生産現場の負担を無視した見方でもあります。買う側が赤身の肉も選ぶことは、こうしたバランスにつながります。
サシは「品種 × 肥育期間 × 飼料」の掛け算でできます。国内で肥育される和牛の90%以上を占める黒毛和種は脂肪交雑の面で優れるとされ、そこに20カ月程度の肥育が加わって網目が育ちます。売り場で「和牛」「国産牛」の表示を見比べると、サシの差の理由が読み取れます。
A5=おいしい肉、ではない。等級表示の本当の読み方

アルファベットは味ではなく「取れる量」の評価
A5のAは、味とは無関係です。牛枝肉取引規格では、Aから始まるアルファベットは歩留等級と呼ばれ、1頭の枝肉からどれだけ多くの肉が取れるかを表しています。基準は数値で決まっており、歩留基準値が72以上ならA、69以上72未満ならB、69未満ならCです。
つまりAは生産効率の指標であって、食卓に届く1切れの味を保証するものではありません。それでもAばかりが目立つのは、B等級やC等級の肉は表示に使われにくく、売り場に並ぶときはあえて等級を書かないことが多いからです。
売り場での実践的な読み方はこうです。BやCの表示を見つけても、肉質の数字が同じなら断面のサシの入り方は同等と考えて構いません。むしろ、同じ肉質等級でアルファベットだけ違う肉が並んでいたら、価格が抑えられている可能性があります。
覚えておきたいのは、歩留等級はその牛の体つきの話だという点です。切り分けられてパックになった時点で、買い手にとっての意味はほぼ消えています。
数字の5は「4項目の一番低い点」で決まる
肉質等級の数字は、4つの項目の平均ではありません。牛枝肉取引規格では、脂肪交雑・肉の色沢・肉の締まり及びきめ・脂肪の色沢と質の4項目をそれぞれ5段階で判定し、そのうち最も低い等級に格付けすると定められています。1つでも4があれば、他が5でも全体は4です。
この決め方のおかげで、5等級は「どの項目にも弱点がない」という意味を持ちます。逆に言えば、4等級の中には脂肪交雑だけ5相当という肉も混じっているということです。サシの量だけを求めるなら、4等級にも狙い目があります。
店頭で判断する手がかりは、等級表示のとなりに「B.M.S. No.○」と書かれているかどうかです。番号が併記されていれば、脂肪交雑だけを取り出した評価が読めます。番号が書かれていない4等級は、どの項目が足を引っ張ったのかまではわかりません。
やりがちな失敗が、「A5だから柔らかいはず」と信じて厚切りステーキ用に買い、焼いたら思ったほどではなかったというケースです。柔らかさに直結する項目は肉質等級に含まれていません。締まり及びきめは組織の細かさの評価で、噛んだときの柔らかさそのものを測る項目ではないのです。(出典:日本食肉格付協会 牛枝肉取引規格)
B.M.S. No.と肉質等級の対応を表で整理する
脂肪交雑はB.M.S.(牛脂肪交雑基準)のNo.1〜No.12で判定され、そこから5段階の等級に置き換えられます。判定は牛枝肉の第6〜第7肋骨間の切開面で行われ、胸最長筋・背半棘筋・頭半棘筋の断面が見られます。背中の同じ場所を全国共通で切って比べるからこそ、全国統一の物差しとして機能します。
| 脂肪交雑の等級 | B.M.S. No. | 断面の見え方 | 向いている食べ方 |
|---|---|---|---|
| 5 | No.8〜No.12 | 赤身より白い網目が目立つ | 薄切りで少量 |
| 4 | No.5〜No.7 | 赤身の地に網目が全面に散る | ステーキ・すき焼き |
| 3 | No.3〜No.4 | 網目はあるが赤身が主役 | 厚切りステーキ・焼肉 |
| 2 | No.2 | 細い線がまばらに入る | 煮込み・炒め物 |
| 1 | No.1 | ほぼ赤身一色 | 煮込み・ひき肉 |
等級とB.M.S. No.の対応は日本食肉格付協会の規格どおりで、断面の見え方と向いている食べ方は編集部が売り場での実務にあわせて整理したものです。表を見るとわかるのは、5等級の幅がNo.8〜No.12と5段階ぶんあり、同じ「5」の中にもかなりの差があるということです。
肉質等級には肉色(B.C.S.)と脂肪色(B.F.S.)の基準もあり、5等級に格付けされるには肉色がNo.3〜No.5、脂肪色がNo.1〜No.4に収まっている必要があります。赤すぎても黒すぎても、脂が黄色くても5にはなりません。等級表示は、サシだけでなく色まで見た総合判定なのです。
実は、同じサシの量でも昔と今では番号が違う
意外と知られていないのですが、B.M.S.の番号は「絶対的な脂の量」を表しているわけではありません。農研機構の研究成果情報によると、粗脂肪含量が約30%の肉は1988年の基準ではBMS12に評価されるのに対し、2004年にはBMS4.5にしか評価されなかったと報告されています。同じ脂の量なのに、評価が大きく下がっているわけです。
理由は、牛の改良と肥育技術が進み、サシの入った肉が全体として増えたからです。研究では2000年までは粗脂肪含量の増加に伴ってBMSナンバーが上昇したものの、2002年と2004年では粗脂肪含量がより高いにもかかわらずBMSナンバーの評価が低くなったことが確認されています。基準の側が動いていないぶん、相対的に「上」の壁が高くなったのです。
ここから読み取れる実用的な話がひとつあります。数十年前の「A5は特別」という感覚のまま今の等級を見ると、期待とのズレが生まれやすいということです。今の3等級や4等級は、昔の感覚でいえばかなりサシが入った肉に相当します。
同じ研究では、粗脂肪含量が高まると粗蛋白質含量が低下する相関関係も認められています。サシが増えるということは、同じ100gの中でタンパク質が減るということでもあります。ここは次の章で数値を見ていきます。(出典:農研機構 研究成果情報)
脂が入るほどカロリーはどこまで上がるのか【成分表で比較】
和牛サーロインは100gで460kcal、赤肉なら294kcal
霜降りのカロリーは、想像より上です。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年では、和牛サーロインの脂身つき・生は可食部100gあたり460kcal、たんぱく質11.7g、脂質47.5gと記載されています。100gの約半分が脂質という計算になります。
同じ和牛サーロインでも、赤肉だけにすると294kcal、たんぱく質17.1g、脂質25.8gまで下がります。エネルギーで166kcalの差、たんぱく質は5.4g増えるわけで、外周の脂を落とすかどうかだけでここまで変わります。
売り場での実践としては、パックの厚みではなく断面の白さの面積で判断することです。白い部分が半分近くを占めていれば、100gで400kcalを超える範囲に入っていると考えて差し支えありません。
ここで見落としがちなのが、脂が増えるとタンパク質が減るという裏返しです。前章の農研機構の報告どおり、粗脂肪含量が高まると粗蛋白質含量は低下します。タンパク質を目的に牛肉を食べているなら、サシは少ないほうが目的に合います。

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リブロース514kcalが牛肉の上位クラス
牛肉の中でカロリーが上位に来るのは、サーロインよりリブロースです。成分表では和牛リブロースの脂身つき・生が100gあたり514kcal、たんぱく質9.7g、脂質56.5g。100gあたりのたんぱく質が10gを切る一方で、脂質は56.5gに達します。
理由は、リブロースが背中の中でも肋骨側にあり、サーロインより脂の乗る層が厚いからです。ロース系の中でも断面の中心にある「芯」のまわりに脂が回り込みやすく、切り出したときに白い部分の割合が高くなります。
実践的な見分け方として、スライスパックを立てて透かしてみると差がわかります。リブロースのスライスは光を通す白い部分が多く、サーロインは赤い帯がもう少しはっきり残ります。すき焼き用のパックを選ぶときの目安になります。
気をつけたいのは、リブロースは薄切りだと軽く感じてしまう点です。1枚が薄いぶん枚数を重ねやすく、気づけば200g、300gと進んでしまいます。カロリーは重さで効いてくるので、枚数ではなくグラム表示を見るのが確実です。

スーパーの精肉コーナーや焼肉店のメニューで見かける「リブロース」。名前は知っていても、「どこの部位なの?」「サーロインとどう違うの?」「カロリーは高いの?」と聞…
同じサーロインでも和牛・乳用種・輸入牛で187kcalの差
部位が同じでも、牛の種類が変わればカロリーはまったく別物になります。成分表の同じ「サーロイン・脂身つき・生」で比べると、和牛肉が460kcal、乳用肥育牛肉が313kcal、輸入牛肉が273kcalです。和牛と輸入牛の差は187kcalに達します。
この差はほぼサシの量の差です。たんぱく質を見ると和牛が11.7g、乳用肥育牛が16.5g、輸入牛が17.4gと逆の並びになり、脂質は和牛47.5g、乳用肥育牛27.9g、輸入牛23.7gと並びます。同じ名前の部位でも、中身の構成比がここまで違います。
売り場で応用するなら、「和牛サーロイン」と「輸入牛サーロイン」を同じ感覚で買わないことです。輸入牛のサーロインは厚切りにして焼いても重くなりにくく、200g前後でも食べ切れます。和牛サーロインを同じ量で用意すると、途中で手が止まる人が多くなります。
知っておくと得なのは、乳用肥育牛肉が両者のちょうど中間に位置することです。国産で手に入りやすく、サシもそこそこ入る。家のフライパンでステーキを焼くなら扱いやすい選択肢です。
部位別カロリー比較表で位置関係をつかむ(お肉の教科書調べ)
数字を並べると、霜降りがどのあたりに位置するのかが一目でわかります。以下はすべて日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の可食部100gあたりの数値を、お肉の教科書が霜降りの多い順に並べ替えたものです。
| 部位(100gあたり) | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 |
|---|---|---|---|
| 和牛リブロース 脂身つき | 514kcal | 9.7g | 56.5g |
| 和牛ばら 脂身つき | 472kcal | 11.0g | 50.0g |
| 和牛サーロイン 脂身つき | 460kcal | 11.7g | 47.5g |
| 乳用肥育牛サーロイン 脂身つき | 313kcal | 16.5g | 27.9g |
| 和牛サーロイン 赤肉 | 294kcal | 17.1g | 25.8g |
| 輸入牛サーロイン 脂身つき | 273kcal | 17.4g | 23.7g |
| 和牛ヒレ 赤肉 | 207kcal | 19.1g | 15.0g |
| 和牛もも 赤肉 | 176kcal | 21.3g | 10.7g |
上下の端を比べると、和牛リブロース脂身つきの514kcalに対して和牛もも赤肉は176kcalで、その差は338kcalです。たんぱく質は9.7gと21.3gで、もも赤肉のほうが2倍以上あります。同じ牛の同じ100gで、ここまで性格が違うわけです。
| 部位の位置 | 背中の後方、リブロースの隣。あまり動かさないためサシが入りやすい |
| カロリー(100gあたり) | 460kcal(和牛・脂身つき・生)/赤肉なら294kcal |
| タンパク質・脂質 | たんぱく質11.7g/脂質47.5g(脂身つき) |
| 食感・味の特徴 | 網目状のサシが全面に散り、加熱すると脂が溶けてなめらかな口当たりになる |
| 格付での扱い | 脂肪交雑は第6〜第7肋骨間の断面で判定。サーロインそのものは判定部位ではない |
| おすすめ調理法 | 厚さ1.5cm前後のステーキ、しゃぶしゃぶ、すき焼き |
口の中でとろけるのは、脂が体温より低い温度で溶けるから
和牛脂はオレイン酸など一価不飽和脂肪酸が多く、融点が低い
霜降りが口の中で溶けるように感じるのは、比喩ではなく実際に脂が溶けているからです。日本畜産学会報に掲載された入江正和氏の総説「和牛肉における脂肪質と食味性」(第92巻第1号、2021年)では、和牛脂肪はオレイン酸など一価不飽和脂肪酸含量が高く、融点が低いと整理されています。
脂肪の硬さは脂肪酸の組成で決まります。二重結合を持つ不飽和脂肪酸の割合が高いほど分子が整然と並びにくく、低い温度で液体になります。和牛の脂は、この不飽和脂肪酸の比率が高い側に寄っているわけです。同じ総説では、脂肪融点の低さは舌触りの良さと多汁性の高さに関係するとも述べられています。
家庭で確かめる方法もあります。焼いた霜降り肉を室温で5分ほど置き、皿に残った脂を見てください。白く固まりはじめるまでの時間が長い肉ほど、融点が低い脂だと判断できます。輸入牛の脂と並べて置くと差がはっきり出ます。
注意したいのは、融点が低いからといって食べる量を増やしていいわけではないという点です。溶けやすい脂は胃もたれしにくいと感じる人もいますが、100gで47.5gの脂質という事実は変わりません。(出典:日本畜産学会報「和牛肉における脂肪質と食味性」)
「脂肪味」という第六の味が甘みと旨みを押し上げる
霜降りを食べたときに感じる満足感は、食感だけの話ではありません。前述の総説では、遊離したオレイン酸やリノール酸が舌に脂肪味を感じさせると説明されています。甘み・塩味・酸味・苦味・旨みに続く感覚として、脂そのものを味として捉える仕組みが働いているわけです。
これが効いてくるのは、加熱で脂が溶けて遊離脂肪酸が出やすくなったときです。だから同じ肉でも、生で薄く切って食べるより、さっと火を入れたほうが「濃い」と感じます。しゃぶしゃぶで湯にくぐらせた瞬間がおいしく感じるのは、この切り替わりの手前をつかまえているからです。
家庭で使える工夫としては、味付けを引き算することです。脂肪味が乗っている肉に濃いタレを重ねると、輪郭がぼやけます。霜降りには塩とわさび、あるいは薄い割下くらいが釣り合います。
やりがちなのが、脂の多い肉を焼きすぎて脂を落としきってしまうことです。落ちた脂の中には味の成分も含まれているので、焼き加減の見極めがそのまま味の差になります。次の章で具体的な火加減を扱います。
柔らかく感じるのは、脂が組織を分断しているから
霜降りが柔らかいのは、肉自体の繊維が細いからではありません。筋肉を仕切る膜に沿って脂が入り込むことで、噛み切るべき組織のつながりが物理的に分断されるからです。日本食肉科学会も、脂肪交雑の割合が高くなると柔らかさが増すと考えられていると説明しています。
この理屈がわかると、部位の選び方も変わります。もともと繊維が細い部位、たとえばヒレはサシが少なくても柔らかい。逆にサシが入っていても繊維が太い部位は、厚く切ると噛みごたえが残ります。柔らかさは「繊維の細さ」と「サシによる分断」の2つで決まると考えると整理できます。
売り場での見分け方は、断面の繊維の向きを見ることです。繊維が同じ方向にきれいに揃っている部分は、切る向きで食感が変わります。繊維に直角に切れば短く切断されて柔らかく、平行に切ると長い繊維が残って噛みごたえが出ます。
知っておきたいのは、サシが入っていても加熱しすぎればタンパク質は縮んで硬くなるという点です。柔らかさは買った時点で決まるものではなく、切り方と焼き方で最後に決まります。
「とろける」の正体は、①和牛脂は一価不飽和脂肪酸が多く融点が低い、②遊離したオレイン酸・リノール酸が脂肪味として感じられる、③サシが組織を分断して噛み切りやすくする、という3つの重なりです。逆に言えば、焼きすぎて脂を落としきると3つとも失われます。
家で焼くとき、霜降り肉で失敗する人がやっていること
油を引いて強火のまま焼き続けると、脂が抜けきる
家庭で霜降り肉を残念な仕上がりにしてしまう最大の原因は、赤身と同じ焼き方をすることです。フライパンにサラダ油を引き、強火のまま両面をしっかり焼く。この手順は赤身には合いますが、霜降りには合いません。
理由は明快で、霜降り肉は加熱すると自分の脂を大量に出すからです。そこへ油を足すと、肉が油の中で泳ぐ状態になり、表面が揚がったようになります。さらに強火を続けると内部の脂まで流れ出し、残るのは脂の抜けたパサついた繊維です。せっかくの融点の低い脂を、フライパンの底に捨てているようなものです。
正解は、油を引かずに中火で焼き始めることです。肉の外周についた脂を先にフライパンに当てて溶かし、そこから出た脂だけで焼きます。この方法なら余計な油が増えず、香りも肉のものだけになります。
もうひとつのつまずきが、焼く前に長時間常温に置くことです。霜降りの脂は融点が低いため、置いている間に脂がゆるんで表面に染み出し、焼く前からドリップとして流れ出てしまいます。厚みのある肉でも、冷蔵庫から出して10〜15分ほどで十分です。
厚さ別の火加減と時間の目安
霜降り肉の焼き時間は、赤身より短く見積もるのが基本です。脂が熱を伝えるため、同じ厚さなら赤身より早く中心に火が入ります。厚さ1cmのステーキなら中火で片面1分、返して30〜40秒。厚さ1.5cmなら中火で片面1分30秒、返して1分が起点になります。
薄切りはさらに短く、しゃぶしゃぶ用の厚さなら湯にくぐらせて色が変わった瞬間に引き上げます。焼肉用の厚さ0.5cm前後のスライスは、片面20〜30秒で返し、返した面はさらに短く。網の上で放置すると、脂が落ちきって縮みます。
火加減の見極め方は、フライパンから聞こえる音です。パチパチと弾ける高い音が続いているうちは水分が飛んでいる段階、ジューという低い音に変わったら脂が回っている段階です。低い音になったら返すタイミングと覚えると、時計を見なくても判断できます。
焼き上がったら、アルミホイルをかぶせて2〜3分休ませてから切ります。切るときは繊維に直角に。休ませずに切ると、溶けた脂と肉汁が一気に流れ出て、皿の上に脂だまりができます。
出てきた脂は拭き取りながら焼く
霜降り肉を焼くときは、フライパンに溜まった脂をこまめに拭き取るのが仕上がりを左右します。溜まった脂の中で焼くと、表面の温度が上がりすぎて焦げ色だけが強くなり、内部はまだという状態になりがちです。
拭き取る理由はもうひとつあります。流れ出た脂は加熱され続けると香りが変わり、焼いている肉に戻ってきます。焼き上がりの香りをすっきりさせたいなら、途中でリセットしたほうが結果が良くなります。キッチンペーパーを菜箸でつまんで、返すタイミングで一度拭うだけで違います。
実践のコツは、拭き取る量を全部にしないことです。フライパンの底が薄く濡れている程度は残します。完全に拭き取ると肉が直接鉄板に触れて焦げつくので、薄い膜を残すのがちょうどいい塩梅です。
拭き取った脂は捨てずに小皿に取り、野菜を炒めるのに使えます。融点の低い和牛脂は冷めても固まりにくく、玉ねぎやしいたけを焼くとステーキの付け合わせとして働きます。
焼く前に知っておきたい加熱の目安
霜降り肉は火が入りやすいぶん、レアで止めたくなる場面が多い部位です。ただし、加熱の判断は好みだけで決めるものではありません。厚生労働省は2011年10月1日に生食用食肉(牛肉)の規格基準を施行しており、生食用として提供する場合には肉の表面から1cm以上の深さを60℃で2分以上加熱するか、同等以上の殺菌方法が必要と定めています。
この基準が示しているのは、牛肉のリスクは主に表面にあるという考え方です。塊肉の表面をしっかり焼けば、内部がロゼ色でも一定の対応になります。一方で、タンブリング等の処理をした加工肉は表面の汚染が内部に入り込むおそれが指摘されており、同じ扱いはできません。
売り場で確認すべきは、パックの表示です。「加工肉」「成形肉」「タレ漬け」といった記載がある商品は、中心部までしっかり加熱するのが前提です。表示がない塊肉やスライス肉とは区別してください。
不安がある場合や、小さなお子さん・ご高齢の方が食べる場合は、中心まで火を通す焼き方を選ぶのが無難です。判断に迷ったら、公的機関の情報を確認するのが確実です。
厚生労働省は2011年10月1日に生食用食肉(牛肉)の規格基準を施行し、生食用として提供する場合は肉の表面から1cm以上の深さを60℃で2分以上加熱するか、同等以上の殺菌方法が必要としています。この基準は腸管出血性大腸菌O157等による食中毒事案を受けて設定されたものです。加工肉・成形肉はタンブリング等の処理により表面の汚染が内部に入り込むおそれが指摘されているため、中心部までしっかり加熱してください。詳細は厚生労働省の規格基準Q&Aをご確認ください。
何グラム買えばいい?シーン別の選び方と赤身との使い分け
ステーキ・すき焼き・焼肉で「ちょうどいい量」は変わる
霜降り肉は、赤身と同じグラム数で買うと余ります。和牛サーロイン脂身つきは100gで460kcalあり、赤身のもも肉100gの176kcalと比べると2.6倍。同じ満足感を得るのに必要な量が、そもそも違うのです。
ステーキなら、霜降りは1人あたり100g前後から試すとちょうどよく収まります。赤身なら150g用意しても食べ切れる人が多い量です。すき焼きやしゃぶしゃぶのように割下や出汁と合わせる料理は、脂が湯や汁に溶け出すぶん食べやすくなるので、霜降りでも少し多めに見積もって構いません。
焼肉の場合は、はじめの数枚だけ霜降りにして、残りを赤身やホルモンで構成すると最後まで進みます。順番も効きます。脂の多い肉を先に食べると舌が脂に慣れてしまうので、赤身から入って霜降りを途中に挟むと、どちらの味も立ちます。
買いすぎたときのつまずきが、翌日への持ち越しです。霜降り肉は脂の融点が低いぶん、冷蔵庫の中でも脂がゆるみやすく、翌日には表面から脂が染み出して食感が変わります。多めに買った場合は、使う日に合わせて小分けにして冷凍するほうが結果が良くなります。
赤身と混ぜると、最後までおいしく食べ切れる
家で肉を用意するとき、全部を霜降りで揃える必要はありません。むしろ、赤身と組み合わせたほうが満足度が上がります。和牛もも赤肉は100gで176kcal、たんぱく質21.3g。和牛サーロイン脂身つきのたんぱく質11.7gと比べると、同じ100gで約2倍のタンパク質が取れます。
組み合わせの理由は、味の緩急です。脂の甘みが続くと舌が慣れて感度が落ちますが、間に赤身の噛みごたえと肉の香りを挟むと、次に食べる霜降りがあらためて際立ちます。焼肉店のコースで赤身と脂の多い部位が交互に出てくるのは、この設計です。
具体的な配分としては、2人で400g用意するなら霜降り150g・赤身250gあたりが扱いやすい比率です。人数が増えるほど霜降りの比率を下げたほうが、全体として食べ切れる量になります。
覚えておきたいのは、赤身と霜降りでは焼き方も変えるということです。赤身は表面を強めに焼いて中を残す、霜降りは中火で短く。同じ網に同時に載せると、どちらかが必ず失敗します。

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読者タイプ別、霜降りとの付き合い方
同じ「霜降りを買いたい」でも、目的によって選ぶべきものは変わります。まず、記念日にステーキを焼きたい人。この場合は脂肪交雑の等級よりも厚さを優先してください。厚さ1.5cm以上の1枚を用意したほうが、薄い2枚より満足感が高くなります。
次に、家族ですき焼きやしゃぶしゃぶをしたい人。ここは薄切りで枚数が確保できることが優先です。等級は3〜4等級でも十分に脂の甘みが出ますし、割下と合わせるなら脂が多すぎないほうが最後まで進みます。
タンパク質を目的に牛肉を食べている人は、霜降りは主役に据えないほうが目的に合います。前述のとおり、脂が増えるとタンパク質は減ります。赤身を主軸にして、霜降りは風味づけとして少量を混ぜるのが現実的な落としどころです。
そしてもうひとつ。等級表示にこだわらず、断面を見て選ぶ人になるのがいちばんの近道です。B.M.S. No.が併記されていない売り場でも、網目の細かさと外周の脂の厚みは自分の目で確認できます。数字が読めないときこそ、断面が答えを教えてくれます。
まとめ:サシの正体と選び方を一枚で整理
霜降りの正体は、赤身肉の中に霜が降りたように網目状の脂肪が沈着した状態です。脂は筋肉を仕切る膜に沿って蓄積し、筋細胞の内部までは入りません。この脂の入り具合を評価するのが牛枝肉取引規格の脂肪交雑で、B.M.S. No.1〜No.12の12段階から肉質等級の1〜5に置き換えられます。No.8〜No.12が5等級、No.5〜No.7が4等級です。
そしてA5という表示は、味の採点ではありません。Aは歩留基準値72以上を意味する生産性の指標で、5は脂肪交雑・肉の色沢・締まり及びきめ・脂肪の色沢と質の4項目のうち最も低い等級によって決まります。柔らかさを直接評価する項目は含まれていないため、A5でも厚く切って焼けば噛みごたえが残ることがあります。
数字で見れば、和牛サーロインは脂身つき100gで460kcal・脂質47.5g、赤肉なら294kcal・脂質25.8g。同じサーロインでも輸入牛は273kcalで、和牛との差は187kcalです。農研機構の報告では、粗脂肪含量が高まると粗蛋白質含量が低下する相関も確認されています。サシが増えれば、同じ100gで取れるタンパク質は減るということです。
最初の一歩としておすすめしたいのは、次に精肉コーナーへ行ったとき、パックを腕1本ぶん離して断面を見ることです。網目の細かさと外周の脂の厚みが見えたら、あとは今日何グラム食べたいかを決めるだけ。等級表示より、その2つのほうが確実にあなたの食卓に効きます。
※栄養成分の数値は日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、格付の基準は日本食肉格付協会の牛枝肉取引規格によります。制度や基準は改定されることがあるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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